シンガーソングライターの半崎美子が24日、東京・お台場ヴィーナスフォート教会広場で、メジャー2ndシングル「明日への序奏」の発売記念ミニライブをおこない、同曲など含む4曲を歌い届けた。また、イベント前には報道陣による取材にも応じ、17年の下積みを経て昨年メジャーデビューした自身の半生を重ね「助走を続けている方々に届けたい」と曲に込めた思いを語った。【取材・撮影=木村陽仁】

 17年の個人活動を経て、昨年4月にミニアルバム『うた弁』でメジャーデビューした半崎。ショッピングモールを中心にライブ活動をおこなっていたことから“ショッピングモールの歌姫”としても称されている。その『うた弁』収録曲「お弁当ばこのうた~あなたへのお手紙~」は、NHK Eテレ『みんなのうた』などでも放送され反響。更に、メジャー1stシングル「サクラ~卒業をできなかった君へ~」で日本有線大賞・新人賞を獲得した。今作は、それに次ぐメジャー2枚目のシングルで、17年間助走を続けてきた半崎が送る、人生の助走を続ける人たちへの賛歌だ。

杉並児童合唱団と合唱する半崎美子

 同曲は、昨年4月のメジャーデビューから2カ月後の6月に出来たという。半崎は「助走を助走と思わずに無我夢中で取り組んでいる人こそいつの間にか飛んでいるという事があると思っていて、羽ばたくことということよりも助走を続けることに意味があると思いますし、そこに光を当てた曲です」と曲に寄せた思いを語った。

 また、同曲は、合唱曲をイメージして作ったという。その理由を「自分の歌が自分よりも長生きして欲しくて、教科書に載ることも大きな夢の一つ。自分の歌を歌い紡いでもらいたいという思いがあるのと、合唱そのものの魅力、声のパワーが合わさって奏でられる、自分ではできない深みや広がりに興味があった。合唱として自分の歌を皆さんに歌い紡いで頂きたいという思いがある」と明かした。

 一方、メジャーデビューしたことも同曲を作るうえで大きなきっかけになったようだ。「個人で活動していた時は、歌う喜びや聴いてもらう喜びを凄く感じられました。だけど歌ってもらう喜びは今までなかったというか、歌ってもらうことは今まであまりなかった。メジャーになってからは、学生さんたちが学校で歌ってくれたりとか、カラオケで歌ってくれることも、たくさん耳にするようになって、歌ってもらう喜びを新たに感じました」と語った。

 今回、編曲を手掛けたのは、松任谷由実コンサートツアーの音楽監督をはじめ、一青窈、今井美樹、ゆず、平井堅、JUJUなどのプロデュースを手掛ける、作・編曲家兼音楽プロデューサーの武部聡志氏。このシングルで初めて参加してくれたといい「武部さんには素晴らしい楽曲があって、もともと“いつか”とは思っていた」とし、念願が叶ったかたちだ。

笑みを浮かべる半崎美子

 この日は4曲が披露されたが、会場は声や音が大きく反響する構造。リハーサル時も半崎は「声が響きますね。リバーブがかかって」としていたが、その反響がかえって半崎の歌声をより艶やかに広がらせ、包み込んだ。「この教会広場にぴったりな曲を持ってきました」という「稲穂」では、稲が風になびくように、キーボードの音色が美しく流れ、そのなかで半崎の歌声が伸びやかに響いた。

 一方、「人生はこういうものじゃないかと思って書きました。タオルが雑巾になっていくお話です」と紹介して披露した、同シングルのカップリング曲「ぼくはぞうきん」は、ユーモアある着眼点だが、ストリングスの音色と人格を持たせたタオル目線の歌詞が妙に人生に重なり、グッとつままれるような想いが広がった。

 そして「サクラ~卒業できなかった君へ~」。「この歌は春を歌う歌よりも心の中に咲き続けている人、生き続けている人、その人へ思いを送る歌です。だから季節を問わずに1年かけて大切に歌い続けたいです」との思いを語ってから披露。歌の世界観だけでなく、気持ちを込めて歌う半崎の強弱を使った歌声が、聴く者の心を突き、涙をぬぐう人も多かった。

半崎自身も目に涙を浮かべた

 そうしたなかで最後に届けられた「明日への序奏」。昨年11月におこなった東京・EX THEATER ROPPONGIでのワンマンライブ『「うた弁」発売記念ツアーファイナルコンサート2017 ~特選!感謝の根菜盛り合わせ弁当~』で初披露された同曲。そのステージでも共演した杉並児童合唱団の10人が登壇し、合唱した。彼女たちの若々しくも美しいハーモニーに、力強い半崎の歌声。そして歌詞。背中を押され、その歌の力によって心に明かりが灯るようだった。観衆のなかには「サクラ――」とは異なる涙が溢れていた。まさに賛歌だった。

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