貧乏がネタになるなんて思わなかった、山地まり 何事も前向きに
INTERVIEW

貧乏がネタになるなんて思わなかった、山地まり 何事も前向きに


記者:桂泉晴名

撮影:

掲載:17年10月18日

読了時間:約12分

 女優、タレントの山地まりが18日に、シングル「明日はきっといい天気」でCDデビュー。表題曲は猫好きな彼女が発する「猫声」が入っていて、明るく弾けるようなナンバー。ミュージックビデオで踊る“猫ダンス”もキュートだ。さらに、絵や文章を書くのが得意という山地は、カップリング2曲の作詞も担当。明るく愛らしいルックスの持ち主だが、実はすごく貧乏でダサかったという過去が話題にもなっている彼女。「貧乏がネタになるなんて思ってもみなかった。捉え方によってはプラスになる」と辛い時期が今の糧となっていると明かす。その貧乏な時期の想いを歌詞にも綴り、どの曲も「前向き」ということをテーマにした。今回、MusicVoiceではCDデビューに至る経緯と、彼女の音楽に対する想い、貧乏時代の話などを聞いた。

先輩がプレゼントしてくれた元気ソング

山地まり

――「明日はきっといい天気」はどういう経緯でデビュー曲となったのでしょうか?

 もともと歌うのは大好きで、よく1人でカラオケに行ったり、家でも歌ったりしていました。そして事務所の先輩の村上智里さんのライブでたびたびオープニングアクトを務めさせていただいていたのですが、私が元気のないときに「この歌、あげる」と村上さんが「明日はきっといい天気」をくださったんです。それではじめての持ち歌ができて。さらに、その曲を担当の方がすごく気に入ってくださって、ありがたいことに今回のCDデビューにつながりました。

――元気がなかったというのは、何かあった?

 一時期すごく貧乏で。この先どうやって生きて行こうというときに、先輩が「私にはこれしかできないから、歌をあげるよ」と言ってくださって。だから、すごく思い入れの強い曲なんです。この曲で私が元気になったみたいに、聴いている人も元気になったらいいな、と思っていて。すごく前向きな曲になっています。

――この曲のポイントのひとつは、まず間奏で流れる山地さんの「猫の鳴き声」ですよね。

 突然マネージャーさんからメールで「猫の鳴き声を送って」と言われて。自分の飼っている猫の鳴き声を1日かけて鳴かせて送ったんです(笑)。“ぽんず”というネコを飼っていて。そしたら低音で「あ゛―」みたいな鳴き声で(笑)全然使えなくて、それで自分の声で「にゃあ、にゃあ」といろいろなパターンをとり溜めて送りました。

――突然リクエストがきて、ふたを開けてみたらこういうことになっていたと。

 そうなんですよ。すごくびっくりして。オシャレでポップな仕上がりになっています。

――そもそも、なぜ猫の声でしょうか?

 私が猫が大好きで、内藤ルネさんのイラストにもお気に入りのネコがいたので。しかもそこがメインのダンスにもなって、MVでは猫ダンスをやっています。

――ちなみに、山地さんのところのぽんずちゃんは、何歳くらいなんですか?

 今、13歳くらいです。小学校5年生のときに母が突然拾ってきました。最初はすごく怯えていたのですが、その日に一緒に寝て、そこからずっと私と一緒に生きてきて。Twitterやこの前始めたInstagramにもあげています。ぽんずの隠れファンも実は多いんです(笑)。

――どんなところが、かわいいですか?

 人懐っこいんですよ。誰が来てもひざの上に乗る。「めずらしいね」と言われるんですけれど、人が好きで、寝るときも絶対布団の中に入ってきたりします。

――「明日はきっといい天気」は、猫が好きという山地さんの気持ちも伝わってくる曲ですよね。

 うれしいです。今回、マルチクリエイターの内藤ルネさんのキャラクターとコラボさせていただいているのですが、白と黒の猫がいて本当にかわいくて。その子たちのぬいぐるみもあるのですが、猫好きにはたまらない。触り心地もたまらないんですよ。

――内藤さんのイラストとの出会いは?

