休符は休みでなく音楽 山田姉妹、メロディで伝えたい歌詞の魅力
INTERVIEW

休符は休みでなく音楽 山田姉妹、メロディで伝えたい歌詞の魅力


記者:小池直也

撮影:

掲載:18年03月14日

読了時間:約16分

オリジナル曲に込めた想い

――今回はそれぞれお2人が作詞された、オリジナル曲「虹色の空」と「ただいま」も収録されていますね。

『ふたつでひとつ』ジャケ写

山田華 これは私たちにとって初めてのオリジナル曲です。ただ、もう作ったのが5年前。私が書いたのが「虹色の空」。音大生って3、4年生になると「将来どうしよう」と考え出すんですけど、その時期に書きました。ちょうど鎌倉にいて。作曲してくれた川崎龍くんは大学の同級生。ちょうど「オリジナル曲作りたいね」と話していたりしたんですよ。

 その流れから「あ、今歌詞書けるかも!」と思えて、鎌倉のお洒落なスタバで持っていたノートに書いたんです。それを川崎くんに送ったら、夜に彼から曲が付いて返ってきました。その頃よく3人で演奏をしていたので、その機会に何回か披露していましたね。今回、収録できてとても嬉しいです。

山田麗 「ただいま」も同じくらいの時期にできました。4月11日が母の誕生日なんですけど、3月に山田家のファミリーコンサートをやってほしいと地元の逗子市から依頼があったんです。そのお話があった2013年はちょうど私が1人暮らしを初めて1年が経った時でした。1人暮らしだと帰って来ても家に電気がついてなかったり、「おかえり」が聴こえないことが何となく寂しくて。

 それから実家に戻ってくると、今まで普通に過ごしてきた事が凄く暖かくて嬉しかったんです。その気持ちを込めて、母の誕生日プレゼントとしてファミリーコンサートで披露したのがこの曲でした。

――その思い出の曲を5年後の今歌うというのは、どういう心境ですか?

山田華 歌った瞬間に「あの頃はこういう気持ちだったな」と、昔に戻る感じがして凄く不思議です。色々な人が聴いてくれて、コンサートで一緒に歌ってくれると嬉しいなと凄く思います。「これからも歌い継ぎたい曲」と思って頂けたら、なお嬉しいですね。

山田麗 その当時書いた曲ではありますけど、歌っていなかった期間が多かったので、改めて歌ってみると優しい気持ちになりますね。その頃を思い出して「やっぱり家族って良いな」と。自分の歌にそれを気付かされた事にびっくりしました。

――ちなみに、お2人も学生時代「将来どうしよう」と考えた事はありましたか?

山田華 ありましたよ。音大の中にいると就活がないので、焦りがない。でも私たちは高校まで普通の高校に行っていたので、同級生が「○○の内定が決まった」とか「面接では○○と答えた」、「初任給で○○した」とリアルな話を聞くんですよ。

 社会人1年目の私たちはオペラの研修所に行ってはいましたけど、車の免許を取りに行けるくらいの時間があったんです(笑)。どうしようかなと悩みながら、去年デビューの2月22日に向けて動く機会を沢山頂けて。凄く私たちは幸せな環境にいるなと思っています。

――いまだに悩んでいる音大卒の人は多い?

山田麗 今でもたくさんいますね。音大を出てからも歌っていけるということ自体がとても恵まれていることで、本当に色々な方に支えられていることがありがたいです。

――山田姉妹の活動がそういう演奏家を巻き込む機会になったら良いですね。

山田華 コンサートではCDの曲だけじゃなくて、音大で勉強をしてきたオペラのアリアなどクラシックの曲も歌っています。それで「クラシック自体に興味を持つ人が増えたら、私たちのコンサートにもお客さんが足を運んでくれるきっかけになるから頑張って」と友達に言われたりしますよ(笑)。そういう効果もあれば良いなと思っています。

山田麗 クラシックってどうしても敷居の高いイメージがあります。だからオペラなどクラシックのコンサートを観に行くお客さんはどうしても日本で少ないんですよ。だから、私たちのお客様にさりげなくオペラもお届けしたいです。生歌を聴くとびっくりされる方も多いですね。言葉も違うし、発声も違うので。でも私たちがやってきた事なので、自己紹介代わりにもなると思って。

――そういう風にルーツミュージックに繋げていく活動は非常に大事です。

山田華 コンサートをやっても「クラシックの曲をもっと歌ってほしかった」という様な感想を頂く事が最近増えてきています。いつかCDでもクラシックのCDを作ることを1つの目標にしていこうとも思っています。

山田麗 オペラのアリアって本来1人で歌うものなんですけど、それを2人で歌う2重唱に変えて楽しくお届けしたり、親しめる様に工夫しました。それによってクラシック音楽を身近に感じて頂けている、とこの1年で感じました。これからもそれは続けていきたいですね。

――それはある意味で伝統からはみ出さなくてはいけませんね。もしかしたら先生に怒られたりして。

山田華 私たちの先生はむしろ『うたコン』を観て感想をくださる様な方なので、大丈夫です。クラシック以外の曲でレッスンをお願いしても親切に教えてくださいます。

山田麗 色々な考えの方がいらっしゃるんですけど、私たちが感じるのはクラシックとかポップスとか隔てなく「音楽」。そこに壁を作らずに全てを受け入れれば良いんじゃないかなと思います。好きとか嫌いとかは個人個人が決めるものなので。

山田華 小さい頃からずっとクラシックを歌ってきたわけじゃないんですよ。最初はポップスとか、ジブリ、ディズニーなどの歌でした。それで2人とも音大に行くために高校生になってからクラシックの勉強をしたんです。だから元々ポップスは大好き。クラシックも新たに歌える様になったものとして大事だし、両方ともちゃんと歌っていけるように努力したいですね。

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