日本武道館でワンマンツアー『UNOFFICIAL DINING TOUR』ファイナル公演をおこなったTHE ORAL CIGARETTES(撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography))

 4人組ロックバンドのTHE ORAL CIGARETTESが6月16日に、東京・日本武道館でワンマンツアー『UNOFFICIAL DINING TOUR』ファイナル公演おこなった。ツアーは2月にリリースされた通算3枚目のアルバム『UNOFFICIAL』を引っさげて全国16公演をおこなうというもの。自身初となる武道館公演は、前半戦をニューアルバムの楽曲を中心に、後半戦では『キラーチューン祭り』と題し「エイミー」や「狂乱 Hey Kids!!」など本編19曲、アンコールでは6月14日にリリースされたばかりの新曲「トナリアウ」、「ONE’S AGAIN」の2曲を披露し、大歓声の中ライブは大団円を迎えた。ライブ終了後、9月30日に公開予定の映画『亜人』の主題歌に抜擢されたことや、2018年2月15日に大阪城ホールでワンマンライブの開催も発表した。山中拓也(Vo、Gt)は「最高の初めての武道館でした」と本人たちも大満足のツアーファイナルとなった。

初めてをみんなとガッツリ共有したい

ライブのもよう(撮影=鈴木公平)

 満員御礼の武道館。満を持して開催されたこの公演に期待感を寄せるオーディエンスは、開幕前から興奮している様子だった。ステージは紗幕(しゃまく)で覆われ、その向こう側に機材の明かりがうっすらと確認できる。開演時刻を少し回ると会場は暗転し、恒例の“4本打ち”が武道館に響き渡った。

 最後の晩餐など“DINING”をイメージさせる壮大な映像が紗幕に投影され、4人のシルエットが映し出された。大歓声の中「5150」でツアーフファイナルの幕は開けた。爆発音とともに紗幕が落ち、ステージの全貌が現れた。ステージ中央には巨大スクリーンと両サイドにもスクリーンを設置。間奏でのオーディエンスのシンガロングが盛大に響き渡り、炎も吹き出す演出で序盤からヒートアップ。

 「THE ORAL CIGARETTESの武道館ライブが良いか悪いか、実際にお前らの目で判断しろ!」と山中の挑発的な言葉から「カンタンナコト」へ。山中はギターを置き、ハンドマイクでステージを左右に移動しながら熱唱。スクリーンには信号機など様々な絵が投影され、楽曲を彩る。バンドの出すサウンドはオーディエンスの体を弾ませ、2階席が揺れるほどの盛り上がりを見せた。5曲目の「CATCH ME」の最後に山中は「ヤバいね、超気持ちいい!」と声を漏らす。

 MCでは「武道館の歴史に名前を刻めるのが嬉しいです。これから武道館を5回、6回とやっていくことになると思うけど、やっぱり初めてというのは特別感があります。その初めてをみんなとガッツリ共有したいと思います!」と本日の公演への想いを話し「A-E-U-I」を届けた。キャッチーなメロディが中毒性を与えるナンバー。

ライブのもよう(撮影=Viola Kam (V'z Twinkle Photography))

 続いて、武道館全体が1万2千人によるタオル回しで埋め尽くされ、圧巻の光景が広がった「STARGET」、そして、「この歌を武道館で歌うのを楽しみにしていたんだよ」と「嫌い」とメジャー1stアルバム『The BKW Show!!』からの選曲で畳み掛けた。

 山中がステージを去ると、鈴木重伸(Gt)、あきらかにあきら(Ba、Cho)、中西雅哉(Dr)によるテクニカルなインストナンバーに突入。タッピングを織り交ぜた鈴木のギター、エンベロープフィルター(ベース用エフェクターの1種)を使用したあきらのベースプレイ、タイトでアグレッシブな中西のドラムサウンドで魅了した。

 再び山中がステージに登場。「やっぱりシゲ(鈴木)は武道館でも大きいね」と鈴木の身長の話で盛り上がった。「実は2センチ伸びた」と鈴木が報告。「この日のために(身長)伸ばしてきた」とユーモアを交えた会話で和やかな雰囲気を作り出した。

 ライブはメロウなセクションに突入。鈴木のレスポールから奏でられる、叙情的なクリーントーンのアルペジオから「不透明な雪化粧」。熱気に満ちた武道館をクールダウンさせるかのように、情感豊かに歌い上げる山中。スクリーンには雪の結晶が舞い楽曲を彩る。その世界観に浸るようにオーディエンスも静かにステージを見つめていた。

「最高の初めての武道館でした」

ライブのもよう(撮影=鈴木公平)

