音楽の力で開放して欲しい、入江悠監督 感覚ピエロに寄せた期待
INTERVIEW

音楽の力で開放して欲しい、入江悠監督 感覚ピエロに寄せた期待


記者:桂 伸也

撮影:

掲載:17年06月09日

読了時間:約10分

『22年目の告白』で初タッグを組んだ感覚ピエロの横山直弘、秋月琢登と入江悠監督(右端)

 ロックバンドの感覚ピエロが、映画『22年目の告白ー私が殺人犯ですー』(6月10日(土)全国公開)の主題歌「疑問疑答」を担当する。

 同作は、『SR サイタマノラッパー』シリーズなどを手掛けた入江悠監督がメガホンを取り、リメイクした新感覚サスペンスエンターテインメント。未解決のまま時効を迎えた連続殺人事件の犯人が、殺人の真相を語る告白本を出版するという異例の出来事から、日本中を巻き込み新たな事件に展開していく様子を描く。自らを殺人犯と名乗る男を、俳優・藤原竜也、事件発生時から犯人を追ってきた刑事を俳優・伊藤英明が演じる。

 感覚ピエロは横山直弘(Vo、Gt)、秋月琢登(Gt)、滝口大樹(Ba)、西尾健太(Dr)からなる4人組バンドで、2013年に大阪で結成。以来、どの音楽レーベルやマネジメントにも所属しないバンドとして活動を続けている。2016年には、映画『LET IT DIE -Wake up-』やドラマ「ゆとりですがなにか」(日本テレビ系)で主題歌担当に抜擢されるなど活躍し、今最もその動向が注目されるバンドの一組である。

 その衝撃的かつ謎だらけの設定、息もつかせぬ目まぐるしい展開、そして社会にうごめく闇をとらえた独特の空気感が垣間見られる映画だが、エンドロールに流れる感覚ピエロの「疑問疑答」は、爽快感にあふれたキラーチューン。しかし、同時に映画の世界観を絶妙に表現している。今回はこの曲を手掛けた感覚ピエロの横山と秋月、そして入江監督に主題歌担当オファーから、この楽曲が出来上がる経緯などを語ってもらった。

音楽の力で解放してほしい

インタビューに応える、入江悠監督(左)と感覚ピエロの横山直弘、秋月琢登(右手前)

――感覚ピエロの起用は入江監督のリクエストだったのでしょうか?

入江悠 映画の最後のエンドロールをどうしようか? という話をした時に「これはロック的な方向がいいんじゃないか?」という話が出て、その候補の中に「感覚ピエロ」が入っていたことがきっかけです。それで彼らの音を聴いて、オファーしてみようかということになりまして。

――感覚ピエロとしては昨年、ドラマ「ゆとりですがなにか」の主題歌を担当する機会にも恵まれました。今回の起用はその際の世間への影響もあったのでしょうか?

入江悠 いや、それは特には。それまでの楽曲を聴かせていただいた上での実感ですね。凄くめんどくさい人だったら嫌だな、とは思ったんですけど(笑)。彼らは結構、ナイーブな世界を歌っているじゃないですか、ロックで。そういう世界の中では、ちょっと変わった人もいるので「ちゃんとコミュニケーションがとれるかな?」と心配でもあったのですが(笑)。

――「ロック的な方向が」という話がありましたが、映像が出来上がった時点でエンドロールに流す楽曲への要望はあったのでしょうか?

入江悠 やっぱり映画の中でイメージされる“嫌なところ”というか、ある種の重さのような感じが映画の最後に残るので、それを音楽の力で解放してほしい、という思いはありました。たとえば、この曲とは違うしっとりしたクラッシックが流れると、すごくドンヨリしちゃうと思う。最後に勢いのある音楽でお客さんには解放された後に映画館から出てもらいたいな、と。その感じが、感覚ピエロのこれまでの作品を見た時に「そういうことが多分できるだろうな」と思いました。

――そこから感覚ピエロ側としてはオファーを受けられて、実際に入江監督にお会いされたという経緯かと思いますが、初対面の印象は?

横山直弘 いかにも「クリエーターの方」というか、ちょっと目を合わせてくれない感じで(笑)。

秋月琢登 それはお前やん(笑)!

横山直弘 (笑)。映画を拝見させていただいた時に初めてお会いしたのですが、制作にあたって必要なことを「どこまで聞いていいもんなんかな?」と思って。多分、映画作りにあたって入江さんは、僕らには想像できないほど、いろんなことを試行錯誤して映画を作られているのだろうと。それを僕らが安易な言葉でそこに踏みにじったりしたらアカンな、とか思って。そんな思いを巡らせながら「作品を作らせていただきます、よろしくお願いします」みたいな感じで、挨拶をさせていただきました。

――では、最初は結構ガチガチな感じで?

横山直弘 そうですね、僕は「こんなすごく面白い映画を作った人に、気安く声を掛けてはいけない」と思って(笑)。

――対して入江監督から見た印象は?

入江悠監督

入江悠 いや、伏し目がちだったのは多分、僕が単純に人見知りだからだと思うのですが(笑)。あの時は、後ろでスタッフが作業しているようなところで映画を見てもらっていたんですが、どう見てもらえるかなという心配はちょっとしていました。

 でも映画が終わって彼らが出てきた時に見せた爽快感みたいな感じというか…。2人ともこの映画をすごく面白がってくれました。その印象で「ああ、これは彼らに持って帰って作ってもらったら、大丈夫なんじゃないか?」と思いました。

――その時に「これはいけそうだ」と思われたのでしょうか?

入江悠 そうですね。それと彼らと話をした時に、映画が好きなんだという雰囲気が伝わってきたんです。「映画があまり好きじゃないんですよね」と言われたら多分、今回の話はとくに困るのですが(笑)。だからそこはすごく信頼感がありましたね。

――お二人は実際に映画もお好きなのですか?

秋月琢登 僕は大好きですね、邦画も洋画も。

――以前から入江監督の映画も?

秋月琢登 いや、僕は監督さんの分類で見るという映画の見方はしないで、作品から入っちゃうので。だから今回、オファーが入江監督からという話を聞いていたので、先に入江さんの名前をウィキペディアで調べて(笑)。

――必要な事前調査ですね(笑)。

入江悠 でも逆にあまり事前に調べられて、それが影響されるのも嫌だな、とも思いました。せっかく初めての仕事なので。だから打ち合わせの加減も難しかったですね。先程要件という話もありましたが、「どこまで喋っていいんだろうか」ということに対しても。

――任せたいという思いも強かったのでしょうか? 感覚ピエロから自然に出てくるものを期待したい、というような。

入江悠 そうですね。それと、僕もだんだん歳をとってくると、いつの間にか結構オッサンばっかりの中で作っている感じになっていて(笑)。せっかく若い人とできる機会ということもあって、むしろ自分の知らないものを期待したい、という思いがありました。

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