9mm Parabellum Bullet、“今昔”の繋がり感じさせたツアー初日
ツアーを結成の地である横浜からスタートさせた9mm Parabellum Bullet(撮影=橋本 塁・SOUND SHOOTER)
ロックバンドの9mm Parabellum Bulletが6月11日に、神奈川県民ホール 大ホールで、ツアー『9mm Parabellum Bullet “TOUR OF BABEL”』の初日公演をおこなった。5月10日にリリースした、通算7枚目となるアルバム『BABEL』を引っさげて、神奈川、愛知、兵庫、の3カ所をめぐる。現在、左腕不調によるライブ活動休止中の滝 善充(Gt)に代わり、サポートギターに武田将幸(Gt)と為川裕也(Gt)を招聘。それに伴い、かみじょうちひろ(Dr)のステージ位置は、中央後方ではなく、前方右手という通常とは異なる配置で演奏した。この日は二部構成。第一部『LIVE OF BABEL』ではニューアルバム『BABEL』を、収録順通りに全曲を披露。第二部『OUTSIDE OF BABEL』では、過去曲を演奏。彼らにおける“今昔”をみせ、魅了した。
『LIVE OF BABEL』
紗幕がかかりステージの全貌は見えない。そうしたなか、開演を告げるブザーが轟く。会場は暗転し、スリリングなギターシーケンスがホールに鳴り響いた。紗幕の向こう側のメンバーが、シルエットとして現れる。大きな存在感を放っていた。オープニンングを飾ったのは『BABEL』の1曲目「ロング・グッドバイ」。ステージ後方の一段高くなった位置に武田と為川のツインギターが陣取り、ドラムのかみじょうはステージ前方右側で、縦横無尽のドラミングを見せた。そこに中村和彦(Ba)の歪んだベースサウンドと菅原卓郎(Vo、Gt)の凜とした衝動的な歌声とギターが絡み合い、今までとは一味違った9mm Parabellum Bulletを聴かせる。
ライブは『BABEL』の収録通りの曲順をそのままに展開。メタルの要素も感じさせ、息もつかせぬ怒涛のビートでオーディエンスを熱狂させた「Story of Glory」、菅原のクラップに合わせて、オーディエンスと一体感を見せつけた「I.C.R.A」とライブならではの臨場感を『BABEL』の世界観に投入していく。そして、激しさがありながら、心に浸透していくようなメロディと歌が印象的だった「ガラスの街のアリス」、為川のアコースティックギターがアクセントとなり、広がりを見せた「眠り姫」とストーリーを感じさせる流れは、観るものを扇情させた。
スモークがステージを覆い、幻想的な空間でロックサウンドを放った「火の鳥」、そして、まさに衝動の塊といった鬼気迫る演奏で見せた「Everyone is fighting on this stage of lonely」と、オーディエンスに休む暇は与えない。とてつもないエネルギーがホールを支配していくようだった。「バベルのこどもたち」の間奏では、中村は低くセッティングされたマイクに向かい、断末魔の叫びとも言えるようなシャウト。
3拍子のリズムが心地よさを与える「ホワイトアウト」へ。タイトルの通り白い光がステージ上を交差する演出。バンドの出すグルーヴに体を揺らすオーディエンス。そのまま「それから」に突入。劇的でドラマチックな展開を見せる楽曲は、ステージの感情をぶつけてくるようだった。ベースの音がフィードバックし続ける中、第一部『LIVE OF BABEL』を終了した。
『OUTSIDE OF BABEL』
アニメ『ベルセルク』の主人公ガッツの声優である岩永洋昭氏による第2部の始まりを告げるアナウンス。会場から沸き上がる歓声のなか、再びステージにメンバーが登場。第2部は、そのTVアニメ『ベルセルク』第2期オープニングテーマで、6月7日にリリースしたばかりの新曲「サクリファイス」で幕を開けた。トリプルギターによるアンサンブル、そして、菅原の張り裂けそうな歌声が体に響き渡る。続けて、「The Revolutionary」、「ダークホース」と盛り上がり必至のナンバーで会場の温度はさらに上昇。
この日初のMCで菅原は、このようなセットリストを組んだ理由に言及。「このツアーをおこなうに当たって知恵を絞ったんですけど、『BABEL』は1曲目から10曲目まで聴いてもらっては完成だと思ったので、そのままやっちゃおうぜと、みんなの前で演奏させてもらいました」と説明。
続けて、「新しいアルバムを出すと毎回違った一面を発見して、実はどのアルバムも繋がっているんじゃないかと俺は感じます。第二部からは今までの曲と『BABEL』との繋がりを感じながら楽しんで欲しい」と投げかけ、2ndアルバム『VAMPIRE』に収録の「Keyword」を披露。
そして、中村がモニタースピーカーに座り、ベースでメロディアスな和音を奏で始めたのは、「黒い森の旅人」、アップライトベースにチェンジし、ジャジーなテイストを醸し出すロックナンバー「キャンドルの灯を」を届けた。幅広い音楽性をロックに取り込み、スリリングさと切なさを共存させ魅せる。
菅原は「アルバム自体が作れるのかという状況の中で、『BABEL』ようなアルバムを作ることが出来て誇りに思っています。俺たちは苦しい時こそ戦い抜いてきたわけですけど、メンバーやスタッフ、そして、ここにいる皆んなのおかげでバンドを続けることが出来たと思っています」と感謝を告げ、「みんなが立ち向かわなければいけない時に『BABEL』が力を与えてくれるようなアルバムになったら」とアルバムに込めた想いを話した。
約90秒という曲尺の「インフェルノ」では瞬間的な爆発力で煽り、底なしの熱さをホールに充満させる。盛大なシンガロングが巻き起こった「新しい光」、続いての「ハートに火をつけて」では、間奏にメンバー紹介を挟み、各々のスタイルで個性的なソロをとる。間髪入れずに「Cold Edge」へと流れ込み、盛り上がりのリミットを突破しボルテージは最高潮。
本編ラストは「Punishment」。かみじょうのブラストビートがオーディエンスの体を揺さぶり、そこに中村のラウドなベースが絡み合い、菅原のMarshallアンプから放たれた乾いたサウンドによる高速なギターストロークが、会場の熱気を扇風させる。オーディエンスもそのサウンドに応えるかのように、力強く腕を振り上げ盛り上がった。
菅原は「露骨に頑張れとは言わないけど、心の底からみんなのことを応援しています。ツアーの初日が9mmが誕生した横浜で良かった」と結成の地でこのツアーをスタートできた喜びを伝えた。アルバムの持つトーンと過去曲との繋がりを堪能できた初日。ここからファイナルに向けてどのように変化していくのか、非常に楽しみなツアー初日となった。
(取材=村上順一)
セットリスト
『9mm Parabellum Bullet “TOUR OF BABEL”』
6月11日 神奈川県民ホール 大ホール LIVE OF BABEL(第一部) 01. ロング・グッドバイ OUTSIDE OF BABEL(第二部) 01.サクリファイス |