『CIDER LABO Vol.4』の出演者たちと記念撮影(撮影=結城さやか)

 3人組バンドのサイダーガールが4月22日に、東京・渋谷CLUB QUATTROで、自身が主催するイベント『CIDER LABO Vol.4』を開催した。2年前の初開催から4回目となる同イベントには、4人組ロックバンドのLAMP IN TERRENと、竹内サティフォ&斉藤伸也による2人組ユニットのONIGAWARAが参戦。3組それぞれが自身が有する世界観をぶつけた。この日、サイダーガールは7月26日に「エバーグリーン」でメジャーデビューすることを発表。アンコールで同曲を披露し、訪れたオーディエンスを沸かせた。

LAMP IN TERREN

トップを飾ったLAMP IN TERREN(撮影=結城さやか)

 トップバッターは4月12日にニューアルバム『fantasia』をリリースしたばかりのLAMP IN TERREN。松本大(Vo.Gt)が「遊ぼうか渋谷!」と投げかけ、オープニングナンバーは「林檎の理」。バンドの内なる闘志を燃やすナンバーによって、ゆっくりと会場の熱量を高めていく。続いてニューアルバムから「heartbeat」へ。心臓の鼓動が会場に脈打つ。松本の感情が流れ込んでくるようだ。

 MCでは松本が、主催者であるサイダーガールとの出会いを話す。「去年の夏、大阪のRUSH BALLというフェスで挨拶したんだけど、僕らは人見知りするからあまり話せなかった。でも今日お誘い頂いて、ちゃんとお話しが出来て良かった」と打ち明けた。そして、ニューアルバムから、勝ち取る自由を表現した「at(liberty)」、耳に残るキャッチーなメロディの「涙星群の夜」と披露した。

 ラストは、松本が「最後に俺らが一番届けたい歌をみなさんにお届けします。くだらない日常を素晴らしい日常にするために」と話し、LAMP IN TERRENの新境地とも言えるグルーヴィな「地球儀」を届けた。普段はギターを持って歌う松本はそれを脱ぎ捨て、ハンドマイクで、踊りながら歌い上げる。トップバッターとしての役割を十二分に果たし、ONIGAWARAへと繋げた。

ONIGAWARA

ONIGAWARA(撮影=結城さやか)

 2番手は元竹内電気の竹内サティフォと斉藤伸也による、スーパーJ-POPユニットのONIGAWARA。LAMP IN TERRENのバンドサウンドから一転して、打ち込みを使ったダンサブルなポップナンバー「ボーイフレンドになりたいっ!」を披露。竹内サティフォのキレのあるギターカッティングが生の息吹を与え、斉藤伸也のコミカルなアクションが目を奪う。一気に笑顔が絶えないONIGAWARAの世界観に会場を変えていく。

 コミカルなロック路線の「恋のメリーゴーランド」、良質なポップソングの「エビバディOK?」に続き、3月22日にリリースされたニューアルバム『ヒットチャートをねらえ!』から「僕の恋人」やR&Bの要素も感じられた「I don’t wanna die」など後半はセットリストに緩急をつけ、楽しませていく。

 斉藤は「みんなに踊ってほしい曲があります」と述べると、歌詞が耳から離れないキャッチーな「ヒットチャートをねらえ!」を、「基本動作を説明したいと思います」と手の振りをレクチャー。グイグイくるグルーヴと80’sの良質なポップスとソウルの影響下を感じられる楽曲で、容易ながらも楽しめる振り付けで一体感を高めた。ラストは「タンクトップは似合わない」を届けた。躍動感あふれるナンバーによって、終始体を動かしダンサブルなビートに満ちた空間を作り上げた。

サイダーガール

サイダーガール(撮影=結城さやか)

 大トリは主催者であるサイダーガール。夏を感じさせるSEとオーディエンスの手拍子をバックに、メンバーがステージに登場。フジムラ(Ba)の「CIDER LABOにようこそ!」のシャウトのような掛け声から、1曲目を飾ったのは「ドラマチック」。Aメロで抑え、サビで爆発力のあるYurin(Vo.Gt)のダイナミックな歌声が高らかに響き渡る。続いて、2ビートのアッパーチューン「モラトリアムさん」。一気にトップギアに入れてきたバンドサウンドを浴び、大きく腕を振り上げ応戦するオーディエンス。

 MCではフジムラが「2年前の夏にVol.1を開催したんだけど、あの時は200人もいなかったと思う。けれど、今日はこんなに集まってくれてありがとうございます」とクワトロに集まったオーディエンスに感謝を告げた。

 体に心地よい8ビートが浸透してくる「魔法」から、雰囲気を変え、ミディアムバラードナンバーの「夕凪」。徐々に熱を帯びていくYurinの声に、オーディエンスもYurinから放たれる言葉たちをじっくりと聴き入っていた。また曲調を一転し、イントロでのYurinと知(Gt)の2人によるソリッドなギターサウンドが高揚感を煽る「スワロウ」。助走をつけ、大空へと飛び出して行きそうな疾走感あるサウンドで盛り上げていく。

