佐野元春のレコード愛、CDの登場で「ひとつの楽しみをとられた」
アナログ再発トークイベントでレコード愛を語る佐野元春(C)Sony Music Direct (Japan) Inc.
ミュージシャンの佐野元春が9日、東京・タワーレコード渋谷店でおこなわれた、『佐野元春アナログ再発売記念イベント 佐野元春×長門芳郎 トークショー in PIED PIPER HOUSE』に出席。佐野が自身の体験をもとに、レコード視聴について「夢とか希望とかを感じる貴重な体験。ただ『楽しかった』だけじゃなくて、海外のシンガーソングライターがどんなことを歌ってるのかが気になっていた」と熱く語った。
このイベントは『BACK TO THE STREET』(1980年)、『Heart Beat』(1981年)『SOMEDAY』(1982年)の3タイトルの再リリース発売を記念した企画。話し手は、佐野と現在タワーレコード渋谷店5Fで限定復活している、伝説的レコードショップ・PIED PIPER HOUSEの店長の長門芳郎氏。司会進行には音楽評論家の能地祐子氏と豪華な顔ぶれとなった。
昨年、活動35周年を迎えた佐野。盛大な拍手で迎えられた彼は、まず昨年1年間の活動を振り返りつつ、「今年は新しいアルバムを2枚準備しています。もう大分できています」とTHE COYOTE BANDとの新作、The Hobo King Bandとのセルフカバーの制作を明かした。これには「待ってました」とばかりにファンから歓声があがった。
その後、長門氏も交えてイベントは本題へ。佐野は「僕はアナログで育ったんですけど。ノスタルジーじゃなくて、アナログの温かい音が好きなんですね。古いCDだと、表面にカビが生えたりしてもう音が出ないものがあるけど、レコードはそういう事が無い」とレコードへの愛を語る。
また、再発されたアナログ盤作品の音質について佐野は「当時は当時で説得力あるんですけど、今の技術でカッティングすると中低音が豊かになっています」と解説した。
さらに話題は今年20年を迎える、佐野の作品『THE BARN』(1997年)へ。ウッドストックにあるベアズビル・スタジオで制作されたアルバムだ。
このアルバムに音楽プロデューサーのジョン・サイモンが参加しているが、彼が日本のテレビに出たという逸話も話された。これについて佐野は「ジョン・サイモンがアルバムの打ち合わせで来日していた時に、『日本のテレビに出る?』って聞いたら出るって言ったんだ」などと当時を楽しそうに回想した。会話中、『THE BARN』の20周年記念盤の発売もほのめかしていた。
そして話題はまたレコードへ。佐野は「図書館とレコードショップが合体した感じだった」とPIED PIPER HOUSEについて振り返りながら「レコードはA面、B面でストーリーがあった。CDはそういうのが無くて、ひとつの楽しみをとられた感じ」とCDの登場について話した。また、長門氏は昨今のレコードブームについて「若い人がレコードに興味を持っているのが嬉しい」とコメント。
終盤、佐野はレコード視聴について「ただ『楽しかった』だけじゃなくて、海外のシンガーソングライターがどんなことを歌ってるのかが気になっていた。夢とか希望とかを感じる貴重な体験だから、どんなレコードを聴くかは僕にとってはすごい大事。クソみたいな音楽を聴いたらその日が台無し(笑)」と意味深な意見を述べたのが印象的だった。
イベントはその後も参加者からの質疑応答など大盛り上がり。時間をオーバーするほどだったが、あっという間の1時間弱となった。(取材・小池直也)


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