初恋は中学生のとき
――「あれからの話」では、フレンズのキーボーディスト・ひろせひろせさんが作曲・編曲を担当していますね。90年代っぽいキャッチーさのある、サウンドやメロディ感だなと思いました。
ひろせさんは曲を作るだけじゃなく、プリプロから制作に立ち会ってくださったのですが、実際にそういう音楽が好きみたいで、スタジオでもそんな話をしていました。
歌詞は私が全部書いたのですけど、レコーディング当日まで迷っていたところがあったんです。そしたら、ひろせさんが「とことん行こうよ」と言ってくれて。レコーディングをストップして、その場で歌詞を書くなんて初めてで、「今日はもうレコーディングするのはムリかもしれません〜」とか泣きごとを言ったら、ひろせさんが「大丈夫だよ」と励ましてくれたり、「こういうのはどうかな?」と、アイデアを提案してくれたりもして。頑張れば出来るものだなって。
――その場でみんなで作る感じは、バンドっぽいやり方ですね。でも、プレッシャーがすごそうですね。
プレッシャーはすごかったです。でも、「このプレッシャーに負けないぞ」という、新たな境地に至りました(笑)。
――「彼女になったの」は、歌詞に<香水>とか<仕事>というワードが出てきますし、ミディアムのテンポ感というものあって、少し大人っぽく感じました。
私としては、かわいらしい等身大のナンバーかなと思っていたのですが…この曲と、「うしろめたいいい気持ち」の2曲は、地声で低めのメロディを歌っている箇所が多いので、そこが大人っぽく感じられたポイントかもしれませんね。
私は基本的に声が高い方ですが、そうではない自分の歌の魅力も見つけたいと思っていて。この2曲はキーが普段よりも低めだったので、チャレンジしてみたら面白いと思って、地声で歌ってみました。
――ボーカリストとしてより一層の成長を目指した結果、そういう声や歌い方になったわけですね。
でも、曲単位で歌い方や声の出し方を変えたりして、より自分の声が面白くなる歌い方を日々探しています。だから、後で自分の歌を聴いて「これはどうやって出したんだろう?」と思う時もあるくらいです。でも、その歌い方や声は、その日その時にしか出せないものだから、それを残しておけるという意味でレコーディングは好きですね。
――その日その時の気持ちを綴る、日記みたいな感覚ですね。
そういう感じです。これは歌い方のことに限らずで、学生時代の同級生に「あの時はこうだったよね」と言われても、覚えていないことがすごく多くて。それで、歌にして残さなきゃダメだと思って、歌詞を書いているところもあります。そう考えると、今作では2種類の忘れたくないことを書いていると思いました。
「彼女になったの」と「うしろめたいいい気持ち」は、まさしく日記的な感覚で、忘れたくない瞬間を曲に閉じ込めています。それがまず1つ。もう1つは、1曲目の「出会ってから付き合うまでのあの感じ」で、日常のループ(繰り返し)で薄れていく感謝の気持ちや思いやり、新鮮な気持ちとか、そういう忘れてはいけないと思う気持ちを書いています。
――それを、基本的には恋愛のシチュエーションで書いている。
恋の歌ばっかりです。今のところは。今後どうなるかは、分からないですけど(笑)。
こういう恋愛の歌詞をたくさん書いていると、恋多き女みたいに思われますけど、実際は全然そうじゃありません。かと言って、妄想を書いているわけでもなくて…。きっと一つの恋で、みなさんよりも多くのことを感じ取ってしまうのだと思います。逆に恋多き人生じゃないからこそ、書けるのだろうと思いますね。
だって、すごいことですよ。見知らぬ人同士で、好きになった人が好きになってくれて。そういう、恋の素晴らしさを常に感じています。
――MICOさんの中で、恋の素晴らしさを実感する具体的な体験があったんでしょうか?
私の初恋は、中学生の時でした。私は、初めて本気で人を好きになることが初恋だと思っているのですが、その時は4年間の片想いだったんです。だから、自分の好きな人が自分を好きになってくれることは、本当に凄いことだという実感があって。きっと、そこから始まっていると思います。
――4年も片想いして、結局どうなったのですか?
結局実ることはなくて…。でも、4年片想いして実らなかったからこそ、今の自分の恋愛観があると思っています。初恋で、恋愛観とか人生観って、絶対に変わりそうじゃないですか。