シシド・カフカ、観客と一体感溢れるステージで見せた真の魅力
撮影=青木カズロー
歌手、ドラマーのシシド・カフカが13日に、東京・渋谷WWW Xで東名阪ツアー『シシド・カフカ Live Tour 2017 そうだ、ライブやろう』のファイナル公演をおこなった。そのスタイリッシュな外観から、クールなイメージのある彼女だが、この日はそのイメージとはまた違った、一体感溢れるステージで親しみやすい彼女の魅力を感じることができた。【取材=桂 伸也】
近年、ドラマ、映画やCMなどの出演でも活発に活躍し、そのクールなルックスや演技で注目を浴びているカフカだが、今年はミニアルバム『DO_S』のリリースや、歌手でフリューゲルホルン奏者のTOKUのアルバム『Shake』、ディズニーコンピレーションカバーアルバム『Thank You Disney』への参加など音楽活動も充実。そして10月にはクレイジーケンバンドの横山剣とのデュオによる「羽田ブルース」、11月にはザ・クロマニヨンズの真島昌利が楽曲提供した「新宿サノバガン(SON OF A GUN)」、12月にはドラマーで俳優の金子ノブアキをフィーチャーした「zamza」と3カ月連続のシングルリリースと年末までその創作活動は留まるところを知らない。
まもなく訪れる新たな年にも、その歩みは全く止まることはないと予想されるカフカ。この日のステージも、熱気の立ち上る会場の中で、様々な可能性に挑戦する彼女の、アクティブな表情が垣間見られるステージとなった。
クールな表情の奥に見えるもの
スタート前の会場で、BGMとして会場に流れていたのは、70〜80年代の昭和歌謡やニュー・ミュージック。中でも特に印象的だったのは、山口百恵のヒット曲「ロックンロール・ウィドウ」。馴染みやすさが特徴でもあるこの時代の音楽の中で、この曲は女性ならではのカッコよさをふんだんに見せた、その走りになった曲であるという印象もある。
そして、このクールな印象は、カフカの端正なマスクがそのまま表しているようにも見える。「女性が憧れる“カッコいい女性”」そんなイメージがピッタリのカフカ。この日はそんな彼女を一目見ようと、フロアには女性客も多く訪れていた。
やがてフッと消えたBGMに続き、リズミカルなSEとともに会場は暗転。ワクワクするようなリズムに、観客も思わず手拍子でそのリズムにこたえる。そして、さらに大きな拍手で会場に迎えられ、カフカたちはステージに登場した。シンプルな黒のトップス姿で登場したカフカ。全く気持ちを表さないポーカーフェイスを見せていたカフカだったが、その姿がかえってフロアに威圧感のような空気を漂わせる。その中で「music」「明日を鳴らせ」と激しく疾走感のあるロックナンバーを立て続けに打ち込んできた。
カフカはこの日、ステージスタートから「3年振り」だというギタープレーも披露。その表情が、ギターをかき鳴らすしぐさ、そしてサビへ向かうたびに激しくなるサウンドによって、徐々に感情を漂わせていく。更に挨拶のMCを終えてからは、フロアとの距離をさらに縮めて「ちょっと踊ってみる?」と呼びかけ、グルーヴ感のある「負けないゲーム」へ。
そのキメが観客とともに決まるたびに「いいね!」「素晴らしい」「せーの! のあとで行くからね」「あと2回!」と声を掛けながら、このひと時をともに楽しむ。
すっかり固さもほぐれた様子で、盛り上がりを見せるフロアを前に、次は歌に振りや表情を加えて、さらに表現力豊かなプレーで「FLY HIGH!」「春の約束」と楽しいひと時は続く。そして第一セットのエンドは、しっとりした雰囲気で迎えられた。リラックスして椅子に座り、気のおけない親友のような観客と他愛もない話に花を咲かせながら、アコースティックなサウンドで始まる「100年ビール」、そしてバラードの「Don't be love」で区切りの時を迎え、一同は一度ステージを降りた。
音楽に対する情熱があらわになった瞬間
再び暗くなった会場の中、ステージでは後方にあったドラムセットが前面に移動され、カフカはドラムをプレーしながらのパフォーマンスを披露した。マーチのリズムからサポートミュージシャンとの絶妙なセッションを聴かせる「Obertura」からステージは再びスタート。
間では超絶ドラムソロも披露しては観客の声を煽り、しょっぱなから猛烈な勢いを見せる。カフカの表情も、前半とは対照的にアグレッシブ。時に笑顔に、また次の瞬間には情感を込めた表情を見せ、音に込めた情熱を目いっぱいに表現していく。それは音楽に対する彼女の情熱、その本質があらわになった瞬間であったようにも見える。
卓越したドラムのテクニックを披露しながらのボーカル。これをこなせるのは、国内のミュージシャンの中でもそう多くはいまい。この難しいスタイルでもしっかりと観客とコミュニケーションし、ステージを目いっぱいに盛り上げる。「Get Up!」から、心地よい8ビートが、皆の気持ちをアゲていく。
さらに、時にシャッフル、16ビートとバラエティに富んだリズムを展開させながら、女性であること、シンガーであること、そして時には“女の子であること”など、その歌声に様々な面を見せる。
「いや〜ライブやっている感じ。でも楽しいね!」合間のひと時に、そんな一言が漏れる。思い余って、つい歌詞を忘れる。そんな瞬間でも、とりつくろったりせずありのままの表情を見せる。そんな姿が、かえってカフカの雰囲気を、いっそう親しみやすくする。女優としての活動で見せる“カッコいい表情”も彼女の魅力だが、ライブで見せるこの表情もまた然り。
そして「ダンスナンバー行くよ!」とのカフカのコールで、ステージはラストナンバー「ラヴコリーダ」に導かれた。常に観客に目を向け、全力のステージを繰り広げたカフカ。さらにアンコールでは会場の観客とともに「羽田ブルース」を歌うなど、ファンとの時間は、瞬く間に終わりを迎えた。「ありがとう! またね! よいお年を!」最後に満面の笑みで、カフカは観客にこの日の礼を告げた。
セットリスト
『シシド・カフカ Live Tour 2017 そうだ、ライブやろう』 12月13日 渋谷WWW X 01. music |
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