奈落からの生還、LAMP IN TERREN 辿り着いたのは幻想世界
INTERVIEW

奈落からの生還、LAMP IN TERREN 辿り着いたのは幻想世界


記者:村上順一

撮影:

掲載:17年04月14日

読了時間:約22分

LAMP IN TERRENでなくても良いのではないか

川口大喜(撮影=(C)山川哲矢)

――先ほど「闇」に落ちていた時期と言っていましたが、Twitterを再開した事との関連性は?

松本大 僕が伝えられる事って無いとずっと思っていたんですよ。それは音楽に関しても。僕の闇の根源はそこです。僕が言わなくてもやらなくても、誰かがやるんじゃないかという感覚です。「LAMP IN TERRENじゃなくても良いんじゃないか?」という感覚が、この1年9カ月の闇です。

大屋真太郎 僕は加入する時に悩んだ事でもありますね。結果的には「僕らだからこそ」と思っています。

――「自分でなければ」という思いがないと、続けていく事は難しいと思いますが。

松本大 だから一度Twitterを止めたんです。発信している言葉を分散させる事は自分にとって意味が無いと思いました。「このアルバムを作ったのがきっかけ」と話しましたが、一人のアーティスト、一つのバンドとして自分がやりたい事や、自分だけがやれる事、自分だけが言える事、もしくは僕らじゃないといけない事、そういう事のきっかけを掴んだと思ったので、改めて自分の言葉で発せられるなと。自信が付いたというか、胸が張れるようになった感覚です。

 今初めて、鎧を付けないでこうしてインタビューを受ける事が出来ていて、初めてちゃんと松本大として色んな話が出来ているなという感覚です。今は自分の中で何も飾っていない感じがあって「やっとこうなれたか」という。その精神を自分で思えるか思えないかで発信の仕方も違ってきますよね。

――川口さんはステージで後ろから松本さんを見ていて、そういう変化は感じましたか?

川口大喜 大は分かりやすいところは分かりやすいんですよ。なので、それが歌に反映されていると思う事はありました。背中を見て全てが分かったというような偉そうな事は言えませんが、『fantasia』の楽曲は、彼が、気持ちが落ちていたわりには、明るい曲が多かったりするんです。一緒にいるメンバーからすると、そうなるのもおかしくないというか、本人がそういう自分を求めて、だからこそ落ちたという事もあると思うんです。

 その自分が抱えているものを表現するために、必死で戦っていたんだと。だから今回の楽曲たちが生まれてきたのも理解できます。本人がそういう表現や自分を求めていたからこそだと。それは、落ちている彼をずっと見てきたから僕らも分かるんです。

――ちなみにストレス発散方法はありますか?

松本大 曲作りは息抜きとも生産とも思えなくなってきたし、何で息抜きしているんでしょうね…。でも心が強くなりましたね。別に息抜きをしなくても最近は色々楽しいので。曲作りも楽しいし、最近はメンバーの変化にも気付いたり、視野が広くなったと思いますし、作業の一つひとつが楽しい。そう感じられるようになりました。

――そんな中でTwitterにアップしていた「おまじない」という曲がありましたね。

松本大 今作では、僕はピアノやシンセも弾いたし、マンドリンも弾いたりした上で、ちゃんとしたバンドサウンドを作ってみたいなと思って居ます。ピアノの経験も活かしたいと思っているので、そういう曲も作りたいなと。「LAMP IN TERRENが持っているバンドサウンドってどんな感じかな?」と思った時に、けっこうこだわった所にいけている感じがあるんです。その中でも「おまじない」はちょっと浮いている曲です。

――松本さんのパーソナルな部分が出ている楽曲?

松本大 そうですね。そういう曲も胸を張って出せるようになったなと思います。

先にある人生のまた向こう側で会いたい

『fantasia』初回盤ジャケ写

――メンバーの変化にも気付いたとの事でしたが、大屋さんに関してはどうですか?

松本大 真ちゃんはギタリストとして「こうありたい」という方向がちゃんと見付かったんだと思います。弾いている音が昔と違う。目標が遠い所なのか近い所なのかは分かりませんが、「真ちゃんがなりたいもの」というのが明確に見えるようになった気が。それは音にも出ているんです。

大屋真太郎 バレましたか(笑)。自分の中でも「進化し続けないと駄目でしょ」と思うので、その方向がバレるのはしょうがないと言いますか…。

松本大 今までは“望み”の方向はあったけど、それを自分で上手く使えなかったというところがあったと思うんです。僕もどうやって伝えたら良いのかなと。なかなかその言葉が見つからなくて。でもいつの間にか自分で答えを見つけて、その方向に向かっているなと感じます。

大屋真太郎 憧れや自分の理想像というのは色々あると思いますが、このバンドに必要な自分の理想像や、目指すべきものが何なのかというのがやっと分かってきたのかなと思うんです。その方向へ行けば、はっきりしたものになっていくと思います。

――中原さんの変化に対してはどうでしょうか?

松本大 ぶっちゃけ、良くも悪くも健仁は一番変わっていないです(笑)。変わらないから良いのかも。健仁はどこへ行ってもベースです。本当にベースの事が大好きで。一アーティスト、一人の人間としてお客さんとどう接していくかという事を凄く考えていたり、ライブのやり方などは健仁が今一番考えていると思うんです。それがプレイにも出ていて。ただ、抜けているところが多過ぎて、ムカつく所もあるんですけど(笑)。

 でも、認めているところは凄く大きいんです。健仁だから出来る事だと思うし、メンバーに対してリスペクトがあります。「こいつと一緒にやっていて良かったな」という事は3人それぞれにあるんです。健仁は真面目なんですけどちょっと抜けているので、考えている方向がまるで違う時があるんです。「そっちじゃないでしょ!」みたいな時あるよね?

