松尾レミ(Vo、Gt)と亀本寛貴(Gt)によるロックユニット・GLIM SPANKYが12日、東京・日本武道館でワンマンライブ『GLIM SPANKY LIVE AT 日本武道館』をおこなった。「怒りをくれよ」や9日にリリースされたばかりの新曲「All Of Us」など代表曲から最新ナンバーまで、アンコール含め自身最多曲数となる全25曲を熱演。2人が追求してきたロックの核心をつくサウンドでオーディエンスを終始魅了した。その公演の模様を以下にレポートする【取材=村上順一】

結成11年、まだまだここからがスタート

松尾レミ(撮影=HAJIME KAMIIISAKA)

 自身初となる日本武道館公演。ステージには赤い絨毯が敷かれ、ステージ上にも日の丸が浮かんでいるかのようだ。BGMがクレッシェンドしていき、会場は一気に暗転。サポートメンバーと亀本、松尾の順にステージに登場し、始まったのは「アイスタンドアローン」。今年1月に新木場STUDIO COASTでおこなわれた『BIZARRE CARNIVAL Tour 2017-2018』の本編ラストに披露され、そこから続いていくような幕開けだった。ゆっくりと熱を帯びるようにオーディエンスを高揚させて行くナンバーは松尾レミの生命力に満ちた歌声が会場に響き、それを包み込むような亀元のギターサウンドで出だしからエモーショナルな空間を作り上げた。

 勢いを増したのは「褒めろよ」。ライブならではの臨場感の中、オーディエンスも腕を掲げ、ステージから放たれる音に応えていく。そして、一転して闇へひきずりこむような感覚を与えてくれた「MIDNIGHT CIRCUS」「闇に目を凝らせば」と立て続けに披露。ステージ後方のカーテンが上がり、楽曲をイメージした映像が流れるなか、松尾の表現力を堪能出来るナンバーで観客を扇情させていく。昨年リリースされたアルバム『BIZARRE CARNIVAL』から表題曲「BIZARRE CARNIVAL」と「The Trip」2曲を披露。続いて「お月様の歌」では亀本はアコギにチェンジしアルペジオを奏でる上を、松尾は母性を感じさせる優しい歌声で武道館を包み込む。

 ここで初のMC。松尾は「ロックが好きが集まったからロックを楽しむ日にしましょう」と投げかけ、「私たち高校一年からやって来ましたが、結成11年まだまだここからがスタートだと思っているのでみんな宜しく!」と告げ、亀本のブルージーなギターが響き渡る。途中、ジミ・ヘンドリックスの「Voodoo Child(Slight Return)」のイントロを奏でると歓声が起こる。そのままサイケデリックなロックナンバー「ダミーロックとブルース」へ。ブルースロック特有の衝動と感情が体に流れ込んでくる感覚は、我々の細胞に直接響いてくるようだ。

 続いての「ミュージック・フリーク」から「いざメキシコへ」「怒りをくれよ」と引き継がれていく。この2曲は激しさのベクトルが違うロックの形を提示、そのサウンドは聴くものの感情を昂らせてくれる。それはオーディエンスの歓声が物語っていた。

 亀本は「この武道館にお客さんが入るか不安もあったけど、こんな素敵な景色を見せてもらって嬉しいです」と喜びの声を上げた。2人ならではの緩いトークで和ませた後は「吹き抜く風のように」へ。松尾の弾く乾いたアコギのサウンドがアクセントなり、その上で鳴るソウルフルな歌声。続いての「美しい棘」では、言葉をひとつひとつ丁寧に歌い上げていく姿が印象的だった。先日リリースされたシングル「All Of Us」収録の「The Flowers」、「メロディが歩き出していった」と小媒体のインタビューでも語られたナンバー「All Of Us」と最新のGLIM SPANKYの奏でるサウンドと歌声で魅了。

またみんな遊ぼうね

亀本寛貴(撮影=HAJIME KAMIIISAKA)

 日本におけるロックシーンの幅の狭さを感じていると話す松尾。「私たちはそれを広げるために活動しています。カッコいい(ロックの)引き出しをたくさん作っていけたらと思っています。賛同してくれるみんなで台風の目を大きくしていきましょう」と述べ、不要なものを削ぎ落とし作り上げたクールなリフが印象的な「愚か者たち」を投下。真紅の照明がステージを照らすなか、心情に刺さるようなシリアスなロックサウンドで武道館を席巻。

 続いて「NEXT ONE」「END ROLL」とGLIM SPANKYの幅広い引き出しを魅せてくれたセクションへ。特に「In the air」では今までのGLIM SPANKEYではなかった音楽性を聴かせてくれる1曲。ソリッドなギターカッティングが心地よい新しい風を吹かせてくれた。続いて披露されたのは「サンライズジャーニー」。この曲をリリースした当時の思い出を話す松尾。ライブハウスでこの曲の演奏中に涙を流してくれた観客を見て「(お互いに)感動しあって魂を震わせることは美しいなと思った」と、音楽を通して心が通じ合えた瞬間だったとしみじみ語った。

 ここで上京してきた時のことを振り返る松尾。長野時代はバンド活動を否定されたこともあったと話す。しかし、上京してきて出会った人たちによって環境はガラッと変わったという。「否定してきた人たちを敵に回すのではなく、その人の心さえも開くような音楽を作りたい」と思い作った楽曲「大人になったら」を本編最後に届けた。情感を込めた歌声とサウンドで至高の空間を作り上げ、ステージを後にした。

 アンコールで松尾は私服で登場。松尾と亀本の2人でアコースティックで「さよなら僕の町」を披露。この曲を背負って上京してきたターニングポイントとなる1曲を、今改めて原点を見つめ直すかのように温もりのあるアコギのサウンドとともに綴った。「これからも転がって行こうぜ!」と力強い言葉から「リアル鬼ごっこ」へ。そして、「またみんな遊ぼうね」と投げかけ「Gypsy」で初の武道館公演の幕は閉じた。

 数々のレジェンド達が音を奏でて来たこの日本武道館。そこで演奏する2人からは、音楽やサウンドへの自信が満ち溢れていた。この2人が音を出せばどんなジャンルもGLIM SPANKYになるというアイデンティティがより強くなったと感じさせたステージだった。この経験を経て次はどのような音を聴かせてくれるのか期待感が高まった。

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