THE イナズマ戦隊が5月26日、日比谷野外大音楽堂で、ワンマンライブ『俺とオマエと野音と応援歌』を開催した。昨年から続けてきた20周年を記念した47都道府県を巡った全国ツアーをおこない21年目のスタートとなる舞台がこの地になる。彼らがどんな意気込みでライブに臨んだのか、その模様を以下にレポートする。【取材=長澤智典】

ここには気持ちを一つにした熱い奴らばかりが集まっている

THE イナズマ戦隊(撮影=浜野カズシ)

 5月26日、日比谷野外大音楽堂の舞台にTHE イナズマ戦隊は立っていた。場内を埋め尽くした観客。大きな歓声に迎え入れられ、メンバーらが舞台へ姿を現した。何も気取ることなく、いつも通りのラフなスタイルでTHE イナズマ戦隊のライブは幕を開けた。

 冒頭を飾ったのは、気持ちを熱く奮い立たせる「バカ者よ大志を抱け」。ザクザクとした演奏の上で、高らかに歌い上げる上中丈弥。会場中から突き上がる無数の拳。とてもラフな、何も気負うことのない、でも、気持ちを熱く揺さぶる物語の始まりじゃないか。「No1を取りにいこうぜ」、その心意気に、思わず「そうだぜ!!」と同調している人たちが、ここには大勢いる。それが嬉しいじゃないか。

 走り出した演奏、勇壮で高らかに、魂を熱く揺さぶるように飛び出した「ドカン行進曲」。いなたい曲なのに熱い、その心意気に、大勢のファンたちが拳を振り上げ、共感を示していた。「それいけ、ドカンといけ!!」。まさにイケイケな気分だっ!

 勢いへさらに情熱を注ぐようにぶつけた「情熱の風」。滾る気持ちのまま、沸き立つ感情のままに歌い演奏するメンバー。着飾りなど一切脱ぎ捨て、ただただ情熱を剥き出しに熱唱する上中丈弥。彼の想いを鼓舞するように演奏する3人。この鉄壁のコンビネーションが、たまんなく気持ちを熱くさせる。

 俺たちはここに生きてるんだ、決して情熱を絶やすことなく突き進み続ける。その生き様を示すように、彼らは勇壮な演奏に乗せ「赤い命が燃えている」を歌いだした。シャララの歌声に、大きく手を振り想いを返す満員の観客、ここには気持ちを一つにした熱い奴らばかりが集まっている。

そのダサいくらいに真っ直ぐな感情が、嬉しく胸を揺さぶってくれた

上中丈弥(撮影=浜野カズシ)

 流れだしたのが、はちゃめちゃな祭りロックンロールナンバーの「Ban & An~バカ万歳アホ万歳~」。歌と演奏に合わせ、誰もが無邪気に飛び跳ねていた。若者もおっさんもおばちゃんも関係ない。胸はしゃぐロックンロールに魂が嬉しく震えたなら、無防備な気持ちのままに騒げばいい。なぜなら、それがロックであり、音楽だから。それが、THE イナズマ戦隊の生きるスタイルなのだから。

 ザクザクとしたブルーズなロックンロールが飛び出した。イカれたロックンロールに乗せ、騒ぎ狂え。Gt.山田武郎、Ba.中田俊哉、Dr.久保裕行のソロまわしに続き、ライブはふたたび魂を熱く滾らせるように「全身ゴーマイウェイ」へ。沸き上がる気持ちのままに歌を絞り出すVo.上中丈弥。彼の熱した感情をザクザクとした演奏で強く支える3人。この熱い関係性が、たまんなく格好いい。

 「懐かしい曲をやっちゃっていいかい」。上中丈弥の歌声に合わせ会場中に響いた「ラララーラララララーララ」の合唱。胸を熱く揺さぶる「雨上がり」の登場だ。その歌は、気持ちに勇気と情熱を注ぎ込む。雨が上がった後に光が射すように、この歌も、触れた人たちの心にガンガン光と力を射し込んでいく。「お前もそう思うだろ」と寄り添いながら、彼らは心に勇気を注ぎ込んでゆく。そこへ仲間意識を覚え、一緒に熱く「ラーラララララーララ」と歌い叫びたくなる、その関係性が嬉しいじゃない。生き方が下手な人の気持ちにほど、この歌は熱く寄り添っていく。

 軽快に、着飾ることなく、ザクザクとした剥き出しの演奏を響かせ、胸の内のわだかまりを吐き出すように、THE イナズマ戦隊は「涙の青春」を歌いだした。迷っている人たちへの心の指針? いや、彼ら自身が迷い人だからこそ、その歌がリアルな人生の応援歌として胸を熱くさせていた。

 渋いブルーズな山田武郎のギターが泣きだした。その旋律を奮い立たせるように支える演奏。胸の奥から沸き上がる想いを優しく告白するように、上中丈弥が「男のサイン」を歌いだした。なんて真っ直ぐで、暑苦しく、でも男らしい心秘めた想いの告白歌だ。不器用で無骨だからこそ、そのひと言ひと言が真実味を持って胸にせまる。そのダサいくらいに真っ直ぐな感情が、嬉しく心を揺さぶった。そのサイン、見逃さないよ。