川口大喜 健仁は“七不思議”なんですよ(笑)。

松本大 誤解を招きやすい点が最近多くなったと思うんです。長い付き合いなんですけど、歳を重ねる毎に一番分からなくなっていくんです(笑)。

中原健仁 メンバー各々に対して見習うべきところがあって、僕もそうだといいなぁとは思うんですが、自分でも「なんで!?」ということをしちゃう時もあって、反省ばっかりしてます(笑)。大と真ちゃんは中学生からの付き合いだし、大喜も気づけば6年、一緒にバンドをしているから、良い方向にもそうでない方向にも向かうところを見ます。

 その度に、「良いと思うよ!」とか「それ大丈夫?」と話し合えていて、お互いに支え合えているのを感じると「良いメンバーとバンドをしているなぁ」と思います。まあそれでも僕に関しては、もっと支えられるばかりじゃないようにしないとですね(笑)。

――川口さんの変化についてはどうでしょう?

松本大 大喜は一番変化がめまぐるしく、それが年ごとに見られます。ファッションにしても考え方にしても。唯一変わらないのはネガティブなところですね。でも、ネガティブの観点は変わっていっているんですけど、一人だと自信を持ちきれない所があって、そこはバンドで支え合ってステージに上がったり、新しい事に挑戦したりするんです。最近よく思うのは、本当に“愛されキャラ”だなという事です。

――バンドのマスコット的な部分もありつつ?

松本大 対バン相手にもそうなんですけど、持っているもの一つひとつが面白いんですよね。ネガティブな要素だったとしても、考え方も、見た目怖いのに優しいところも、いかついのにドMなところも「可愛いなあ」と思うし、何より大喜は僕の理解者であるという感覚が強いです。ステージではサイドで、2個イチで、縦のラインで2個イチだと思う瞬間がありますね。その十字架で“4個イチ”になる感じがあって。

川口大喜 なるほど。真ん中で絶対に交わると…。

松本大 人間としてのタイプが4人とも違うんですよ。菱形のパラメーターで表したら全部マックスに振り切っている感じですよ。それこそ、健仁のベースじゃなきゃ駄目だし、真ちゃんのギターじゃなきゃ駄目だし、ハッキリと言葉に出来るのは大喜のドラムじゃなきゃ歌えないです。

 その感覚は、歳を重ねる毎に更新されています。それに応えようとしてくれる気持ちも凄く分かるんです。あと変化としては大喜がおしゃれになった(笑)。2年前のこの時期は下駄を履いていたからね。それが一番変わったなと思います。

川口大喜 下駄は今でも履きますけど。結構気分屋なので…。

松本大 おしゃれになったね(笑)。

川口大喜 まあ、それも気分なので(笑)

――ワンマンツアー「in “fantasia”」が5月から始まります。

松本大 ライブは終盤になると「終わるのが嫌だな」となるじゃないですか? でも、アルバムを聴き終わった後やライブを観終わった後の方が重要だと思っていて、来てくれた皆さんが“fantasia”という国から日常に戻っていく時に、その先の自分にワクワク出来るようなライブにしたいんです。

 僕らは全身全霊で“fantasia”という国に誘導する“キャラバン”という団体があったとして、そこのリーダー的な存在として全力で連れて行くし、送り出すんです。そこにはお客さんが居ないと始まらないと思うので、良い日を作って、記憶に残して、各会場で良い音楽を鳴らして、その先にある人生のまた向こう側で会いたいと思うので、何にせよ未来がいちいち楽しみになるようなツアーにしたいです。

(取材=村上順一)

作品情報

LAMP IN TERREN
3rd Album「fantasia」
リリース日:4月12日
収録曲数:全10曲
初回盤(CD+DVD)3300円(tax out)AZZS-61
通常盤(CD)2400円(tax out)AZCS-1066

収録曲

1.キャラバン
2.地球儀
3.涙星群の夜
4.heartbeat
5.innocence ※劇場アニメ3部作 第2部『亜人 -衝突-』主題歌
6.at (liberty)
7.pellucid ※映画『何者』劇中挿入歌
8.オフコース
9.不死身と七不思議
10.eve

初回盤DVD概要:
2016年に行われたワンマンツアー「GREEN CARAVAN TOUR」より恵比寿LIQUIDROOMのツアーファイナルライブ映像を8曲収録
<DVD収録楽曲>
1. ボイド
2. heartbeat
3. pellucid
4. とある木洩れ陽より
5. メイ
6. 緑閃光
7. innocence
8. キャラバン


ライブ情報

LAMP IN TERREN ワンマンツアー2017 「in “fantasia”」

5月7日(日)北海道・札幌COLONY OPEN16:30/START17:00
5月13日(土)愛知・名古屋CLUB QUATTRO OPEN17:00/START18:00
5月20日(土)岡山IMAGE  OPEN16:30/START17:00
5月28日(日)宮城・仙台HOOK  OPEN16:30/START17:00
6月2日(金)香川・高松DIME OPEN18:30/START19:00
6月3日(土)福岡BEAT STATION OPEN17:30/START18:00
6月11日(日)新潟CLUB RIVERST  OPEN16:30/START17:00
6月18日(日)大阪・心斎橋BIGCAT  OPEN17:00/START18:00
6月30日(金)東京・LIQUIDROOM ebisu OPEN18:00/START19:00

チケット:前売3300円 (+1D) / 一般発売中

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