志村正彦さん逝去から8年、敬意表し初期曲をリズム面からみる
<記者らコラム:オトゴト>
クリスマスが終わりました。しかし、どうしてもこの季節になると、2009年に亡くなったフジファブリックの志村正彦さんを思い出さずにはいられません。
彼が在籍したフジファブリックの作品で、私が最も好きなのはメジャー1作目の『フジファブリック』(2004年)。このアルバムは幻想的な詞世界や色とりどりな楽曲群が特徴で、彼らの原点とも言える作品だと言えましょう。サウンドや世界観も素晴らしいですが、テンポを変えずに加速していく「TOKYO MIDNIGHT」や、同じくテンポを変えず、リズムが変形する「サボテンレコード」に心踊った事を今でも思い出されます。
後者「サボテンレコード」のリズムを少し解説させてください。この曲の仕掛けはビートルズの「Lucy In The Sky With Diamonds」に似ています。テクニカルな事はわかる必要はないのですが、「Lucy~」は同じ周期の3拍子系から4拍子のビートに変形します。それに対し「サボテンレコード」は跳ねたリズムから、跳ねないリズムに変形しています。ノリが変わるんですね。ノリを変える事で展開を付ける楽曲は珍しいですね。
そして、作曲者である志村さんがリズムを意識しているのは間違いありません。この楽曲の歌詞を引用します。
<何も意味はなかったが
ステレオのスウィッチ入れて
30年遡りかけた音楽
それはボサノバだったり
ジャズに変えてはまったり
リズムチキチキドン チキチキドンドコ>
一般的にボサノバのリズムは跳ねない8ビート、ジャズはスウィングしているので跳ねた4ビートが多い。とすると「サボテンレコード」は歌詞と楽曲の両面において<跳ねたビート/跳ねないビート>に焦点を合わせた、大変コンセプチュアルな楽曲だという事がわかってきます。もしかしたら偶然の産物かもしれませんが、それでもこんなに良く出来た楽曲はなかなか無いのではないでしょうか。
こ うして彼の事を考えるとやはり寂しいですが、志村さんが僕らに遺した物は大きく、偉大だなと改めて思います。語り継いでいかねばならない日本のアーティストのひとりでしょう。【小池直也】
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