鶴久政治が見てきた音楽業界、80年代と今の音楽に違いはあるのか
INTERVIEW

鶴久政治が見てきた音楽業界、80年代と今の音楽に違いはあるのか


記者:木村武雄

撮影:

掲載:17年06月28日

読了時間:約13分

本物を体感する受容性

243(右)と吉崎綾(左)、鶴久政治

――渋谷系が今また注目されたりなども、時代の流れという点の繰り返しなのでしょうか。

 メディアは話題性という点があるのでそういう言葉を拾ったりすることもあるんでしょうけど、「〜系」というのも、たまたまその音楽が好きな人がエネルギーがあってやれば、それが広がるというだけのことだと僕は思うんですけどね。

――媒体もレコードからCD、今ではデジタルへと変わってきています。音色的にはどうですか?

 バンドでない限りは、本物の楽器ではないものでレコーディングをしている若者がほとんどですよね? ということは、その人達は死ぬまで「本当の楽器の音」を聴いたことがないということだから、一度は本物の楽器の音を聴くべきかなと思いますね。即席めんが悪いというわけではありませんが、即席めんしか食べたことがないとは、店が作るラーメンの味を知らない訳ですから。

 クラシックのコンサートに行って本物のストリングスやピアノの響きを体感した方がいいと思います。それも分かった上だったら、「今回は予算もないし、割り切ってやろう」という制作でも良いものが出来ると思いますね。

――そういう面では、昔はほとんど本物の楽器の音色だから恵まれていましたね。

 そういうことですね。TV番組でも生演奏フルオーケストラとかね。TV番組でも、その瞬間のオリジナルの音色だから特別感がありましたね。今はコンサートに足を運ぶ人が増えたと聞いているので、コンサートで成り立つバンドが増えたらいいんでしょうね。

――この先、昔の良さを知っている人が減っていってしまうのですが、それは音楽シーンとしては危機?

 どうでしょうね。全部デジタルになったらなったでそれはいいんじゃないですかね? ビートルズが出てきた頃はクラシックの人達に「こんなゴミみたいな音楽」とか言われてたりしても、ビートルズの後期ではオーケストラも取り入れたりと、良いものは取り入れていくんですよね。

 サザンでもミスチルも、バンドだけどサビではストリングスが広がったりして、そこを大事にしているじゃないですか? たくさんの人が感動できるツボも抑えながらそうしたこだわりを見せている。ビートルズという先駆者を通して良いものを体感されているから、自分達もそれを体現するということでしょうね。

――今はメディアでもそういった「育てる環境」が出来ていないという話がありました。全体的にそういう風潮なんでしょうか?

 たぶん時間がないんじゃないですかね? 次から次へじゃないですか。一つのものにドップリという時代ではないというか。

――完全に“質より量”になってきていますね。

 例えば洋服でも安価の量販店のものを、10万円の“本物”の服を経験できる環境ではなくなってきているのかもしれないですね。

――本物は“体感”しておきたいですね。

 一回はねえ。経験は大事ですから。

(取材・撮影=木村陽仁)

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