THE イナズマ戦隊、4人で日本武道館目指します、よろしく

山田武郎(撮影=浜野カズシ)

 自分のいろんな欲望を歌詞に詰め込み、ギターを弾きながら上中丈弥が歌いだした。「やれるとこまで、出来るとこまでやってやるぜ。死ぬまで歌おう、THE イナズマ戦隊続けよう」と今の気持ちを高らかに宣言したところで、演奏は「喜びの歌」へ。その熱い生き様と意気込みに触れ、気持ちが熱く熱く揺さぶられた。ここで、スペシャルゲストとして俳優の桐谷健太が登場。上中丈弥に変わり、「男ってすげぇ」と熱く熱く歌をぶつけてゆく。熱い魂と魂をぶつけあい、歌を交わしあう上中丈弥と桐谷健太、その熱い友情のコラボレートに、すげぇ気持ちが揺さぶられた。「俺たちはすげぇ」と歌う言葉が、とても生々しく響いては、ずっとずっと胸を揺らし続けていた。

 「最近この歌を歌うと、同じように生きてきた人たちが喜んでくれるから、みなさんのために力いっぱい歌います」。上中丈弥の言葉に続いて歌ったのが、人生哀歌の「愛じゃないか」。その無骨で不器用な生きざまを昂る気持ちのままに歌う上中丈弥。これはTHE イナズマ戦隊流の人生歌であり、縁歌。「それが愛じゃないか」と歌うその言葉が胸に突き刺さる。たとえ下手な生き方だろうが、その情熱がある限り、胸を張っていいんだ。そんな風に、自分の胸に「愛じゃないか」が勇気を注いでいた。

 「もう千本くらいライブをやってるけど、日比谷野外音楽堂のワンマンは初めてのこと。この景色のために連れてきてくれてありがとう。これが20年小さく小さく積み上げてきた証かと思うと…。23歳で上京、今年40歳になります。昔と比べたらホントに変わったけど。夢が叶わない気がしない。ホントにわからないだらけでがむしゃらに走ってきた昔のようには出来なくなったけど、この景色を見てね、思ったよ。THE イナズマ戦隊、4人で日本武道館を目指します、よろしく。紅白歌合戦も出たいと思います。みなさんの夢を背負って生きたいなと思います」。

 上中丈弥の熱い言葉に続き、これまでの自分たちの生き様を示すように、THE イナズマ戦隊は「各駅停車」を披露。いろんな迷いや惑いを経験。それでも夢を信じて生きてきたからこそ、今、この景色がある。今、こんなにも大勢の仲間たちが4人のもとに集った。そんな自分たちの生き方を噛みしめるように、「各駅停車」が熱く熱く日比谷野外音楽堂中に響き渡る。その歌を受け止めた僕らもまた、みずからの存在証明を、この歌に重ね合わせていた。THE イナズマ戦隊の歌は人生歌だ。彼らの下手な生き方が、自分の負けの多い生き方に強い元気をくれる。弱い自分を否定するどころか、それでいいんだと励ましてゆく。たとえ人生は各駅停車でもいい、きっとその先には、かならず自分の生き方を指し示す小さな駅があるんだから。

 熱い魂を抱いたまま、演奏は「オマエだけを」へ。「お前だけは離さないぜ」「俺たちなら越えていけるはずさ」、その歌が、たとえ霞のかかった未来だろうと、その先へ僕らをしっかりと引き連れていく。そう、いつだって彼らの歌は大切な仲間みたいなもの。弱く情けない人生の相棒として、側で支えてくれる。熱い手拍子を舞台上の4人に返しながら、何時しか誰もが、一緒に「オマエだけを」と歌い叫んでいた。いや、歌わずにいれなかった。

 気持ちの内側から沸き上がる情熱と足掻く気持ちをぶつけるように、雄大な「OLD ROOKIES」の演奏に乗せ、消えない夢と情熱を持った生きざまをTHE イナズマ戦隊は届けていく。終わらない青春を謳歌するように、ここに集った同じ仲間たちへ向け、込み上がる想いのまま上中丈弥は歌を投げつけてきた。「夢を追いかけ、夢につまずき、夢に溺れて」と彼は歌いかける。でも、それでいいじゃない。そんな無骨な生き方だからこそ、自分の心に正直でいれるんだもの。確かに、「このままじゃ終われないよな」。

 ここで披露したのが、デビュー曲「月に吠えろ」。THE イナズマ戦隊の21年間の歴史を振り返るように。自分たちのいくつかある分岐点の中ても大切な座標となる楽曲を、日比谷野外音楽堂という場で彼らは高らかに歌いだした。それが、積み重ねてきたTHE イナズマ戦隊の歴史の輝きだと言うように。俺らの吐き出したい感情や情熱は、昔も今も何も変わってないと宣言するように…。

