<記者コラム:オトゴト>
 来年9月で引退を発表した安室奈美恵さん。決断までの経緯や心境などが先日、NHK特別番組「安室奈美恵『告白』」で明らかになったが、SNSなどに書き込まれたネットユーザーの声には、ある人物に重ねているものがいくつか見られた。それは氷室京介さんだ。

 耳の不調などにより、ライブ活動を無期限休止中の氷室京介さん。最初の報道は周南市での公演。一部報では「ライブ活動の引退」と伝えらえたが、後に「ライブ活動の無期限休止」と正式発表があった。

 その年の、横浜スタジアムでの公演が“ラスト”の予定だったが、前日にろっ骨を骨折。更に、雷雨なども重なり、これではファンに申し訳ないと、翌々年にラストとなる、4大ドームツアーが開かれた。氷室さんが一貫しているのは、ファン想い、そして己への厳しさであった。

 来年9月での引退を発表した安室さんも重なるところがある。

 無期限活動休止という選択肢もあったが、選んだのは引退。そして、先のテレビ番組で明かされたのは、20周年の時に引退の文字がよぎったが「こんなんじゃいけない、ファンの方が悲しんじゃう」とし、引退時期を25周年に設定。残りの5年間をファンにコンサートで楽しんでもらう期間に位置付けた。

 氷室さんは耳の不調などによって満足のいくパフォーマンスが出来なくなることが理由、そして、安室さんは夢だった「大きな会場でのコンサート」を5大ドームドームツアーでやり遂げたことで「燃え尽きてしまっていた」ということが背景にある。

 それぞれ背景や理由は異なるが、きっぱりと決断して、そして、ファンのために残りの時間を捧げた、あるいは捧げる点では重なる。

 「ふたりが重なってみる」とコメントを寄せたネットユーザーも、そうした点を背景に挙げている。プロとしての意識の高さを感じさせる。

 ちなみに氷室さんは、最後のライブでこういう事を言っていた。

 「15年前から体力とギリギリのところで走ってきて、そろそろ限界かなと。音楽界の先輩には本当に申し訳ない。尊敬する坂本龍一さんもガンを克服して映画サントラもおやりになった。憧れの矢沢永吉さんも。素晴らしい先輩達に申し訳ない。プロとして良い日と悪い日があるのは情けない。しかし、ライブ活動を休止することについて勘違いしないでほしいのは自尊心ではなく、ミュージシャンとしての矜恃」

 矜恃(きょうじ)とは「自信と誇り」を意味する。ミュージシャンとしての心構え、品格という意味も込められているのであろう。【木村陽仁】

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