感覚と計算のバランス 清水翔太、エンターテイナーとしての美学
INTERVIEW

清水翔太(撮影=冨田味我)


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年05月16日

読了時間:約14分

 シンガーソングライターの清水翔太が16日に、ニューシングル「Friday」をリリースする。表題曲は『The Premium Music』という企画から生まれたもので、タイアップでありながらも自発的に作る事ができた、いわば、その時の気分が反映された楽曲だ。本人も「気に入ったのでシングルにした」と語っている。そんな清水は昨年デビュー10周年を迎えた。米ニューヨークの音楽殿堂「アポロシアター」での歌唱は有名な話だが、彼の音楽的原点はパソコンにあるという。音楽制作に至ってはフィーリングを大事にしているという清水だが、プロのエンターテイナーに必要なのは「計算」とも。彼が考える美学とは何か。今作を通じて彼の考えに迫った。【取材=小池直也/撮影=冨田味我】

▽インタビュー要旨
○設計図を描かずフィーリングで
○実体験で足りないと思う音楽を作る
○ファッションにも通じる音楽的美学
○制作の原点はPC、夢中になったHP

設計図を描かずフィーリングで

清水翔太(撮影=冨田味我)

——「Friday」の出来栄えはいかがですか。

 どうなんですかね。最近はいわゆる、シングルのビジネス的な完成度というものをあまり意識していないんですよ。昔はしていたんですけど。1ミリも意識していないので、果たしてこれが良いのかという事もわかっていなくて。ただ、今の自分から自然に出たものである事は間違いありません。完成度を追及するのか、やりたい事なのか、というところで最近はやりたい事を選ぶようにしているんです。

——制作ペースが結構早いですよね?

 そんな事はないですよ。でも、そろそろ休まないとなと思います(笑)。一応10年間、毎年オリジナルアルバムを出してきて、さすがに追いつかないなと感じる時もあるのですが。浮かぶ時は浮かぶんですけど、浮かばない時は浮かばないので。トラックだけできて、詞が浮かばない事もよくあります。

 同じ事をやり続ける事ができないんですよ。最近は割と僕が、ヒップホップな方向性だったり、言う事も大分変わってきていて。前にやっていた様なきれいなラブソングではもう言う事がない、というかやりきった感があるし。言い飽きたという気持ちもあります。だから今言いたい事を言う、というやり方ならたくさん書けますね。それもいずれ飽きてしまうかもしれませんけど。

——「Friday」は、『The Premium Music』という企画から生まれたそうですが、そのタイアップの話があってから制作が始まったのでしょうか。

 そうですね。ただ、割と最初のお話と違う楽曲になってしまいました。当初は「楽しくて、ワクワクする週末」みたいな感じだったんです。出来上がった曲もそうではあるんですけど、エロい感じとか悪い感じが出ちゃって。大丈夫かなという気持ちもありましたが、「全然OKです」と言ってもらえました。

 これで駄目なら、また作れば良いやと思っていましたけどね。迷いながら作っていたら良い曲にはならないので。そのディレクションにがっつり合わせていたらシングルにはしなかったかもしれませんね。出来た曲が自分の気に入るものに仕上がったので、シングルにしたいと思ったんです。

——「Friday」におけるループの印象的なフレーズはどこから着想?

 シンセの音を作っていて「これ良いじゃん」と思った物が出来たんです。それで適当に弾いて「格好良いな」と。本当に全てはたまたまという感じですね。たまたまその時にこういう音が出来て、たまたま弾いたフレーズが良くて、ぶわっと作っていく。だから音が出来上がったところで、弾いたフレーズがしっくりこなかったら多分終わりなんですよ。そういう事もたくさんあります。良い音やビートが出来ても次のステップが上手くいかなかったらやめてしまう。

 そこが良かったら本気でやっていくんです。だからその2ステップが大事なんですよね。クリアできるかどうかは運次第。最初から頭で設計図を描いて作っていくというやり方はしないので。フィーリングですね。だから毎回良い曲が出来ると「今日やって良かった!」と思います。多分その日やっていなかったら出来なかったと思うんですよ。「Friday」も。その日その日によってやりたい事が違うので。

 僕ってあんまりテレビに出たりしないので、ほとんど仕事は家。家で全部作りますし。プリプロ(編注=プリ・プロダクション:録音に当たってのデモ制作など)も一切しないので、家で作った物がプリプロなんですよね。出るのは、曲が出来上がった時にそれを持ってスタジオに行って録るくらい。だからその日どれくらい働くかは自分のさじ加減です。今日は飲み行こう、遊びに行こう、という時もあります。

この記事の写真

写真はありません

記事タグ 

コメントを書く(ユーザー登録不要)

関連する記事