今年20周年のメモリアルイヤーを迎えたDragon Ashが5月31日、11枚目のアルバム『MAJESTIC』をリリースした。1997年にミニアルバム『The Day dragged on』でメジャーデビューし、日本におけるロックバンドの第一人者として、20年にわたってシーンの最前線で活躍してきた。本作『MAJESTIC』は、前作『THE FACES』から3年4カ月ぶりとなるアルバムで、Kjは制作について「超安産型だった。20年で一番生みの苦しみを感じなかった」と振り返り、サウンドの新しさも感じさせながら、実にDragon Ashらしい威風堂々たるアルバムとなっている。今回はKjとHIROKI(G)が、アルバムについての話やメジャーデビュー20周年を迎えた気持ちなどを語った。
KenKenが加わって一発目のアルバム、1年生という気持ち
――歌がすっと入って来るアルバムだと思いましたが、歌の部分で何か意識していましたか?
Kj ほぼ英語で歌っているので、自分が頭でイメージしたメロディをそのまま歌えている感じでした。だから今回のアルバムって、超安産型だったんです。どこかで立ち止まったり息詰まったりということが、一度もないまま終わりました。
――作り手として、安産のほうが良い作品になる?
Kj それは分からない。聴き手に委ねるほかないです。でも、とにかく苦しみをほとんど伴っていないので、その反動で達成感はとても低かったですけどね。「ああ、もう終わっちゃったのか」と。だから「大丈夫なのかな?」という感覚も、ちょっとありました。
――歌詞がほとんど英語ですが、それは意識的にですか? それとも自然に?
Kj 半々かな〜。2015年に降谷建志としてのソロアルバム『Everything Becomes The Music』を出して、それもほとんど英語でやってみたんですけど、ソロなんで自由にやれるし。俺は英語が得意というわけではないけど、俺が頭で創造しているメロディには、日本語よりも確実に英語のほうが合うんです。それで、メロディと言うか、やりたい世界観を優先させてソロを作って。そのとき、やっぱり歌いたいようにメロディを歌えるのは、楽しいなと思って。それで、Dragon Ashでも、そういうやり方を取ったということです。
――ラストの「A Hundred Emotions」の歌詞に<僕の様に夢中で>とフレーズがありますけど、その言葉のように、思うがまま楽しくて夢中となって作ったアルバムなのかもしれませんね。
Kj きっとそうだと思います。もちろん、すごく考えられてはいるけど、考え込んで作ったわけではないので。
いつものDragon Ashは、戦うような精神状態で作っているんですけど、今回はおもちゃ箱をひっくり返して、「何しようかな?」って感じで、戯れていた感覚が強かった。だから安産だったのかもしれないです。
――メジャーデビュー20周年というところに引っかけると、デビュー当時に楽曲を作っていた感覚と、もしかすると近かったりしますか?
Kj 俺らとしては、20周年のバンドが出すアルバムというよりも、KenKenが加わって一発目という感覚のほうが強いので、1年生という気持ちなんです。なので、確かにそういう感覚と近いかもしれないです。
――4曲目の「Ode to Joy」のような、疾走感のあるストレートな曲調は、ずいぶん久しぶりに感じました。
Kj ライブで一度やったんですけど、実際にすごく盛り上がりました。この曲が出来たきっかけは、去年の8月に「東北ライブハウス大作戦バンド」を組んでライブをやったことです。メンバーは、俺の他に細美武士、(ストレイ)テナーのホリエ(アツシ)、山嵐のタケちゃん(武史)、TOTALFATのBuntaで。そのときにMONOEYESの曲とブルーハーツ、それとテナーの初期の曲をやったんです。
それで一緒にリハスタに入ったとき、たとえばテナーの初期の曲なんかは、基本はメロが良くて、ひたすら作りがシンプルなんですね。でも、俺はつい頭で考えがちで、構造を練ってみたりとか、意識的に伝わりづらくなるようにピントをずらしてみたりとか、やってみるんですけど…。久しぶりにシンプルなオルタナロックみたいな曲を一緒に鳴らしたとき、やっぱりメロが良くて演奏が良いのは、単純に良いなって。良さは分かっていたんですけど、改めてやっぱり良いなと思って、そういう曲を久しぶりに作りたいと思ったんです。
HIROKI ライブでやったんですけど、すごく気持ちが良かったですね。爽やかだし。
Kj ちょうど良かったよね、温度感的にと言うか。
HIROKI ありそうでなかった感覚でした。この間はライブハウスでしたけど、野外とかフェスでやったら、もっと気持ち良いだろうなと思いながら演奏しました。
――空間系(「音に空間的な広がりを加える」ためのエフェクターなどを使ったサウンド)っぽいギターですよね。
HIROKI そうですね。単音フレーズが多いです。このフレーズは、デモからケンちゃんが作っていて。俺は度胸がないから、なかなかそういう単音フレーズは作らないんだけど、こういうのも良いなって思いました。
――単音フレーズって、そんなに度胸がいるんですか?
Kj 何て言うか、(剥き出しだから)恥ずいよね(笑)。
HIROKI そうそう。でも実際に演奏すると、これだけで成立するんだっていうのが、新鮮だったし。
――アルバムで全体的にギターは、ふわっと全体をまとめるような感覚のものが多いですよね。
HIROKI 今回は、わりとそういう役割りです。個人的に、ギターが前に出るより、みんなの音と混ざって鳴っているのが好きで。もともと“俺が俺が”というタイプの人間ではないし。だから、今回のアルバムの役割りは、俺としてはすごく「ちょうど良い」です(笑)。