人を楽しませる血筋を継いだ、レキシ 新曲に秘めた家族の歴史
INTERVIEW

人を楽しませる血筋を継いだ、レキシ 新曲に秘めた家族の歴史


記者:榑林史章

撮影:

掲載:17年04月27日

読了時間:約11分

長い歴史から考えたらレキシの10年は豆粒

レキシ

――レキシはもうすぐデビュー10周年ですね。今さらですが、そもそもレキシというアイデアは、どういうところから生まれたものなんですか?

 CDを出すようになってからは10年ですけど、やり始めてからは20年くらいになります。前にやっていたバンド(SUPER BUTTER DOG)のときから、ライブのアンコールのときに遊びでやっていたんです。

 もともと歴史が好きだったので、ネタのひとつとしてラップと融合したようなものだったんですね。それがライフワークとなり、気づけばワークになっていた。だから当時は、今みたいになるとは想像もしてなくて。

――そもそも歴史が好きなんですね。

 叔父さんが歴史好きだったんです。その影響もあって歴史好きになったので、これもある意味で池田家の家督なのかな?

 まあでも、以前なら「歴史好きです!」とわざわざ言うようなことではなかったし。サブカルがサブカルではなくなったみたいなもので、“歴女”(編注=歴史好きな女性を指す言葉)とかのおかげもあって、歴史が陽の目を見るようになったのは、自分としては大きいですね。

――人を楽しませる血筋というお話がありました。リスナーを楽しませるために、日々いろいろアンテナを張り巡らせていますか?

 アンテナとは違うんですけど、まず、自分がドキドキワクワクしないと、何をやっても伝わらないし、楽しんでもらえないと思ってやっています。自分が面白がりたいのがいちばんで、レキシのプロジェクトも、きっかけは自分が好きだったからで。

 「好きこそものの上手なれ」じゃないけど、だからこそ、こうして10年も20年も継続しているわけで。きっと誰も何も思わなくなっても、やり続けるだろうし。ライフワークだろうがワークだろうが、レキシはレキシとしてあり続けると言うか。

――池田さんは、歴史のどういうところに面白みを感じていたりしますか?

 たとえば遺跡に行ったとき、何年に何があって、そこからどういうものが発掘されたとか、そういうことももちろん面白いんですけど、僕はそれを作った人の気持ちを、数時間前に起きたこととしてリアルにとらえるようにしていて。そう考えることが、すごく面白いんです。ここでこんな大きなことがありました、と言うよりも、ここで誰かが2〜3時間こういうことを考えて、「よし」と言って前に進んだ場所ですと言ったほうが、より身近なこととして考えられると言うか。

――確かに、「家督」は家族愛、「きらきら武士」は恋愛と、現在のことの様に見立てて書いていますね。

レキシ

 そういう風に考えるほうが面白い。視点の問題と言うか。たまにガイドさんをお願いして、説明を聞きながら遺跡を回ったりするんですけど、そのガイドさんの想いを聞いているのが、すごく面白かったりするんです。歴史的なことももちろん面白いけど、ガイドさんの遺跡をこういう風にしたいと思っているという想いを聞いて、それもまた歴史だなって思っちゃったりして。結局、歴史は人なんだなって。そう思う瞬間が、いちばん面白いしワクワクします。

 この石垣を一つ置くのに、どれだけ考えたんだっていう。その石垣にどういう想いで名前を刻んだのかとか、それを想像した方が余程面白くて。それって僕らに置き換えて考えると、ライブハウスの楽屋にサインをするのと似た感覚なんじゃないかとか。人の想いは、いつの時代も同じだと思うんです。それが、歌詞になっているわけです。

――もうすぐデビュー10周年ということに関してはどうでしょうか?

 静かに粛々と健康で、10周年を迎えられれば良いなと思っています。

 6月6日から全国ツアーがあって、それを10周年ツアーと銘打っていますけど、僕にとってはいつでも10周年です。去年も10周年、今年も10周年、来年も10周年なので。

――それはどういう?

 (笑)。節目はあるけど、「そこだけが特別ではないよ」という意味です。毎日が特別なんだよと。毎日が10周年、毎日がスペシャルです。長い歴史から考えたら、10年なんて豆粒みたいなものですから。

(取材・撮影=榑林史章)

◆レキシ ミュージシャン池田貴史のソロプロジェクト。1997年にSUPER BUTTER DOGのキーボーディストとしてデビューし、100sのメンバーとして活動後、2007年にレキシとしてアルバム『レキシ』でデビュー。しゃべりのセンスも評価が高く、テレビ番組でも活躍する他、映画『海街diary』やドラマ『99.9-刑事専門弁護士-』に出演し役者としても高評価を得ている。椎名林檎や私立恵比寿中学などの楽曲プロデュース、星野源やサンボマスターなどのライブでサポートキーボーディストとしても活躍する。

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