I.N.A.

 hide with Spread Beaverのメンバーであり、hideの共同プロデューサーであるI.N.A.が26日、都内でおこなわれた映画『HURRY GO ROUND』の初日舞台挨拶に登壇。撮影中に、未発表となる「HURRY GO ROUND(hide vocal Take2)」という新たな音源が発見されたことを振り返った。この日、登壇した石川智徹監督はその知らせに当時は「頭の数秒くらいで涙が出て止まらなかった」と振り返った。なお、この日は同映画でナビゲーターを務めた俳優の矢本悠馬、ゲストに元乃木坂46の生駒里奈も登場した。

 本作は、X JAPANのギタリストなどとして活躍し、1998年に他界したミュージシャン、hideの墓石に刻まれた楽曲「HURRY GO ROUND」の歌詞の裏にあるメッセージや、彼の足跡をたどっていくドキュメンタリー。矢本がナビゲーターとして、神奈川県三浦市にあるhideの墓や故郷の横須賀、亡くなる前に過ごしたロサンゼルスへの訪問や関係者へのインタビューから、hideが時代を超えて今もファンを魅了する理由を、その道のりから探っていく。

 また本作には「HURRY GO ROUND」のデモ音源が、20年のときを経て初めて聴かれるというエピソードがある中で、I.N.A.がレコーディングデータを見直した中でオリジナルとは別のバージョンの歌を収録した「HURRY GO ROUND(hide vocal Take2)」というデータがあることを発見するというハプニングに出くわしたことを明かす。劇中でもこのことには触れられており、このトラックが6月6日に発売されるhideの最新トリビュートアルバム『hide TRIBUTE IMPULSE』に収録されることが決まっている。

 このサプライズは、撮影の前日にI.N.A.が、タイトルは『HURRY GO ROUND』であると聞いて、合わせて「もしかしたらデモの音源を聞くシーンがあるかもしれない」と言われたことで、倉庫に入っていたデータを20年ぶりくらい見直したことで起きたという。

 I.N.A.は、デモ音源を石川監督らに聴かせた際のことを振り返り「今回は撮影が終わった後に、監督と音声の方が僕のそばに来て、映画の中でも掛かったけど、(聴いたら)本当にhideさんの声が生々しくて、ビックリした。是非映画の中で使わせていただきたいんだけどということで、お話を頂いたんです。でもその時点ではただのデモテープだと思っていたんです。だからお断りしていたんですけど、家に帰って改めて見たらそのファイルが見つかり、僕自身もすごくビックリして。それだったら“これを完成させて、皆さんの下へ届けられたらいいな”と思ったんです」と映画での収録、そしてトリビュートアルバムへ収録された経緯を語る。

 なお、ボーカルをhide、ギターは同じくX JAPANのメンバーであるPATAが弾いているものであるという。

 また劇中では、I.N.A.から石川監督宛てに音源ファイルの発見を知らせるメールのエピソードも描かれており、当時を石川監督は「“余り期待しないでくれ”と言われていたんです。なので僕的にはもう多分無いなと思っていったんですけど、あのメールを見て“何だこれは!”と思ったんです。僕が聴いていたものと全然違ったし。ある意味、hideさんがライブをしているかのような音源だったんです。すぐ鳥肌立って。頭の数秒くらいで涙が出て止まらなかったです」と振り返る。

 その音源をI.N.A.から受け取ったときのことを、石川監督は「音源が届いて、泣いて、聴き終わったときに“最後はこれしかない”と思いました。ドキュメンタリーって、何も起こらなければ、本当に何も起こらないと思うけど、hideさんが奇跡を起こしてくれたのかなと僕はすごく思った。だから皆さんに聴いてもらいたいと思ったときに、最後が良いかと思い、入れさせていただきました」と振り返りながら「(この展開を)狙っていなかっただけに『ありがとう』というしかなかったですけど…素晴らしいエンディングになったかと思います」と思わぬhideからの贈り物に感激の声を上げていた。

 また、「移動中も撮影中もずっと聴いていたので、何回聴いたか分からない。さっき(登壇前)も歌っていました」と同じくこのテイクを聴いた矢本は「僕がいつも聴いていたものより、吐息なんかもあって生々しく生命力を感じるというか。リアリティがあって、鳥肌が立ちましたね」と大きな刺激を受けたことを振り返った。

 そんな矢本は、hide with Spread Beaverの楽曲「ピンクスパイダー」のMVのロケ地となった、米ロサンゼルスのアレクサンドロスホテルに訪れており、そのシーンも劇中では披露されている。

 現地では建物の扉が閉まっていたというが、徐々にhideの魅力を知り始めテンションが上がっていた矢本は、そのドアをつついたところ開き、舞い上がって監督とともに現地に無断で入ってしまい、現地のセキュリティに怒られたというエピソードも披露、石川監督は「僕の後にいた人たちは“やめろ”と入ってたんですけどね。あの場所は結構危険なエリアだということだったし」などと振り返る一方で、矢本は「あそこから出たとき、スタッフさん達は裏切ったように誰もいなかったですけどね」などと置いてけぼりを食らった現場を振り返り、笑いを誘っていた。【取材・撮影=桂 伸也】

Photos

記事タグ