 2度目のMCでは、本日出演したLAMP IN TERRENとONIGAWARAについて、フジムラが「テレビで『緑閃光』を見てめっちゃ良いバンドだなと思った。すぐに音源を買って聴いてました。その月日を越え、対バン出来たことを誇りに思います。」と何年も前からLAMP IN TERRENを聴いていたことを話し、ONIGAWARAについては「前身バンドの竹内電気時代から好きだった。今日は僕の大好きな『エビバディOK?』をやってくれてテンション上がりました」と、以前からよく知っていたことを明かした。

 MCに続いて届けた、6/8拍子のイントロから1.2のカウントから盛り上がり必至のナンバー「パズル」では、バンドのエネルギーを押し返すように、アウトロでは<オオオオー♪>と、オーディエンスの熱いシンガロングがクワトロに響き渡った。そして、フジムラが「このクワトロを一番熱いライブハウスにしようぜ!」とベースを置き、ハンドマイクで客席まで接近し、コールアンドレスポンス。Yurinはそれを聴いて「こんなに熱気を帯びたレスポンスは初めてです!」と興奮気味に話した。

 その高まったテンションを引き継ぐように、躍動感溢れるナンバーの「アイヴィー」。オーディエンス一丸となったクラップがバンドを後押し。そして、間髪入れずに「オーバードライブ」に突入。「アイヴィー」でついた勢いをさらにブーストさせ、オーディエンスもヒートアップ。タオルを回したり、腕を掲げたりとそれぞれのやり方で、今の感情を表現していく。

 Yurinは自分たちが人見知りだということを伝える。「僕らはシャイだからこそ音楽にたどり着いたのかなと、今思っています。だから、これからもたぶん話すのは上手くならないと思うんだけど(笑)、良い音楽だなと思えるようなものを、これからもやっていけたらと思います」と決意を話し、「NO.2」を届けた。想いを伝えようという姿勢が伝わってくる演奏に応えるかのように、ステージに向かい手を伸ばすオーディエンス。気持ちの一体感が高まるなか、本編を終了。

メジャーデビューを発表

集合写真(撮影=結城さやか)

 メンバーがステージを去ると紗幕が引かれた。アンコールを求める手拍子が鳴り響くなか、紗幕に映像が投影された。夏の一幕爽やかな景色と女子高生の姿。そこで、発表されたのはメジャーデビュー決定のメッセージ。サイダーガールが初めてライブをおこなった日でもある、7月26日に「エバーグリーン」をリリースすることが告げられた。歓喜と驚きが混じった大歓声が会場に響くなか、メンバーが再びステージに登場。

 Yurinが「僕らメジャーデビューすることになりました。早速なんですけどメジャーデビューシングル聴いてもらってもいいですか」と、その「エバーグリーン」を初披露。サイダーガールらしいナンバーで、いつまでも色褪せない爽やかなアッパーチューン。会場にはメジャーデビューの報告を受けたことも相まって、涙を流す人たちの姿も見られた。

 『ROCK IN JAPAN FESTIVAL 2016』に出演した時と同じように、歌っている最中に泣きそうになったとYurin。フジムラは「ニコ動などで活動してきた僕らにお客さんがつくのか心配で、ずっと悩んでいた。でもこうやって今の景色を見てるとすごく安心しました。一時期音楽を辞めようと思ったことがあって…。でもメジャーデビュー出来たんだから死ぬまで音楽やろうぜと、これから音楽シーン駆け抜けていきたいと思います!」と胸中を語り、力強く決意を告げた。

 Yurinが「僕らはメジャーデビューをするんですけど、メジャーとインディーズというのに、あまり差を感じていなくて、沢山の人に聴いてもらえる機会が増えるんじゃないかなという気持ちなんです。他のバンドもMCで『俺らはメジャーに行っても変わんないから』とよく聞くけど、僕らも本当にそう思っています」と思いを語った。

 さらに続けて「これからもみんなに、『サイダーガール良いじゃん』と思ってもらえるような曲を作り続けて、もっと聴いてもらえる回数を増やして、もっと良い景色を一緒に見ていけたらなと思うし、頑張っていこうと思うので温かく見守ってください」と涙を堪えながら語り、ラストは、サイダーガールが初めて作った楽曲だという「群青」を、感謝を込めた全身全霊の演奏で届け、『CIDER LABO Vol.4』の幕を閉じた。爽快感と儚く消えていく炭酸のような、サウンドスケープで見せたサイダーガール。バンドは新たなスタート地点に立った。

(取材=村上順一)

セットリスト

4月22日 東京・渋谷CLUB QUATTRO

▽サイダーガール
01.ドラマチック
02.モラトリアムさん
03.魔法
04.夕凪
05.スワロウ
06.パズル
07.アイヴィー
08.オーバードライブ
09.NO.2

ENCORE

EN1.エバーグリーン
EN2.群青

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