 ネットで最初見かけて、「すっごいかわいい」と思ったんです。私はもともと絵を描くのが好きなので、その世界観を真似して描いてみたりしていました。内藤ルネさんは“Roots of Kawaii”といわれていて、「かわいい」を世に広げた方なんです。10年前に74歳で亡くなられているのですが、それでもずっと常に最先端をいっている、というのが自分にとって刺激的でした。

 だから、見ているだけでワクワクしちゃう。こういうファッションは真似したいなとか、こういう髪型いいなとか、絶対今の女の子たちとかにも受けるものがあって。それがすごいな、と思ったんですよ。

――レトロ&モダンだけど、それが新しく感じると。

 とても品があって。今年もベレー帽だったり、レトロ風が流行っていますよね。決して古くは感じなくて、かわいいの根源に、いつも常にいる方なのかなと思って。すごく尊敬しています。

――山地さんは絵を描くのが好きだそうですね。

 小学生くらいのときから好きなんですけれど、当時は内向的な子で。本棚の隙間で絵を描いたりしていて、本当に絵が友だちでした。あと漫画を読むのも好きで、『りぼん』『ちゃお』『なかよし』『少女コミック』など少女漫画雑誌は全部買っていました。一時期、漫画家を目指していたときもあったんですよ。Gペンとか買って。

――本格的ですね。

 丸ペンやトーンを貼っていました。今でも結構、時間があるときは、いろいろ漫画を描き溜めたりしています。いつか芸のこやしになったらいいなと思っていて。

――絵を描くのが好き、というのも内藤ルネさんにつながっているんですね。

 内藤ルネさんは、本当にいろいろ私の好きがつまっていて。今回コラボすることができて、夢みたいです。

台風を吹き飛ばすくらいの晴れ女

山地まり

――今作の歌詞の中で一番お気に入りのところはありますか?

 <三年前は 別の空の下>のところですね。ここはドラマティックな感じがすごいと思う。<三年前>というのも、物語性を考えさせられるし。<別の空の下>というのも、今出会っている人たちと、もし出会っていなかったら違う空の下にいたのかとか、ここの歌詞だけで妄想がふくらんで、ぐっときちゃうんですよ。

――なぜ三年前なのかな、というのも。

 気になりますよね。私は勝手にここの箇所からいろいろ想像して。「あの人との出会いは何年前だな」とか。「今のファンの方や親友、マネージャーさんなど、出会っていなかったらどうなっていたのかな」とか考えたりするんです。

――サビのところは<そうさ明日は きっといい 天気元気勇気>、<シャキシャキ>とポップなのに、ここはドラマティックという。

 ちょっと切なさが入るんですよね。1番は自分の話、2番は周りも巻き込んだシーンになっていて、全体的にストーリー性があってキラキラした感じなんです。勝手なイメージでいうと、『銀河鉄道の夜』みたいな。ファンタジックだけれど、現実的、みたいな絶妙なところがあると思って。自分もCDデビューという初めてのことに挑戦するのですが、歌詞の中の<まだ開けてない 夢の扉>とか、全部リンクするというか。とても「そうだよな。頑張ろう」と思えて、今の自分の等身大になっているな、と感じます。しかも私、すごい晴れ女なんですよ。

 台風もふっ飛ばしちゃって。撮影が終わった瞬間に、雨が降ってくるとか。外の撮影で困ったことがないんです。

――まさに「明日はきっといい天気」というタイトル通りですね。

 最近気づいたのですが、自分でも自信を持って「明日雨マークでも、行ける」と思うようになりました(笑)。だから、この曲と出会ったのも何かの縁だな、というのがあって、すごくうれしいですね。

――MVで披露している猫ダンスは、普通の人も真似できますか?

