どんな曲でも私色になる
――歌をやっていこうと決意したのはいつ頃だったのでしょうか?
父が有名なジャズのレコードのコレクターなんです。それで私が小さい頃からジャズミュージシャンが家によく遊びに来ていたんです。レコードを買いにアメリカに行ったりしていましたし、小さい頃からジャズピアノも習っていました。15歳の時にアランジェルベールさんという作家の方が私の歌声を聴いて「この子の声は特別だから歌った方が良い」と言ってくれたんです。
ジャズは大好きだったので、13歳の時からフランスで1番若くしてジャズの学校に通いました。その時に、父の友達で当時レコード会社のジャズ部門の部長、アンリ・ルノさんがレコード会社にサイン書を送ってくれて、あれよあれよと言う間に、今に至りました。
――ジャズが根本にあるのですね。
そうですね。完全にジャズが基本です。最初はジャズのスタンダードのアルバムを出していました。最初のターニングポイントだった“渋谷系”は、レコード会社の人に「日本の作家ともやってみたら?」と言われて初めてやったポップスなんです。
――ジャズや“渋谷系”もそうですが、アニソンや、今作には収録されていませんがディズニーとジャンルの幅が広いですよね。それらを歌う時にご自身の中での、チャンネルの切り替えのようなものはありますか?
基本とするベースにジャズがあるので、どんな曲でも私色になると自負しています。だからジャンルによってのチャンネルの切り替えはそんなにないです。ただ一つ、そういった事が必要かもしれないのは歌謡曲です。歌謡曲は大きい声の人の方が良いので。
――ウィスパーボイスなど、声の相性もあるんですね。
発声方法も独自なものがあって、ウィスパーなんですけど響かせるところもあるし、大きな声を保つのが難しいというところもあり、歌謡曲には向かないんですよね。
スモークは嫌ですね
――クレモンティーヌさんは30年のキャリアで声がほとんど変わっていないという印象を受けました。維持していく何か秘訣があるのでしょうか?
それでもデビュー当時からキーは、半音くらいは下がっているんですよ。日本人は高い声が好きみたいなので、フランスで歌う時に比べて高い声で歌うようにしています。
――日本人は何で高い声が好きなんでしょうね?
何ででしょうね(笑)。
――個人的には女性の低音の歌声も好きなのですが。
低過ぎたらそれはそれで難しかったりもするんですよね。
――喉のケアに何か特別な事をしていますか?
いいえ。何もしてません。歌う前にあまり喋ったりしないようにはしますけど、特別には何もしませんね。
――インタビュー後にライブですが大丈夫でしょうか?
大丈夫よ(笑)。ブルーノートは音が良いし、心配していません。
――日本の歌手の方は加湿器を常設したりと、喉のケアにシビアな方もいます。クレモンティーヌさんの周りの歌手の方はどうですか?
フランスでもそういう方はいますね。エアコンをつけなかったり。そうだ、スモークは嫌ですね。あれだけは嫌いです!
――ライブでは必須演出だったりしますが…。
それだけはお断りしているんですよ(笑)。
――長いキャリアの中で喉の調子が悪くなった時期などありましたか?
1回だけ何年か前に声が詰まって出なくなってしまった時がありました。しかもライブ中の1曲目で。
――それは焦りますね。その後ライブは大丈夫だったのですか?
「ちょっと喉の調子が悪くて…」と言ったらお客さんも「大丈夫だから!」と言ってくれて、それはそれでお客さんと一体感ができて、その後はちゃんと歌えたんです。結果的には良いコンサートになりました。思い出深いライブですね。
――その場で「喉の調子が悪くて」と意思疎通して、お客さんと一緒に持ち直して作り上げるライブは良いですね。
そうですね。ライブは生き物ですからね。
――自然体でやるという事が重要なんでしょうかね。
正にそうです。もちろん決まり事もあるけど、それ以外のところは自然にね。