中田俊哉(撮影=浜野カズシ)

 「やっちゃっていいか、エブリバディ」、上中丈弥の誘いへ応えるように、会場中の人たちが「オマエ・がむしゃら・はい・ジャンプ」に合わせ、満面の笑顔で飛び跳ねていた。大きく身体を揺らし、ゴキゲンなロックンロールに合わせ、無邪気にはしゃいでいく。片手にアルコールという人たちが多かったのも、粋な大人のロックの楽しみ方らしくて素敵じゃないか。

 止まることない演奏は、「泥だらけがいいや」を胸にじんわり染み込ませてきた。泥にまみれているからこそ、何時か養分豊かに外へ芽を出していける。そんな気持ちをこの歌に、THE イナズマ戦隊に教えられた気分だ。

 躍動する久保裕行のドラムビート。「この歌を一緒に歌おうぜ」、届けたのが「33歳」。軽快な演奏に乗せ、上中丈弥は浪々と己の生きざまを歌い、謳歌していく。この歌は、小学生のときに亡くなった大切な父親へ向けた歌。でも、その生き方が、そのまま今の上中丈弥の生き方に重なって見えていた。日比谷野外音楽堂に集った一人ひとりが想い描く大切な人の人生や、今、ここで生を謳歌している自分たち自身の気持ちと重なり、響いてきた。

 「これが、一歩ずつ積み重ねたTHE イナズマ戦隊の証です。俺たちが誰にも負けないことは、一生懸命に誰かのために歌うこと」。「そーれ!!」、本編最後を飾ったのが、THE イナズマ戦隊を愛し、信じる仲間たちを何時も支え、ともに想いを交わし続けてきた「応援歌」だ。その歌が、今宵は人一倍熱く胸に突き刺さる。「おーい、お前がんばれや、俺が側で見ててやるから」。その歌に、叫びに、何度心支えられたことか。今宵の「そーれぃ」の叫びは、何時にも増して胸を熱く掻き立てる。その歌、ずっとずっと相棒にしてていいですか? ずっとずっと、不器用な人生を側で見ててもらえるかな。僕らもまた、THE イナズマ戦隊の不器用な生き方をずっとずっと支え続けたいなと思うからこそ…。

この歌は、THE イナズマ戦隊と僕らの最高のアンセムだ

久保裕行(撮影=浜野カズシ)

 すっかり夜の闇に包まれた日比谷野外音楽堂。そんな野外のライブに相応しい「そして夜空に浮かぶ月のように」を、THE イナズマ戦隊はアンコールの1曲目に演奏。ミッドメロウな楽曲に乗せ、己の生きざまを歌う上中丈弥。<輝く未来を信じてる>の歌声が、日比谷野外音楽堂を囲んだビル群へ吸い込まれてゆく。この無骨な生きざま、この空を通して遠くまで響き渡れ。

 「THE イナズマ戦隊、21年目の、新しい曲を聴いてください」。披露したのが、新曲の「あぁ、バラ色の日々」。THE イナズマ戦隊らしい、情熱を真っ直ぐにぶつけるナンバーだ。「情けないほど夢を見て~お前を支える声が俺の声ならいいのにな」、日々の中で感じてきた想いをリアルにぶつけるからこそ、実直な言葉たちが胸にグサグサと突き刺さる。それもまた最高じゃないか。「美しいほどに夢を見て~ここから一歩踏み出せば薔薇色の日々よ」。この歌が、これからライブで熱い支持を得ていく姿が楽しみだ。

 「シャーララ、シャーララ、シャララッララ~」、飛び出したのが「合言葉~シャララ~」だ。最高に胸を熱くさせるシンガロングナンバーの登場に、会場中の人たちが大きく手を振り、一緒に歌い続けていた。歌を通して心一つに溶け合う。たまんないよな、この瞬間が。力の限り一緒に歌うことで、最高にスカッと出来る。この歌は、THE イナズマ戦隊と僕らの最高のアンセムだ。

 止まらないアンコールの声を受け、メンバーたちがふたたび登場。4人は客席中央のミニ舞台に現れ、大勢の仲間たちに囲まれながら、最後の最後に「ラブレターフロム俺」をアコースティックなスタイルで歌唱。ボーカル以外は生演奏で披露。あえて身近な距離で、生身の感情を、自身の生きざまや姿勢を、彼らはダイレクトにぶつけてきた。その雄々しい姿へ、暖かい視線を向け見守る観客たち。なんて心繋がりあった、暖かいライブだろう。最後の最後まで、THE イナズマ戦隊の情熱に触れ合えたライブだった。

 THE イナズマ戦隊は、今回の公演を収録したDVDを9月19日に発売することを発表した。そして9月から来年3月にかけふたたび全国ツアーをおこなう。その先には、ROAD TO日本武道館のための場として、4月21日に中野サンプラザでのライブも決定している。21年目の、いや、これから先のTHE イナズマ戦隊の展開も楽しみになってきた。

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