 できます! 私、すごく内向的だったので運動神経もないし、高校生のときにYouTubeを見て自分で踊っていた以外にダンスの経験もほとんどなくて。しかも「まりのダンスは、どこか変」と言われていたのですが、今回振付を付けていただいたら、「覚えるの早いね」と褒めていただいて。たぶん覚えやすいんです。皆さんに言いたいのですが、「こんな私ができたから、みんなもできる!」。だから絶対に覚えて、バンバンInstagramとかTwitterで、「#猫ダンス」で踊ってくれたらうれしいなと思います。

――今回ダンスに挑戦してみて、新たな発見はありましたか。

 結構不安だったんですよ。振付が入らないのではないかな、というのがあって。YouTubeで10歳の子が踊っているダンスも覚えられなかったのに、できるのかなと思ったら、2時間とかで全部覚えられて。あのときは、まだ見ぬ自分を見つけた気がして、自信につながりました。ダンスは楽しいなって。あと覚えやすいけれど結構動きが多いので、家で練習していると、すごく汗をかくんです。だからちょっとやせました(笑)。

貧乏バラード曲

山地まり

――他2曲では山地さんが作詞していますね。

 結構前から思ったことを携帯のメモに書いたりするのが好きだったので、作詞は楽しかったです。けれど2曲目「Our Place」に関しては、事務所の方からテーマをいただいていました。ある日突然、「貧乏バラードの歌詞を考えてきて」と言われて。それで考えた歌詞なんです。

――なぜそのテーマだったのですか?

 貧乏でも明るくて元気というのが私の取り柄だったので(笑)。でも思いの外、しっとりといい感じの曲になりました。貧乏マーチは保留になっています(笑)。

――聴いただけだと、貧乏バラードなんて思えないです。

 何も言わなければ、いい感じのバラードですよね(笑)。実は…という裏テーマがあるから、楽しめるというか。

――その話を知ってから聴くと、全然違った受け取り方になります。

 これを聴いて、「そうか山地もこういう時期があったんだな。自分はまだ頑張れる」と元気を与えられれば、とは思います。

――この歌詞は、どんな体験がもとになりましたか。

 電気が止まっちゃって、ロウソク1本で過ごした時期があって。そのときはやっぱり<心細くて震えた心臓>(冒頭歌詞)ですよね。ロウソクもなくなったら、どうしよう、みたいな。心細かったですね。

――大変なときを、どうやって乗り越えましたか。

 この歌詞を書いたときは本当にピークで。「どうしよう。明日から家が取られちゃうかも」みたいなときに、泣きながらバラエティの打ち合わせに行ったんです。それで貧乏の話をしたら、驚いて笑っていただき「それ面白いじゃん」とスタッフさんに言ってもらえて。それがネタになって、バラエティに出させていただけたんですよ。自分ではまさかこの貧乏ということがネタになるなんて思ってもみなかった。

 自分ではマイナスと思っていることも、捉え方によっては、こうやってバラエティに出て人を笑わせたり、プラスの方に働くこともできるんだなと。だから嫌なことも、もしかしたらプラスに変えられるかも、と思って。そこからいろいろバラエティなどにも出させていただけて。活動の場が広がっていったので、今では貧乏でよかったと思います(笑)。

――これはまさにご自身の体験を歌詞にしたのですね。

 たぶん貧乏じゃなかったら、この歌詞は出てこなかったかなと。

――<生きるってこと息苦しいよ>というのは、すごい歌詞だなと思いました。

 たぶんこのときは、ピークで貧乏だったのと、いろいろ他にも、悩んでいた時期でしたね。「これから私はどうやって芸能界で生き残っていこう」とか、いろいろナイーブになっていたんだと思います。だからこの時の自分に、「すごいよ。歌手デビューさせてもらっているよ」と言ってあげたいですね。

――この曲を聴いたときに、1曲目と声の感じが違うと思いました。クールというか、低音の迫力がある。

 確かに。「明日はきっといい天気」は、かわいく歌っています。レコーディングするときも、もっとかわいく女の子で、みたいな感じだったので。こっちはもうちょっと、消え入りそうというか…。

――2曲目はしっとりしているのですが、1曲目と同じようにダンスナンバー的にまとめていますよね。

 そうなんです。“ザ”バラードじゃなくて、ちょっと跳ねる感じ。私は性格がせっかちなので、バラードの曲は次の歌詞が来るまで、待っていられないんですよ(笑)。だから普段聴く曲も、ロックが多くて。出だしから歌い出す、みたいな曲が大好きなんです。私の聴く曲リストの中にも、バラードが1曲も入っていないんです。

