ギタリストのMIYAVIが10日、都内にて、『WIRED』日本版が主催した カンファレンス「WRD. IDNTTY.(ワイアード・アイデンティティ)」に登壇。『WIRED』日本版編集長の若林恵氏がホストを務め、米国のオーディオブランド『Beats by Dr. Dre』のプレジデントであるルーク・ウッド氏とトークショーに臨んだ。MIYAVIは「ジミ・ヘンドリックスを初めて聴いた時の衝撃を今の時代の人に与えたい」とギタリストとしての夢を語った。

独特の演奏スタイル

トークショーの様子

 『WIRED CONFERENCE 2017』は、現代の多様性社会のなかで「アイデンティティー」をいかに確立するかという点において、10のプログラムでディスカッション。そのパネラーに、様々な分野のパイオニアが招かれた。MIYAVIはこのうちの「Do You!ほかの誰にもできない音楽」と題したプログラムに、ルーク氏とともに参加した。

 『Beats by Dr. Dre』では、昨年11月からグローバル・キャンペーン動画「Got No Strings」の日本版に、MIYAVIをイメージキャラクターとして起用。動画には、カーリー・クロスや、ファレル・ウィリアムスなど世界的に活躍するアーティストなどが登場し、話題を呼んだ。

 MIYAVIについて、ルーク氏は「私もギターを弾きますが、MIYAVIは音楽家としての能力が高い。彼の弾き方はとてもオリジナリティがあって初めて聴いた時は本当に驚いた」と独創性の高い演奏を高く評価。

 MIYAVIも「僕もBeatsに対してクリエイターとして信念とアティテュードを感じたので、是非やらせて欲しいということで」と語り、互いに讃えた。

 その独自のギタープレイについて、MIYAVIは「僕の場合は世界に沢山、素晴らしいギタリストがいる中で、西洋の楽器をいちアジア人がどこにアイデンティティーを見出せるか、海外を回っていると特にそういうことを感じるんです。僕を聴かなくてもいいわけじゃないですか。そこで僕が弾く意義を日本の三味線、一音にかける情熱を僕はギターにぶつけたいと思いました」と三味線がルーツの一つになったと明かした。

音楽の役割

ルーク・ウッド氏

 音楽の役割について、MIYAVIは「よりポジティブなメッセージを多くの人々に届けられるか、ということを考えています。一つひとつのクリエイションがいかに未来にとって有益になるかが大事だと思います」と持論を述べた。

 ルーク氏は「音楽は感覚的なもの。特に10代から20代にかけては大きな影響をもたらすと思います。社会の一部であり、冠婚葬祭、あらゆる儀式に音楽は用いられる。60年代~90年代はライブやレコードで音楽を聴いていたが、現在はサブスクリプションサービスやYouTubeなど音楽を聴く形態は変化してもその音楽を聴く瞬間に感じる感情は不変だと思います」と音楽が人生において大きな役割を果たすと語たった。

 MIYAVIも「音楽が出来る役割、ここで話していることもその一つだと思う」とルーク氏の言葉にうなずいた。

 ギターを始める前は、サッカーに明け暮れていたというMIYAVI。「ギターを始めて、これはどっかに僕を連れて行ってくれると思いました」とその時の衝動を振り返る。

MIYAVI

 その中で、MIYAVIは「僕はアーティストよりマネージャーの方が向いていると思うんですよ。ロジカルなことの方が得意ですし。天性で言うと、音楽である必然性は無かったと思います。自分が熱中して、これで飯食って行くと没頭できたからたまたま今こうしているんだと思います」と意外な考えを明かした。

 ルーク氏は「成功している人は、複数のことで成功できると思います。心地よくない環境にも恐れなく進むことができる人だから」とMIYAVIの考えに同調した。

 これからの音楽の在り方について、MIYAVIは「情報はどんどん溢れて、作り手と受け手の関係性もかわっていると思うし。今はYouTubeで音楽は聴けるし、音楽だけ聴いている人ってどれだけいるのかと考えます。でも、僕はいち音楽家としてジミヘン(ジミ・ヘンドリックス)を初めて聴いた時の衝撃を今の時代の人に与えたい。音楽家としてはどれだけデジタル化しても、目を瞑って、音を楽しんでもらえるような時代であって欲しいと思います」とその想いを語った。

 ルーク氏は「音楽はいつの時代も強力であり、同じ空間で感情を共有できるコミュニティーの一つであると思っています」と語った。【取材・撮影=松尾模糊】

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