レキシが10月10日と11日、東京・日本武道館で単独ライブ『不思議の国の武道館と大きな稲穂の妖精たち 〜稲穂の日〜』が開催された。10日は、「KATOKU」を始め「SHIKIBU」「きらきら武士」など、お客さんが一緒に口ずさめる人気曲がずらりと並び、アンコールの「狩りから稲作へ」まで全14曲を披露。ゲストにやついいちろうや巨大な稲穂の妖精も登場し、最後は会場全体で稲穂を揺らしながら一体感たっぷりのライブを終えた。【取材=榑林史章】

既視感を共有する楽しさ

レキシ

 レキシ演じる若君が開けてはいけないと言われていた箱を開けると、煙と共に不思議の国へ吸い込まれてしまい、気がつくとそこは武道館だったという、何ともファンタジー感溢れるストーリーで幕を開けたライブ。

 1曲目の「KATOKU」では、「イエー! 武道館イエー!」と客席に手を振りながら歌ったレキシ。最後のキメポーズの瞬間に若君のカツラがポーンと飛び、一斉に爆笑が沸き起こった。「迷い込んだね。迷い込んだついでに今度は大奥へ迷い込むよ!」と、続けて「大奥〜ラビリンス〜」へ突入。ミラーボールが回り、キラキラと輝く会場に高音のファルセットボーカルが響く。観客は<大奥 大奥>のフレーズを歌って盛り上がった。

 レキシのライブは、これって何だったかな? 何かちょっと聴いたことがあるかもしれないという、“既視感”に満ちあふれている。たとえば1曲目の「KATOKU」は、80年代のAORや産業ロックと呼ばれたバンドのテイストが見え隠れし、「大奥〜ラビリンス〜」はアース・ウィンド・アンド・ファイアーのような雰囲気だ。観客が知ってるか知らないかギリギリの絶妙なラインで、観客のツボを押してくれる。この会場には、これ何だっけ? という気持ちを共にする共有感、隣の席の人に元ネタを教えてもらって「ああ!」とスッキリする快感など、いろいろな感情が渦巻いて、何とも言えない一体感が生まれていた。

 「こんばんは。ケビン・コスナーです。最近はフェスでこれがまったくウケないので、日和って最近はジャスティン・ビーバーですって言ってます(笑)」と、自己紹介したレキシ。「早く元の世界に帰りたいんだけど」と話しているうちに、何かがどんどんズレていって、気がつけば<帰りたい〜あったかハイムが…>と、CMソングを歌い出す。レキシのライブにはこうした「いつの間にか違う曲になる」というネタが多く、レキシのノリツッコミのタイミングも絶妙だ。バンドメンバーとの息もぴったりで、アドリブなのかリハ済みなのか分からない長々としたやりとりが、次々と爆笑を生んだ。

 イルカの風船をみんなでポンポン飛ばすパフォーマンスも楽しい「KMTR645」は、ロック調のアップテンポのナンバー。しかし気づくと別の曲にすり替わっていて、お客さんはそんなこともおかまいなしで歌い続ける。すると、突然「おい! イルカに夢中で、曲が変わってたの気づいてないだろー!」とレキシが突っ込む流れは、もはや定番といった感じだ。

 「妹子なぅ」「真田記念日」「RUN飛脚RUN」をメドレーにした名付けて「飛脚記念日なぅ」では、懐かしいアイドルやアニメソングなど次から次へと変化していって、もはや元が何の曲だったか分からなくなるほどの七変化を見せ、これには会場の大ウケだった。

俺がいちばん楽しかったよ

レキシとU-zhaan

 スペシャルゲストには、リクエスト第1位「Takeda’」でタブラ演奏をしているU-zhaanが登場した。この「Takeda’」こそ、レキシのどんどん違うものに変わっていく面白さの真骨頂といった曲で、どんどん意味が変わっていく言葉のつぶやきにタブラの音色が加わり、不思議な世界観を生む迷曲。生でやるのは難しいらしく、いろいろ話をそらしてなかなか歌い始めないレキシに、「早くやろうよ。どうせ成功しないんだから。リハでも1度も成功しなかったし (笑)」と業を煮やすU-zhaan。この日は何とか最後までやり切ることが出来たようで、これで「Takeda’」も成仏出来たことだろう。

 「レキシもおかげさまで10周年。これもひとえに一人ひとりのおかげ。どんなにグダグダなライブでも、これをやれば丸く収まる。空を見上げれば、一面キラキラとした武士でございます」と、本編の最後は「きらきら武士」を全員で合唱。<武士><武士>と合いの手を入れて盛り上がり、キラキラのテープも発射された。レキシはキーボードのソロ演奏も披露し、トレードマークのサングラスがズレても飛んでもおかまいなしで、歌って弾いて手を振って会場を沸かせた。

 アンコールは、お待ちかねの「狩りから稲作へ」。「やっと無駄に1本買った稲穂を使う時が来ましたね」とレキシ。観客は稲穂を揺らしながらコール&レスポンスを楽しみ、武道館はまるで金色に輝く田園のようになった。ここでキャッツに扮したやついいちろうが、巨大な大稲穂様を連れて登場したのだが、レキシはニヤニヤして見るだけで、やついを放置プレイ。その雰囲気に「そりゃこうなるよ。出てきてこのあとご自由にって、こういう空気になるに決まってるだろ!」とぶちぎれ。さんざんやついを弄んで満足したレキシは、最後に「今日も茶番に付き合ってくれてありがとうございました。俺がいちばん楽しかったよ」と話し、最後にやついの一本締めでライブを締めくくった。

セットリスト

『不思議の国の武道館と大きな稲穂の妖精たち ~稲穂の日~』

01. KATOKU
02. 大奥~ラビリンス~
03. KMTR645
04. 飛脚記念日なぅ (メドレー)
05. SHIKIBU
06. Takeda’
07. salt&stone
08. 最後の将軍
09. キャッチミー岡っ引きさん
10. アケチノキモチ
11. 憲法セブンティーン
12. 年貢 for you
13. きらきら武士

アンコール

14. 狩りから稲作へ

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