圧巻の歌唱力でリハながらも世界に引き込んだ大竹しのぶ

 第67回NHK紅白歌合戦が12月31日午後7時15分、本番を迎える。28日からおこなわれていたリハーサルは31日に終えた。このなかで圧巻だったのは、初出場の大竹しのぶだった。

 大竹が歌うのは、エディット・ピアフの「愛の讃歌」。大竹は29日と30日にリハーサルに臨んだ。ステージに登場した大竹は、関係者と談笑もしていたが、やや緊張した面持ちだった。しかし、いざ歌が始まるとホール全体を自身の世界へと惹き込んでいく。

 手を使い、腕を使い、身体全体で歌を表現していく。舞台経験も豊富で、声量を含め、歌声には迫力と説得力がある。しかし、それ以上に、女優が曲を歌う最大の魅力である、曲の主人公を演じる、いわばなりきる。大竹しのぶではなくなる瞬間があった。

 29日、30日とも目に涙の様なものがあり、ライトを浴びて頬には一筋の流線が浮かび上がっていた。29日は根津甚八さんの訃報もあったなかでの歌唱だった。

 この日、囲み取材応じた大竹はこの歌について「ピアフの気持ちを素直に伝えられれば。この曲を歌う時は自分の愛する人が亡くなった事を想像している。それは芝居ともリンクする部分。強く生きていかなければならないという想いで歌っている」と語った。

 その世界に入り込み過ぎて「その役として歌っているのか、自分として歌っているのか分からなくなる時もあります」と話していた。

 画、そして歌をもって人々の心に感動を与える、まさに圧巻の歌声。紅白のみどころの一つと言えよう。(取材・木村陽仁)

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