<記者コラム:オトゴト>
 音楽には様々な力があり、また“効能”と呼べるものも多々持っている。音楽は、高齢化が進む現代においてどれほどの役割を秘めているのであろうか。

 例えば、心地良いメロディを聴くことによってリラックス効果を生んだり、一定のリズムを刻むことによって脳を活性化し、ひいては精神賦活作用があったりと、音楽には脳や心に直接作用するという点がある。

 また、ライブや音楽イベント会場、レコードショップ店での出会い、音楽を介してのコミュニティは人と人とを繋ぐ社会的役割も担っている。

 厚生労働省が発表した平成28年度の国民生活基礎調査の結果によると、介護が必要となった主な原因で、認知症が初めて1位になったことが明らかになっている。日本は世界に比べて郡を抜き高齢化が進んでいるというのが現状だ。

 そんな中、介護施設やリハビリテーション機関では積極的に“音楽療法”を取り入れている。認知症にまつわる医療機関では様々な音楽療法がおこなわれており、職員やボランティアの楽器演奏から、タンバリンなどのシンプルな打楽器を患者が演奏するなど、その方法は多岐にわたる。

 楽器を演奏すると思考能力が高まったり、脳の老化を遅らせたり、認知症を予防できる傾向があるということが最近の脳科学の研究で明らかになっているという。具体的には、楽器を演奏すると、聴覚・視覚・筋肉運動に関する脳の領域が活性化し、純粋に音楽を聴いているときに比べて、脳の信号伝達物質も活発になる働きがあるという。

 脳外科医や精神科医の話によると、認知症は、最近の記憶は失われても古い記憶は比較的保たれる傾向があるという。(ついさっきのことは忘れてしまっても、昔のことはよく覚えている、など)昔よく聴いた曲や若い頃に流行った音楽を聴くと、当時の記憶が音楽と共に鮮明に蘇ることで感情が活性化して「なつかしい」という情念が湧き、アクティブな気分をもたらす効果があるとも言われている。

 クラシック音楽でリラックスをする、ロックで能動的な感情を呼び覚ます、演歌や歌謡曲で心に染みる心情を蘇らせる。様々な音楽ジャンルにはそれぞれの“効能”ともいえる力を秘めており、それらは認知症という症状にとって良き効果を生むと考えられている。認知症のリハビリテーションの一つである音楽療法は、先進国でも群を抜いて高齢化が進む日本において、重要なファクターのひとつであることがうかがえる。【平吉賢治】

(*編集部メモ)
アルツハイマー患者に対応する専門家、脳外科医・精神科医・ソーシャルワーカー・社会福祉士さんたちから実際にお話を頂いたものが、専門的な部分の参照となっております。

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