Linked Horizon、「進撃の巨人」の想いを最大限に発揮した千秋楽
全国ツアー『Linked Horizon Live Tour 2017 「進撃の軌跡」』の最終公演のもよう(撮影=佐藤祐介)
音楽グループ・Linked Horizonが10日、神奈川・カルッツかわさき(川崎市スポーツ・文化総合センター)で全国ツアー『Linked Horizon Live Tour 2017 「進撃の軌跡」』の最終公演をおこなった。同ツアーは、アニメ『進撃の巨人』の世界を表したアルバム『進撃の軌跡』を引っさげ、7月8日の千葉・市原市市民会館大ホールを皮切りに、国内30公演を実施。音、映像、照明、ダンス全てが『進撃の巨人』の世界観を最大限に表現し、同作の登場人物が現実に登場しているかのように、音楽で彼らの成長を感じさせるステージを披露した。【取材=橋本美波】
『進撃の巨人』の世界観を最大限に
開演時刻が過ぎ、照明が暗転。紗幕(しゃまく)越しには、今宵の舞台に華を添える歌姫・月香、福永実咲、MANAMI、松本英子、柳麻美の5人と、バンドメンバーの西山毅(Gt)、YUKI(Gt)、長谷川淳(Ba)、五十嵐宏治(Key)、淳士(Dr)、弦一徹ストリングス、ダンサー4人、そしてクワイア(合唱)にVoces Tokyoの面々がステージに現れ、壮大な演奏や歌を響かせる。
そして、紗幕には『進撃の巨人』の映像が映し出され、主宰のRevo(Vo)がステージ中央に登場し、観客から盛大な歓声が巻き起こる。ツアーファイナルは「二ヶ月後の君へ」で幕を開けた。ダンサー4人も、『進撃の巨人』に出てくる武器「超硬質ブレード」を模したライトセーバー(ビジュアルポイ)を持ち、華麗に舞いながら空間を彩る。
観客は開演前に配布されたシンクロライトリストバンドを腕につけ、序盤から拳を突き上げていた。その光景は何とも煌びやかで、映像、音、光が見事に合わさり、会場全体で『進撃の巨人』の世界観を最大限に表現しているように感じさせる。
Revoは「とても楽しいね。『進撃の軌跡』ツアーも、もう千秋楽です。千秋楽ということで一つ皆さんに宣言しておこうかな」と話し「音楽というもので皆さんを楽しませたい。今生きているこの瞬間が楽しい! 最高だ! って思ってもらうことがエンタメって仕事の一番の意味だと思う。とにかく楽しいのがライブだぜっていう事を皆さんに伝えたい」と勢いよく語った。加えて「自分が楽しむ事も追求していきたい」と言う。
2曲目では、2ndシングル「自由への進撃」に収録されているナンバー「もしこの壁の中が一軒の家だとしたら」を、歌姫・柳麻美が『進撃の巨人』の主人公エレン・イェーガーのキャラになりきり、強い眼差しで歌を紡ぐ。そしてLinked Horizonの名を世に知らしめたといっても過言ではない代表曲「紅蓮の弓矢」へと向かう。お馴染みのフレーズ<イェーガー>を会場全体が歌い、見事なシンガロングが生まれていた。
この日のステージで一番観客の涙を誘ったのは、4曲目の「14文字の伝言」。同曲は、Revoが亡きエレンの母親カルラ・イェーガーの視点で描いたもの。スクリーンには、幼きエレンの姿とカルラが亡くなるまでの瞬間が映し出される。その映像だけでも涙を流さずにはいられないが、加えて歌姫・松本英子がカルラの母親としての愛情を鮮明に表現しながら歌い捧げる場面が、一際観客を感動の世界へと導いていた。母が残した「うまれてきてくれてありがとう」。その14文字の伝言に、心を震わさずにはいられなかっただろう。
降り続く雨の音と、雨が降り続くような光の演出。静まり返った会場の中、その静けさを払拭させる勇ましい曲「紅蓮の座標」。同曲へと続く流れは、「14文字の伝言」で母の死を乗り越え、新しく突き進むエレンの心情が見られるように感じさせる。
時間は止めることは出来ない
中盤では、『進撃の巨人』の特別篇でもある「イルゼの手帳」に出てくるキャラクターのイルゼ・ラングナーの視点で描かれた楽曲「最期の戦果」へ。同曲を歌姫・月香が歌い、巨人に屈することはなく、最期まで戦果をあげた彼女がその場に立っているように思わせた。