リーダーシップをとることが課題

「貧乏がネタになるなんて思ってもみなかった。捉え方によってはプラスになる」と語る山地まり

――「YOURSELF」は軽快なナンバーですね。

 サビから間奏に変わる瞬間が大好きで、「あ、いいね」と思いました。けれど、ここ最近よく考えるのが、ライブではどれくらい私がノっていいんだろう? ということです。あまりに自分がノりすぎても、ファンの人がついていけなかったらどうしよう、とお風呂で考えて。

 あのサウンドって、どうノればいいんだろう、と思うんですよ。今回のデビューはリーダーシップをとる、というのが課題です。私が全力でノっていないといけないですよね。だから最近、いろいろな方のライブ映像を観ていて。B’zさんとか。

――B’zさんが好きなんですか?

 つい見ちゃうんですよ。でもそこを意識しすぎると、シャウトしちゃいそうで、違う方にいっちゃうから気を付けようと思って(笑)。

――ちなみに「YOURSELF」のテーマは?

 これもやっぱり前向きというのがテーマでして。けれど、徐々に上がっていく曲なので、最初は結構、ダウン気味な歌詞で、どんどんポジティブな方にいって、結構気持ちよく爽快に終われたらな、と思っています。

――「Our Place」とテーマは近いものはあるけれど、ちょっと表現方法を変えた感じ?

 そうですね。こっちの方が「Our Place」よりだんぜん明るいな、と。強い人間かなって思います。1回、闇から抜け出している状態までいくので。

――じゃあ、今の山地さんですね。

 これ、本当に最近書いた歌詞なんですよ。

――ちなみに歌詞の中に<お気に入りの靴を履いて>とありますが、お気に入りの靴は?

 私、今までスニーカーしか持っていなかったんです。そうしたらラジオが一緒の子に、「なんでいつもジーパンにスニーカーなの? ヒールを履けば、あか抜けるよ」と言われて。だから今年の夏はヒールを買いに行って、ずっと履いていたんです。それからなのか、最近、大人っぽくなったと言われて。たぶんそういった心の変化みたいなものも、歌詞に入っていますね。

――山地さんは普段から女の子っぽい格好なのかと思っていました。

 いえいえ。つい半年前までは“ダサい”で有名だったので。事務所に行って帰らされたりするくらい、本当にダサかった時期があったんです。平成ノブシコブシの吉村さんとラジオ番組をやっていて、そこでも超ダサいと有名でした。そうしたら、吉村さんに「2年前会ったときはすっごいダサかったのに、最近はちょっとあか抜けたなー」みたいなお褒めの言葉をいただいて。

――今回のデビューでさらにガラリと変わって。

 本当にザ・女の子みたいなドレスも、こういう機会がないと着られないので、うれしいです。

――これからは歌手活動にも力を入れて行きますか?

 まさか自分の人生の中で、歌手になれるという機会が訪れるのは、思ってもなかったので、本当にうれしくて。やっぱりチャンスをいただいたからには、応援してくれる方々、聴いてくれる方々にも、なにかインパクトを残したい、というのはすごくあります。

 だから少しでも、印象に残るようにやっていきたいと思っています。そのためにも猫ダンスとか、内藤ルネさんとか、本当にこの曲にたくさんつまっている要素をSNSなど使って、いっぱい発信していって、内藤ルネさんも曲も、山地まりも、知ってもらいたいですね。猫ダンスは女子高生が踊ってもかわいいし、ちびっ子達も覚えやすいし。本当にキャッチーなダンスだし。

――おじさんが踊っても…

 ぜひこれから年末に向けて宴会芸で(笑)。1時間あれば覚えられるので。猫ってすごくかわいいじゃないですか。それは誰がやっても、かわいくなりますよ。本当に最強にかわいい曲だなと思っているので、みんなに知れ渡って頂ければいいなと思います。

【取材=桂泉晴名】

作品情報

「明日はきっといい天気」
山地まり
発売日:10月18日発売
価格:1500円(税込)
通常盤
01.明日はきっといい天気
02.Our Place
03.YOURSELF

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