ある意味、音楽は一つの言語
――ここからは、文音さんと音楽というテーマでお話をうかがえればと思いますが、文音さんは普段は、どんな感じで音楽と接しておられますか?
やっぱり洋楽を聴くのが多いですね。邦楽は、父が歌を歌っているとこともあり、父の曲も聴きますけど、私はブルーハーツがすごく好きです。
――そうでしたか。とても元気な感じが?
大好きです、本当に。あと邦楽であればB'zとかも。
――わりとアクティブな感じのものを、趣向とされるのでしょうか。それは洋楽のほうも?
いや、洋楽のほうはR&Bが好きです。昔のアール・ケリーなんかを、昔はよく聴いていましたね。音楽は、車を運転するので、ダウンロードして車のプレーヤーに携帯をつなげて聴いたり、普段から結構聴いたりします。
――なるほど。今回の映画の主題歌は、大貫妙子さんの歌う唱歌「この道」が使用されていますが、これも印象的でしたね。
実はこの曲は、物語の最初のほうにあったお散歩のシーンで、草笛さんと私がいたシーンのことで、最初に草笛さんが歌を口ずさんだことがきっかけで、主題歌として選ばれた曲なんです。そのときに草笛さんが、アドリブで出した曲だったんですけど、本人は「もしかしたら使えないかもね」なんて言いながら、最初はハミングみたいな感じで歌っていて。
でもそれを撮影し終わった後に監督が「あの歌がすごく印象的だった」と。で、主題歌にしたいという話が出てきたんです。それで許可を得て、最後にアフレコでオンの歌にしたんです、あのシーンは。だからその現場で生まれた歌がそのまま主題歌になりました。
――そうなんですか? それは貴重なお話ですね。草笛さんが歌ったというのも、すごく印象的な…。
本当に。映画にも<この道は いつか来た道>っていう詞が、すごくバージンロードを歩く情景とマッチしたというか。曲は昔の曲なので古臭いといえば古臭いけど、ストーリーとしては、すごくマッチした気もしています。
――草笛さんは、そこでなぜこの歌を歌われたのでしょう?
特にたずねてないので分からないのですが…草笛さんは、よく現場とかでも、歌を歌われたり、口ずさんだりなんかをされることがあって、たぶん撮影中にポンと思いついたんだと思います。車椅子に乗って、押してもらいながら「この道は~」というのが浮かんできたんだろう、と。
――素敵ですね。文音さんご自身も、そういう女優になりたいと…?
もちろんそう思います! 本当に草笛さんの歳だからこそ出せるものが見えたというか。本当に私たちが想像できないくらいの、激動の時代を生き抜いてこられた女優さんだし、一つひとつの言葉にすごく重みがあります。ミュージカルを日本につれてきて、初演をしているというのも草笛さんなんですよね。
――偉大な経歴をお持ちの女優さんですよね。
「国宝」といってもいいくらいの女優。今回の撮影では草笛さんから、いろんなことをいっぱい経験してきた女優が醸し出す雰囲気というか、すごく重みみたいなものも感じさせていただき、本当に素敵だと思いました。
――良い機会になりましたね。改めておうかがいしますが、文音さんにとって「音楽」というものは、どんな印象がありますか?
私は深夜のラジオ番組のパーソナリティを、4年程おこなわせていただいているんですけど、その中でいろんな音楽を紹介する際に感じたことがあります。それは、音楽は世界の共通言語だということ。例えば言葉が違っても、一つ好きな音楽が合えば、そこで盛り上がることができるし。その意味では一つの言語ですよね、音楽って。
――確かにそういう捉え方もありますね。
だから“音楽は国境を越える”じゃないけど、言葉が本当に通じなくても、音楽一つで盛り上がることができるということを、すごく感じます。言葉で説明できないことでも、好きな音楽が一緒であれば、なにか共通するとか、心が通じ合うこともすごくありますし。
(おわり)