「神の御業」では、『進撃の巨人』の作中に出てくる「ウォール教」という宗教のお祈りスタイルを、観客にともにおこなって欲しいというRevoの想いから、観客同士で腕を組み、手を合わせながら楽曲を堪能するという演出。神秘的で美しい歌姫とクワイアの声が場内に響き渡り、人々の様々な想いが『進撃の巨人』とともにあるように見えた。
「勝利や未来に栄光があると思って歌います」と語り、続いた「自由の翼」、そして『進撃の巨人』の作中に出てくる亡き女性キャラクター、ペトラ・ラルが、キャラクター、リヴァイ兵長への想いを綴った「双翼のヒカリ」を歌姫・MANAMIが歌う。キャラクターの意志が受け継がれた彼女の声。物語は止まることなくLinked Horizonが作り出す壮大な世界が広がっていった。
時間は止めることは出来ない。それを示すように『進撃の軌跡』も終盤へと差し掛かり『劇場版 進撃の巨人 後編~自由の翼~』の主題歌でもある「自由の代償」を迫力のある圧巻の演奏で、観客の心を鷲掴みにする。そして「彼女は冷たい棺の中で」へと繋ぎ、歌姫・福永実咲が捧げる感情と感傷の想いが解き放たれた。
「次の曲で皆さんの心臓を捧げて欲しいと思う」。そう話したRevoから繰り出されたのは「心臓を捧げよ!」。アニメ『進撃の巨人』のセカンドシーズンのオープニングナンバーでもあり、今までの集大成を詰め込んだ言の葉。観客とともに、胸に手をあて<捧げよ! 捧げよ! 心臓を捧げよ!>という大合唱が生まれ、本編は一体感に包まれながら終了した。
10年やってようやく道のりが開けた
紗幕にRevoからメッセージが表示され、「進撃の曲以外も聴きたいぇーがー?」という文字が。そしてRevoはステージに再び現れ、今ツアーでおこなっているという「DJ Revo」のコーナーへ。ファンのリクエストで「二ヶ月後の君へ」をギターリミックスでプレイし、また新しいRevoの魅力が発揮されていた。
アンコールでは、Linked HorizonではなくRevo自らが作り出すオリジナルストーリーを組曲形式で表現するSound Horizonのナンバーで「<ハジマリ>のクロニクル」、「神話-Μυθοs-」を立て続けに披露し、観客の心を興奮させた。
そして今までLinked Horizonを支えた各サポートメンバーの挨拶を挟み、ラスト曲「青春は花火のように」で盛大なフィナーレを迎えた。最後にRevoは今までの活動を歩んできた道のりについて「10年やってきてようやく道のりが開けた」と語った。
続けてRevoが公式パンフレットに書いた“二ヶ月後の彼”に何を言えばいいのかわからないという主人公エレンに対しての想いへ。ここまでのツアーを終え、さらに「進撃の巨人」が連載されている「別冊少年マガジン」の最新号を読んだのち、「結局一言で言える言葉はありませんでした。エレンにかける言葉はやっぱりない。でも曲を作った人間として、歌はちゃんと寄り添い続けているんじゃないかって。『紅蓮の弓矢』はエレンのイメージで作った曲。それはエレンの物語によって、本当にふさわしいかどうかグラついてきたりもする。でも最新話を読んだときに僕は思った。『紅蓮の弓矢』はエレンのテーマ曲だって」と代表曲『紅蓮の弓矢』がエレンへのテーマ曲になった事を自分自身で確信したと話した。
最後には、カラオケと共に観客だけで「心臓を捧げよ!」を合唱し、千秋楽公演は幕を閉じた。
『進撃の巨人』を軸に描いた音楽の世界だが、その中でも登場人物の想いや、主人公・エレンの成長を存分に感じさせてくれるのがLinked Horizonがもたらしてくれたステージだと思わせた。『進撃の軌跡』は千秋楽を迎えたが、彼らの進撃は今後も続いていくだろう。
来年1月13日、14日には横浜アリーナで今回のツアーの集大成が描かれるLive Tour「進撃の軌跡」総員集結 凱旋公演が開催される。
セットリスト
1.二ヶ月後の君へ
2.もしこの壁の中が一軒の家だとしたら
3.紅蓮の弓矢
4.14文字の伝言
5.紅蓮の座標
6.最期の戦果
7.神の御業
8.自由の翼
9.双翼のヒカリ
10.自由の代償
11.彼女は冷たい棺の中で
12.心臓を捧げよ!
アンコール
13.<ハジマリ>のクロニクル
14.神話-Μυθοs-
15.青春は花火のように
※「神話 -Μυθοs-」の「s」はギリシア文字の小文字のシグマが正式表記。