POLYSICS、ロックにときめき続けた20年を濃縮したツアー最終
全国ツアーファイナルを開催したPOLYSICS(撮影=緒車寿一)
4人組ロックバンドのPOLYSICSが2日に、東京・恵比寿リキッドルームで全国ツアー『結成20周年記念TOUR “That's Fantastic!” ~Hello! We are New POLYSICS!!!!~』のツアーファイナルを開催した。昨年、結成20周年を迎え、新メンバーナカムラリョウ(Gt)の加入を発表。11月には15枚目のアルバム『That's Fantastic!』をリリースし、今年1月11日からおこなってきた全22公演のツアーの最終日。序盤は新譜から中心に、そして後半ではインディーズ時代の曲も交えたベスト盤的セットで魅せた。20年にわたり変わらずライブシーンの最前線で活躍し続ける理由を垣間見た。そして4人になったPOLYSICSのライブステージはさらにパワーアップ。今もなお進化し続けるPOLYSICSの魅力を改めて知ることとなった。【取材=榑林史章】
テンション120%で振り切る
SEに乗せて手拍子が鳴り響く中、メンバーが登場した。ドラムのヤノも、スティックを鳴らして盛り上げる。1曲目、けたたましいシンセとリズムが鳴り響いた。アルバム『That's Fantastic!』の表題曲でもある「That's Fantastic!」だ。ハンドマイクで「Toisu! Toisu! Toisu!」と叫びながら、ステージを所狭しと動き回るハヤシ(Vo&G)。観客は曲に乗せて<That's Fantastic!>とかけ声をかけながらジャンプし、冒頭からテンション120%でライブが始まった。
前半は最新アルバム『That's Fantastic!』の収録曲を軸に、「That's Fantastic!」から5曲目の「Sea Foo」までは、アルバムの収録曲順通りに披露。2曲目の「Crazy My Bone」ではハヤシの「ギター、ナカムラリョウ!」という声で、新メンバーのナカムラが、ギャンギャンのギターソロを披露して大歓声があがる。3曲目「Cock-A-Doodle-Doo」では、ハヤシがコミカルに、ニワトリの様に両手をバタバタさせる動きでも魅せた。
「ルンバルンバ」では、ハンドマイク片手にハヤシが、ラップ調のフレーズで盛り上げる。「Sea Foo」では、ハヤシの「踊れ〜」という声で、観客がハヤシの動きをマネて一斉に踊る。手でばってんを作ったり、お笑いのネタの様なポーズが入ったり、ユーモアたっぷりの動きで、会場には楽しそうな笑顔が広がった。
ハヤシが踊って、観客がそれを真似て踊る。今までのPOLYSICSでも見られた光景だが、ナカムラがギターとシンセを担うことで、ハヤシが自由に動ける度合いが増した。それにより振り付けの楽しさは倍増していた。それは観客の笑顔が物語っていた。
新メンバーの加入について、何かが変わってしまうのではと不安を抱いていたファンもいたと思うが、このライブを観る限り、バンドにとっても観客にとっても、いいことずくめのメンバー加入だったと言える。
また、結成20周年を掲げたツアーでもある今公演では、後半では古くからライブで人気の楽曲も多数披露して、ベスト盤的な内容でも楽しませた。
「Digital Coffee」は、原曲は2008年だが、昨年の再録ベストアルバム『Replay!』でリアレンジされている。フミが<ウ〜Funny Monday目が冴えた〜>と歌うサビでは、ハヤシが観客とともに上げた手を左右に揺らして一体となった。「MAD MAC」は、2002年のアルバム『For Young Electric Pop』の収録曲。スカビートとサーフロック、さらにテクノが融合したようなナンバーで、観客は全身を揺らしてビートに身を委ねた。
ロックにときめき続ける
そして、「Buggie Technica」といったインディーズ時代に発表して以降、20年近くに渡ってライブのクライマックスを彩っている楽曲でも盛り上げた。インスト曲の「Buggie Technica」は、イントロが始まると観客は「キター!」とばかりに手を上げて大喜び。バイザーが取れてもおかまいなしのハヤシは、何度も頭から水を浴び、汗と水でビチョビチョの全身から湯気を立てる。そして、本編ラストには、2000年のメジャーデビューシングル「XCT」に収録の「URGE ON!!」を披露。ハヤシはギターをかき鳴らしながら、すべてを出し切ったようにステージへと倒れ込んだ。
いくら激しいロックバンドであっても、何年か経てばミディアムバラードくらいやるものだが、POLYSICSは一切そんな素振りは見せない。むしろ激しさは、ライブのたびに増している気さえする。
ここまでPOLYSICSを、突き動かすものは何なのか? それは、死線ギリギリまで自分を高めることによってこそ生まれる恍惚と、そんなハヤシだからこそ全身全霊で応えようとする観客のレスポンスの高さかもしれない。
ちなみに『Replay!』発売時のインタビューでハヤシは、「40代50代になっても、アンプラグドなんかやらない。それだと萌えないし、もしアコースティックギターを弾くなら、改造してロケットを付けるかも(笑)」と、うそぶいていた。
自分が萌えるか萌えないか、そこに20年忠実でいられるバンドは滅多にいない。POLYSICSはあの時から今も、そしてこれからも、シンセとギターが爆音を奏でるロックにときめき続けている。