確かな物に辿り着いた、彼女 IN THE DISPLAY 覚醒のメジャー作
INTERVIEW

確かな物に辿り着いた、彼女 IN THE DISPLAY 覚醒のメジャー作


記者:長澤智典

撮影:

掲載:18年05月30日

読了時間:約14分

歌詞のテックさんがいてもいいんじゃないか

――「Kick」には、<「なんとなる」を「なんとかする」に 「どうにかなる」を「どうにかする」に>と記しています。今は、そういう意識でいるのでしょうか?

RYOSUKE この歌詞に関しては、他の方にもお手伝いしてもらったんですよ。結果、新しい武器を俺にくれました。正直、俺一人じゃこの歌詞は出来なかった。

――他の人の力を借りることも、楽曲としてプラスになるのなら厭(いと)わない?

RYOSUKE そうですね。だけど、もともとはすごい否定派だったんですよ。ただ、海さんの話を聴いたら…。

海 THE KID ドラマーなど楽器隊の場合、テックさんと呼ばれる楽器のチューニングをしてくれる方がいるじゃないですか。

RYOSUKE 海さんいわく、「そういう人らがおるけん、うちらはいい音を出せてる。歌詞だって一人で悩まずに、歌詞のテックさんみたいな感じで手伝ってくれる人がいてもいいんじゃないか」と言われたとき、一発で考え方が変わりました。

海 THE KID 自分に持ってないなら、それを良いものにするために誰かを頼ってもいいわけで。そもそも、元にある考え方やテーマはRYOSUKEのオリジナルなんだから、そこさえ崩れなければいいんじゃないかという話を実はずっとしていて。それでも、最初のうちは頑(かたく)なに拒否してたからね(笑)。

RYOSUKE 他のボーカリストで似たようなことをやった人たちの話を聞くと、「お願いをしたら、自分の書きたいものが変わった」という意見が多くて「そうなるんかなぁ」と思い込んでた自分もいたんですけど。「ちゃんと段階を踏んだり、しっかりやり方を考えればそうはならないよ」という提案も受けたので、「じゃあ、やってみよう」と思ったら、その言葉通りになれた。だから、考え方って大事なんだなと思いました。

海 THE KID 江口亮さんをプロデューサーへ迎え入れているところも、まさにそれで。僕らにはない知識が江口さんにはいっぱいある。気持ち的には第6のメンバーとして参加していただいているような形です。

RYOSUKE 江口さんは、気持ちのうえで「ホント繋がれてるな」と思える人だったんで。

――その『get up』は、冒頭「STAY KID」から荒々しく攻めたてます。

海 THE KID 『STAY KID』は勢いや泥臭さをサウンドのテーマにしているように、僕らっぽい楽曲ですからね。

――この歌詞は、心の中で過去を振り返ったり未来を見据えようとしたりといろんな葛藤を抱えながらも最後はしっかりと明日へ踏み出そうとしていく強い意志を描こうとしているんではないかと思いました。

RYOSUKE 自分は、殴られないと人の痛みが分からない性格です。歌詞に関しても、経験に基づいてないと自分自身でリアリティを感じれない。もちろん、創作物もアートとしては良いんでしょうけど、どうしても自分で嘘を言ってるような感覚に陥ってしまう。ただ、自分がリアリティを追求し出すと、今度は表現の幅が狭くなるんですよ。実はこの歌詞もテックじゃないですけど、そうやってアドバイスをいただきました。それによって泥臭さや少年感が出せて、いい塩梅に持ってこれたなと思いました。

――「少年感」というのは、大切なテーマにもなっているのでしょうか?

海 THE KID 少年心をくすぐる。それが、最近の俺らのテーマですからね。

――「CHAOS」は、ライブハウスで歌い演奏しているときの感情を描いた歌詞ですか? そんな風にも聞こえました。

海 THE KID 唯一、プロデューサーの江口さんも一緒に交えた6人でおこなったセッションを通し、バキッと仕上げた楽曲。歌詞も一気に書いてたね。

RYOSUKE 一気に書きましたね。これ、歌詞を書けなかった気持ちを、そのまんま書きました。

海 THE KID あっ、そういうこと? へぇー、おもろっ!!

RYOSUKE 制作にはデッドラインが決まってるじゃないですか。それまでに仕上げなきゃいかんけん発狂しそうになって。じゃけん、Aメロの<脈打つ鼓動は 落ち着かない様子で 小刻みに震えている>は、バタバタしながら、ほんまに手ぇ震えながら書きよってという姿のままです。<囚われた思考回路>は、「あー、いかん。このテーマで書かないかん」とか「こうしなきゃいけないのかなぁ」という気持ちです。本当は暴れたいくらい発狂寸前だったんですけど、暴れたら人として駄目じゃないですか(笑)。だから、歌詞の上で<発狂寸前 抑えきれない>と暴れたんですよ。

RYOSUKE やっぱり、RYOSUKEの歌詞は独特だよね。前々からそうなんですけど。たとえば「曲調は暗めだけど、メロディは明るくて、歌詞は希望に満ちあふれた内容にしてね」と言っても、「いや、俺は暗い曲には暗い歌詞を書くほうがいいと思うっす」というタイプ。そのぶん歌詞も、曲調に寄り添うから幅は広がるんだけど…。

――だから「DRAGON HORN SHOTGUN」は、曲調に合わせ、歌詞も明るく開放的になってるんだ。

RYOSUKE そう。僕は脳味噌ガチガチ野郎なんで、「明るい感じや希望に満ちあふれた」となったら、ものすごいキラキラとしたものになっちゃうんですよ。本当だったら、少しくすんだ感じにしたうえで明るく書くというように、そこへ少し色のトーンを合わせればいいだけじゃないですか。なのに、明るいとなったら頭の中がピカピカになってしまう。

海 THE KID だけど、そこも磨き方次第で個性になっていくことですからね。

――歌詞のテックさんじゃないけど、そういう存在がいたことは大きかったんでしょうね。

RYOSUKE かなり助けられました。

海 THE KID 今回は、メンバー全員がスタジオで、RYOSUKEが歌詞をやり取りしながら完成させていく姿も見ていた。それが良かったことです。その姿を見たことで、RYOSUKEが本当に言いたいことは何かをもっと理解を深めることができました。やっぱり、メンバー全員で共有していくって大事なことやな。

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