自分を信じて突き進む、石川綾子 平昌五輪フィギュア選手に捧ぐ
INTERVIEW

自分を信じて突き進む、石川綾子 平昌五輪フィギュア選手に捧ぐ


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年02月14日

読了時間:約12分

想像するだけでもロマンがあります

――今回はクラシック音楽が中心ということもあって、楽曲にまつわるエピソードもわかると、聴いた時の味わいが変わるかなと思います。常に楽曲の背景を調べる石川さんはどのように捉えていますか。

石川綾子

 その当時のことを音楽を通して感じることが出来ます。例えば、今作にも収録されているヴィヴァルディの「ヴァイオリン協奏曲 四季より『冬』」では、300年前に書かれた曲で、当時のイタリアの冬の情景を音楽で表した曲で、最初のフレーズは氷の上を割らないように、そろりそろりと、静かに歩いて行くような情景を映し出していたりします。そういった情景を音楽を通してできるのは面白いなと思います。

――あのフレーズはそう言った表現を再現されているんですね。こういうお話を聞くとクラシック音楽がすごく身近に感じられます。

 クラシック音楽というのは高尚で品があって、上品なイメージがある方もいると思うのですが、ヴィヴァルディの曲を聴くと、けっこうロックなんですよね。特に「ヴァイオリン協奏曲 四季より『夏』」はよりロックを感じます。300年前のクラシックの方々の方が、もしかしたら現代の私たちよりも感情が豊かだったのではないかなと想像できたりもします。

――そういった時代背景を汲み取って聴いたり演奏すると面白いです。そこにはロマンがありますよね。

 まさにロマンがあります。ヴァイオリンも300年前に作られた楽器で、一体誰によって引き継がれてきたのか、どんな気持ちが込められているのかというのを想像するだけでもロマンがあります!

――当時のことを知る術がほとんどない分、演奏者の解釈によって表現方法が変わりますからね。

 そうなんです。今みたいに録音技術があったわけではないので、解釈の仕方が演奏者によってそれぞれ違います。オリジナルで録音されたものがなく、楽譜だけなのでどれが正解でどれが間違っているかということはなくて、クラシックは自由な音楽だなと感じています。

――「バラード第1番ト短調 Op.23」はショパンが書いた初めてのバラード曲だと聞いたことがあります。

 ショパンも私たちからすると、もう架空の人物なんじゃないかというくらいの偉人ですが、そういう方々と音楽を通して繋がることができるのもすごく素敵だなと思います。これを機にどういう人が作ったのかなと興味を持っていただけたら嬉しいです。

――今回のレコーディングはいかがでしたか。

 今回も信頼を寄せているニラジ・カジャンチさんに録っていただきました。今回の音は今までで一番、ヴァイオリンの美しさが表現された音色で録って下さいました。今までの経験もどんどん活かして、マイクの種類から位置までものすごくこだわってくださって、録り音から本当に素晴らしく、感謝しています。もう録っている最中から曲にすごい感情移入することが出来ました。

――音の方もすごく良いですよね。今回演奏面で大変だったところはあったのでしょうか。

 今回は全曲コンサートで弾いているかのような感覚で全身全霊で臨みました。「トゥーランドットより『誰も寝てはならぬ』」を録っている時もニラジさんもプロデューサーさんも1テイク目から「これがいいね」と言ってくださって、レコーディング自体はすごくスムーズでした。

――今のお話を聞いた感じ、おそらくイメージが完全に出来上がっていたんでしょうね。そこに迷いがなかったと言いますか。

 はい。もうデモの段階からこのままコンサートで披露できるイメージで作り上げていきました。アレンジャーさんもいつも一緒に制作させていただいている方で、信頼関係も出来ていたので目指すものが見えていたと思います。

――先ほどヴァイオリンの音色のお話が出ましたが、石川さんが使用されている1763年製のヴァイオリンと一般的に売られている現代のヴァイオリンの音色は、同じ人が弾いた場合、素人でもわかるコツってあるのでしょうか。よくテレビ番組で名器当てクイズみたいなのをやってますが、割と皆さん外しますよね。

 そうですね、今は一般的なヴァイオリンもすごく音が良いので難しいかもしれません。深みと太さがある方がオールド(ヴィンテージ)のことが多く、新しい楽器はブライトな音色が多いように感じています。テレビからの音だとコンプが掛けられているからちょっと分かりづらいかもしれませんね。(編注=コンプレッサーという音を圧縮しダイナミクスを変化させる機械)

 今ちょっとやってみたいのが新しいリーズナブルな楽器でも、「こんなに良い音で鳴るんだよ」というのをやってみたいですね。安いから変な音、高いから良い音という先入観を取れたら良いなと思います。

――それは興味深いですね。是非聴いてみたいです。では最後に2018年はどのような年にしたいですか。

 まずは4月6日のコンサートに向けてしっかり仕上げていきたいと思っています。今回、紀尾井ホールでストリングカルテットをバックに演奏させていただくのですが、ここ数年で一番と言っても良いほどクラシック音楽中心のコンサートにさせていただく予定です。

 私が一番やってきた原点に近いコンサートになるのではないかなと思っているので、今はそこに向けて高めていけるかと自分自身を疑う作業に入ります(笑)。ヴァイオリンのコンディションも一番良く鳴るように仕上げていって、クラシックってこんなにかっこいいんだ、楽しいんだということを一人でも多くの方に感じてもらえるコンサートにしたいです。

――演出にも期待しています。個人的にはいずれ会場を飛んでいただきたいという希望もあります(笑)。

 飛びたいです(笑)。

(おわり)

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