自分の音楽で更に人の心や考え方に高揚を起こしたい
――今作のジャケットはとても独特ですが、これはどういったことを表現されているのでしょうか?
MVの中のひとつのスチール写真なのですが、ご覧のとおり人間がいて、スライディングをして上にも下にも行けると。でも重力があるので、だいたいは下に行ってしまいます。つまり、世の中必ずしも均衡は取れていないということなのです。あとは、人間は往々にして一人きりだということを表現しています。
――なるほど。MVでテーブルが斜めになっているのは何故かと思っていました。それを外側から見ているユップさんがいるという点も。
特に私が窓の外から見ているのは二重の意味があって、彼は見ているが中で起こっていることは実は自分の人生という意味、そして中にいる人からすれば、外を見ることによって外に違うものがあると認識して見ているという意味があります。
彼女は彼を見て、そのときは彼の中に彼ではない人がいるのではないか、と思ってずっと見ている。でも、そうやって目に見える彼ではない彼を見ようとしている彼女も間違いではないし、彼女も人からは「こういう人」と思われているかもしれない。しかし、彼女がそういう人間とも限らないわけです。
人は常に変わるという自由がある、というか実際に変わるものだと思います。だからガラスの中に彼らが見えるのは、将来に起こるかもしれない自分達の世界だったり…。「現実と人間との関係」「現実の起こり方」というのは、その人間に責任があるということです。個人がすることは、そのまわりの個人の環境にまで関係があるものなので、何かを起こしたいと思ったら、その責任はその人間にあるということです。
――MVは灰色の世界ですが、それにはどのような意味があるのでしょうか?
「黒でも白でもない」ということです。
――ユップさんの音楽によって、これから何が出来ると思いますか?
音楽は言葉を超えた普遍的な言語だと思います。一つの音にもたくさんの意味があるし、その一つの音が世界中を旅することもできます。音というのは様々な周波数で出来ているので、人間も身体や魂にとって良い周波数、振動数を送ることができたら癒しの効果をもたらして、心の不安や怒り、パニックなどを取りはずすことができると思います。
そうすることによって、癒される世界の扉のようなものが開けると思います。色んな意味で健康的な生き方をすることは、自分の感情と触れ合うことだと思います。それを音楽を使ってやる人がいるように、私もそれができていることが幸せです。
今、それだけでも十分満足なのですが、自分の音楽で更に人の心や考え方に高揚を起こすことができるのであれば、それは自分が望む以上のことです。あと、音楽だけではなく映画も撮ってみたいと思います。フィルムスコアなどもやってみたいですね。
(取材=村上順一/撮影=冨田味我)