とあるリリースイベントで神奈川のライブハウスを訪れた。この日はロックバンド、メタルバンド、HIP HOPユニットなどカラフルな顔ぶれが出演。オーディエンスもまた年齢層・国籍ともに様々だ。ライブ観戦をしている中、それぞれの音楽性やオーディエンス各々によって「ノリ方」が多彩であることが興味深く感じた。

 お目当てのグループやお気に入りの楽曲にウェルカムな振る舞いで盛り上がる——。これは何と言うか、万人万国共通のようだ。「待ってました!」と、バンド名やメンバー名を大声でコールすることは、歌舞伎で言うところの屋号が飛び交うことに等しいアクションだろうか。歌舞伎や舞台の歴史を抱えつつ、昨今アイドル文化が発達した日本の“メンバーコール”は、もしかしたら世界からみても相当活気があるアクションなのかもしれない。

 ライブ中のノリ方はどうだろう。ある種整然とした盛り上がりと見せる大多数のオーディエンスの中、ひときわ自由な盛り上がりを見せるのは、ステージ直前で陽気に踊っている黒人グループだ。曲が始まり、歌が入り、山場がある。ということはあまりおかまいなしに、終始踊って歌って笑顔でうねっている。

 タレントの古坂大魔王が先日バラエティー番組で「日本人と外国人の笑うタイミングの違い」という点を講釈していた。そこでは、日本人は「お笑いの内容を感じ取ったうえで笑う」ことに対し、外国人は「笑う前提で見て、ちょっとでも面白い動きや踊りを見せたらその瞬間笑う」という差を説明していた。極端に言うと、外国人は、芸人さんが出てきて軽くジャブの動きを見せた時点で、もう笑うという——。

 オーディエンスの黒人グループは、ドラマーのカウントの時点で既に踊っていた。HIP HOPのビートが走った瞬間に踊っていた。コール&レスポンスのフリの前に、もう勝手にオリジナルのコールをしていた。俗に言う“外国人はノリが良い”というのは、リズム感の良さや気質もあるだろうが、こういった「楽しみたいという前提」が根底にあり、そこに対する遠慮が全くないのではないかと感じた。それはきっと音楽にもお笑いにも通じるのだろう。

 試しにその黒人のお兄さん方と一緒のノリで近くで踊ってみたところ、細かいところはどうでもよく、演者のちょっとした粗などは全く気にならず、「純粋に楽しめれば良い」というピュアな感覚になり、なにしろ楽しめる。これは、日本と外国の音楽の質や、音像面にまで共通するものと感じることができた。

 日本には日本流の楽しみ方、慈しみ方があり、外国にも外国なりのエンジョイ方法がある。どちらが良い、という訳ではないが、その両方を体現することで、ワールドワイドな文化交流が見えてきて、あらゆるシーンで楽しめることができるのではないかと、外国人の陽気なノリの踊りに教えられた気がした一夜だった。【平吉賢治】

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