 「エンドロール」が終了すると心臓の鼓動音が鳴り響いた。スクリーンには『UNOFFICIAL』のジャケ写にも描かれていた“心臓”が映し出され、『キラーチューン祭り』の文字が強く打ち出された。「Mr.ファントム」へ。両サイドに伸びた花道であきらと鈴木がパフォーマンス。続いて、「この曲が俺たちを何度も這い上がらせてくれました」と山中の言葉からメジャーデビュー曲「起死回生STORY」に突入。温度が上昇していくのがわかるほどの熱気が会場を包んだ。

 山中は「2015年は辛かったことの方が多かった。歌うのも嫌になったこともあった」と告げる。「でも、目の前のあなたたちが“光”でした。諦めなくて本当に良かったと思っています。気づけば側で見守っていてくれた曲です。精一杯の感謝を込めて歌います」と話し「エイミー」を届けた。今まで支え続けてくれた人たちに向け、歌う山中の姿がそこにあった。スクリーンに映った山中の表情は希望に満ちていた。

 『キラーチューン祭り』はまだまだ続く。「この曲が救ってくれました」とこれぞキラーチューンの代名詞とも言えるナンバー「狂乱 Hey Kids!!」を披露。縦横無尽に飛び交うレーザーが高揚感を煽り、ボルテージは最高潮へと導かれていく。耳に残るコーラスとソカ(トリニダード・トバゴ発祥のポピュラー音楽)のリズムが印象的な「DIP-BAP」、希望にもつながる未来を描いた「リコリス」と感情を揺さぶるナンバーで楽しませた。

 山中は「ずっと(武道館は)通過点だと言ってきました。TVやメディアに出て思うことがありました。自分の声は全員の心には響かないということです。声が低いのがコンプレックスでした。でも、メンバーやスタッフが背中を押してくれました。それがなかったら歌っていなかった…。この声しかない、この声でしか伝えられない」と胸中を明かす。

 続けて、「俺たちは関西出身だから、武道館に思い入れなんてなかった。でも今日やって気づきました。俺たちのことを思ってくれる人が集まってくれている“ここ”に思い入れがあります。好きでいてくれてありがとう。最後に愛を歌って帰ります」と本編ラストは「LOVE」を届けた。メンバーとオーディエンスの愛に満ちた空間。<一人で笑うことはできない♪>この歌詞が武道館に満ち渡るように降り注ぐ。「最高の初めての武道館でした」と言葉を残し、ステージを後にした。

ライブのもよう(撮影=鈴木公平)

 アンコールの手拍子に応え、ステージに中西が一人で登場。ワンマン恒例のグッズを紹介する「まさやんショッピングコーナー」を届けた。メンバーも再びステージに登場。「ここから始まるオーラル、この4人の船が動き出します。この船にみんなに乗って欲しい。これから作る景色にあなたたちが写っていることを願っています。ライブで初めて披露します」と14日にリリースされたばかりの新曲「トナリアウ」を演奏した。これからのTHE ORAL CIGARETTESを象徴するかのような楽曲を、感情をぶつけるように歌い上げる山中。様々な意味が込められた同曲は、それぞれの思いを乗せて届けられていく。

 「人の根本は変わらないかもしれない。弱い人間はずっと弱いのかもしれない。でも強くはなれる。自分と周りの環境だと思う。あなたが格好良い人たちと一緒にいれば、絶対格好良く、そして強くなれる。自分が弱いからって弱い人と一緒にいるのなら、あなたはずっと弱いまま。何か一つ強くなりたいなら、強い奴と一緒にいてください」と話す山中。

 さらに、「そういう友達がいないなら、俺らが格好良い友達になってやる。いつでも来い。オーラルのフロアは格好良い奴だけで埋め尽くしたい。それがバンドの進む道です。覚悟の歌です」と投げかけ、「ONE’S AGAIN」を届けた。「トナリアウ」をさらに主観的に描いた2つで一つとも言える楽曲は、人々の感情を揺さぶっていく。そんなエモーションがたっぷりと詰まった楽曲で初の武道館公演の幕は閉じた。

(取材=村上順一)

セットリスト

▽UNOFFICIAL DINING TOUR

6月16日 東京・日本武道館

01.5150
02.Shala La
03.カンタンナコト
04.悪戯ショータイム
05.CATCH ME
06.A-E-U-I
07.STARGET
08.嫌い
09.WARWARWAR
10.気づけよBaby
11.不透明な雪化粧
12.エンドロール
13.Mr.ファントム
14.起死回生STORY
15.エイミー
16.狂乱 Hey Kids!!
17.DIP-BAP
18.リコリス
19.LOVE

ENCORE

EN1.トナリアウ
EN2.ONE’S AGAIN

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