先日、ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文さんが私立音楽大賞『Apple Vinegar Award(アップル・ビネガー・アワード)』を設立する事を発表しました。ホームページによると、この賞は「新進気鋭のミュージシャンが制作したアルバムに送られる作品賞」で、対象となるのは2017年に発売されたポップ・ミュージックのミニアルバムとアルバムとの事です。賞金20万円は後藤さんと坂本龍一さんが半分ずつ出資したそう。

 ノミネートされた作品は『2兆円』/東郷清丸、『8』/Awich、『ar』/吉田ヨウヘイgroup、『HIKARI』/JJJ、『Mars Ice House』/ゆるふわギャング、『MODERN TIMES』/PUNPEE、『Nostalgia』/Okada Takuro、『PINK』/CHAI、『Waves』/Yogee New Waves、『なつのべ live recording H29.07.02』/折坂悠太、の10作。ポップス、ヒップホップ、ロックなど幅広いジャンルから選出されています。結果発表は3月という事でとても楽しみですね。

 さて今日、紹介したいのはこの中でアルバム『8』がノミネートされたAwichさんです。

 彼女は1986年沖縄生まれ。中学1年生でヒップホップに魅せられて活動を開始。そしてビジネスを学ぶためにアトランタへ。そこでアメリカ人男性と結婚、出産。起業学とマーケティングの学士号を取得。家族で日本に戻り暮らすことを決めていた矢先、夫が銃殺。その後、娘と共に沖縄に帰郷。制作会社「CIPHER CITY」を設立。音楽活動としても、昨年10年ぶりのフルアルバム『8』をリリース。

 と、ちょっと壮絶すぎるキャリアの持ち主です。インタビューやドキュメンタリーを見るととても心優しい女性であり母親なのですが、作品内ではかなりアグレッシヴですね。この楽曲の様な調子で「お前誰?」と言われたら、私はその場から逃げ出してしまうかもしれません。

 『8』の収録曲もヒップホップとしての世界規格なビートと、日本語ながらグルーヴィなフロウ(ラップのリズム)が素晴らしいです。そして、実の娘がラップをしている楽曲もあるなど、彼女の生い立ちを活かしたユニークさも随所に感じられます。「痛み」を知っているからこそ、できる音楽とも言えるのかもしれません。そんな彼女を個人的には『Apple Vinegar Award』のウィナーに推したいと思います。【小池直也】

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