DADARAY、川谷絵音と2マンで魅せたアーバンで刺激的なステージ
東京キネマ倶楽部で『DADARAY plesents「DADAPLUS~SPECIAL PARTY〜」』を開催したDADARAY
ゲスの極み乙女。のベーシストである休日課長によるバンド、DADARAY(ダダレイ)が10日、東京キネマ倶楽部で『DADARAY plesents「DADAPLUS~SPECIAL PARTY〜」』を開催。enonとDADARAYの2組によるライブパフォーマンスに満席の会場が沸いた。enonこと、川谷絵音は、ソロとしてステージに立ち、DADARAYは女性3声コーラスを武器にアーバンながらエッジィなパフォーマンスを披露した。刺激的だったこのイベントの模様をレポートする。
enon
まずは、enon。ゲスの極み乙女。、indigo la Endの川谷絵音によるソロプロジェクトだ。彼のステージは「ココロネ」(Qrion Remix)で始まった。トラップ(近年ヒップホップやR&Bで定番化した、音の隙間の多い音楽)風のビートに、川谷らしい裏声の混じった歌が乗せられていく。
2曲目はindigo la Endの楽曲「she」を披露。ハンドマイクからシンプルでフォーキーな弾き語りという振り幅は彼ならでは。この曲は3年ぶりに演奏したそうだ。
川谷は、またも弾き語りで「夜の恋は」を披露。しゃらんとしたアコースティックギターの音が気持ち良く響き、エンディングは切ない裏声の余韻が残る。
続いて一人で行ったカラオケでの体験など、軽妙なMCを披露してから、松任谷由実の「ひこうき雲」をカバー。緑がかった青の照明の中で朗々と歌い上げた。
そして「即興やります」と告げて、オーディエンスから「コスモス」、「ハーフ」、「曇り空」、「マッシュルーム」、「レディオヘッド」という意見を集めた川谷。<それは僕がマッシュルームだからですか?><ハーフが好きなんですか?>と自虐的なリリックを交えつつ即興ソングを披露した。
そして、7月12日に発売するMajor 3rd Full Albumから新曲の「見せかけのラブソング」を初披露し、最後は「夏夜のマジック」を届けた。ブラックミュージック風の楽器編成ながらJポップの枠に収めているのがユニークで、キャッチーなサビにオーディエンスも手を挙げて、音に体を委ねていた。
DADARAY
続いてDADARAYは登場すると、まず全員がそれぞれの楽器でノイズを出してから、いきなりブレイク。REIS(Vo&Key)がクールに「DADARAYです。宜しくお願いします」とつぶやいてから「美しい仕打ち」でステージが開幕。音源と違わない演奏力に裏打ちされた、ポップな演奏だった。
この日の編成は、キーボード&ボーカル・REIS、キーボード&ボーカル・えつこ、ベース・休日課長の正規メンバーに加えて、コーラス・ササミオ、ドラムス・佐藤栄太郎、ギター・長田カーティスとなっている。この布陣で次に披露したのは、浮遊感のあるコードを連打するイントロが切れ味鋭い「block off」。REISは「キネマー!」とオーディエンスを煽る。反応する観客。会場全体の高揚感も伝わってくる。
3曲目は「ダダイズム」。REISのラップも、女子3人によるコーラスワークも素晴らしく、佐藤のドラムソロにおけるポリリズムを伴ったパフォーマンスも見事。最終的に休日課長も参加して、サビを歌っていた。
ここでREISが「皆、良い顔してるね」と言葉短くMCを挟み、「WOMAN WOMAN」を繋げる。突っ込むリズムがオーディエンスに気持ち良さを与えていた。そして、ここでも色彩豊かなコーラスワークが炸裂。間奏では休日課長と長田のタッピングによるパフォーマンスも飛び出して心を揺さぶってくる。唐突なエンディングもクールだった。
「ダダマン」では女性ボイスが飛び交う不思議なAメロから、いきなりキャッチーなサビが飛び出す。ミスティックな展開で息を飲む会場をよそに、DADARAYはエンディングで<3拍・3拍・3拍・3拍・2拍>のトリッキーなリズムを繰り出し、オーティエンスを華麗に抜き去っていった。
さらに艶っぽいコード進行の「誰かがキスをした」、えつこが息でリズムをとりながらひとりで弾き語る「ikitsukushi(etsuko ver.)」を並べていく。
ここでMC。「ありがとうございます!」と休日課長が話してからメンバー紹介がおこなわれた。最後に話した「この6人で最高の音を届けたいと思います」という言葉は休日課長の率直な言葉だったように思える。それに続いた「Do What You Want」は楽曲それ自体と、光が回転する演出とが合わさり、美を生み出す。同じメロディにリズムが変形するアレンジが面白い。
ここで、えつこがそれまでのクールな雰囲気から一転し軽妙なMCを展開。そこから気を取り直して「場末」へ。可愛くポップなサウンドがセットリストで異彩を放つ。ウキウキした目でステージを見つめるオーディエンス。武器である分厚い3声コーラスからブレイクする流れにうっとりした。
4つ打ちのリズムから、3つ綴りのリズムの決めで始まったのは「東京Σ」。えつこの弾くシンセサイザーが存在感を放つ。中間部では細かいリズムのリフが挟まるなど聴きどころ満載。終盤は休日課長のワイルドなベースも。
そして、セットリスト最後は「イキツクシ」。先程、えつこが弾き語った曲のフルバンドバージョンだ。ここでのメインボーカルはREIS。階段を一歩ずつ下る様なサビのメロディが心地良い。最後は長田のノイジーなギターが音を塗りつぶすアウトロでフィニッシュ。大きな拍手が送られ、メンバーが退場。すぐにアンコールが発生した。
ほどなくしてDADARAYが再登場。アンコールは「Breeze in me」から。REISの弾き語りとドラムから始まる。最後まで3人のハーモニーが冴えていた。そして、主線をなぞるレイスのハイトーンは空気を突き抜けていく様だ。
そして、この夜の最後を飾ったのはバラードの「灯火」。きれいなピアノの音色が活きたイントロから、澄んだサウンドが提示される。と思いきや後半はパワフルな展開へ突入。大音量で感情を炸裂させ、エンディングへ飛び込んだ。シンセの余韻が長めに残り、フロアにはこの夜の充実感と、この夜が終わってしまう寂しさが入り混じっている様に感じられた。
(取材=小池直也)
セットリスト
▽enon
1.ココロネ ▽DADARAY 1.美しい仕打ち EN1.Breeze in me |