大盛況のうちに幕を閉じたグドモ主催フェス「八王子天狗祭2016」(撮影・佐藤広理)

大盛況のうちに幕を閉じたグドモ主催フェス「八王子天狗祭2016」(撮影・佐藤広理)

 グッドモーニングアメリカ主宰の音楽フェス『八王子天狗祭2016』が11月5日、エスフォルタアリーナ八王子で開催された。全17バンドが天狗ステージと白狐ステージの2ステージで渾身のパフォーマンスを展開。白狐ステージは1バンド目から入場規制がかかるほど、天狗ステージもかなり広いアリーナなのだが、多くの人でごった返していた。

 今回のフェスは、グッドモーニングアメリカの出身地である八王子で、地元市役所とタッグを組んでおこなわれたもの。「今までも八王子というものを背負ってやってきましたけど、ようやくもっと大きく返せるターンが来た」とグドモの金廣真悟が以前のインタビューで語っていた通り、沢山の想いが籠った熱量の高い1日となった。他の出演バンドも他人事では無く、応援する姿勢が強く見えたのも印象的だった。

 天狗ステージ、大トリであるグドモ直前のアクトは、同じ八王子出身だというTOTAL FAT。フロアは観客の凄まじい熱気に包まれていた。これを受けてグドモはどの様なライヴを展開するのかに注目が集まる。今回はその『八王子天狗祭』のフィナーレを飾った、グドモのライブ模様を以下にレポートする。

締めを飾るグドモ

撮影・佐藤広理

撮影・佐藤広理

 午前11時に来場していたファンもいただろう。現在の時刻は午後7時10分。グドモの登場を待ちわびるように、ライブ開始30分前だというのにフロア前方には多くのファンがスタンバイしている。開始時刻が迫るほどに人数が増し、驚いた事に天狗ステージの1階は沢山の人で後ろまでいっぱいになっていた。

 いよいよ締めを飾るグドモ、40分のステージが始まる。すると、上半身裸でグドモのベース・たなしんが登場。「最後まで残ってくれてほんとにありがとう。みんないい顔してたよー!でも、このイベントに対する気持ちは負けない!」と甲高く叫ぶ。「3、2、1、ファイヤー」といつもの掛け声で赤い照明とSEと共にグドモが登場。満員の会場が沸く。いきなり煽りまくる、たなしん。

 その後、対象的に「八王子! 最後までありがとう」と金廣がクールに告げて、「コピペ」のイントロが。真っ白の衣装を着た金廣をはじめ、各メンバーの表情からもこのフェスにかけた想いが伝わってくる。会場に集まった全員でこのフェスの幕が下ろすのだ、という感じだった。

撮影・佐藤広理

撮影・佐藤広理

 そのままテンションを上げていく。続くは「キャッチアンドリリース」だ。クラップが自然発生。雰囲気はまさにグドモにとってホームとしか言いようがなく、全員が応援の姿勢だ。サビでは合唱も起きていた。首を振ってノリノリのたなしん。4つ打ちのサビで1階のフロアはうねりまくっている。ギターソロではアピールするギター・渡邊幸一。そして効果的な静寂から最後のサビへ突入。テンションが下がらず、アウトロも熱を増す。全員でエンディングに着地。

 渡邊がMCを挟む。「言葉にならないくらい嬉しい。本当にありがとう!八王子で生まれて八王子で育ったバンドです。いつか八王子に恩返ししたかったし、フェスをやりたかった。今日それが叶いました。みんな本当にありがとう」。さらに、金廣が「まだまだ歌えますか。歌えないと困る」とまたもやクールに煽って「拝啓、ツラツストラ」を投下。

 テンションは落ちない。今日のセットリストには全員で歌えるシンプルなサビを持つ曲が多く組み込まれていると感じた。今日この時を想定してのことだろうか。金廣以外の楽器陣3人はお互いに見合いながら激しく、しかし緊密なアンサンブルを編んでいく。両手を上げてオーディエンスにアピールする金廣。会場全体が完全にシンクロして、言い様の無いエネルギーを発していた。

撮影・佐藤広理

撮影・佐藤広理

 そして、新曲である「ノーファング」。ちょっと抑制されたイントロからサビで爆発する楽曲だ。ステージ袖からは、今日の出演者や関係者が顔を出しているのが見える。全員がこのステージを他人事ではなく、見守っている姿に相当にぐっときた。赤い照明が鬼気迫るグドモのオーラを表している様だ。やはり、今日の彼らは背負っているものがちょっと大きすぎた。気が緩むポイントが無い。

 「八王子天狗祭を続けることで、ここの土地、出たバンド、音楽それ自体を好きになって戴けたら俺らは凄くハッピーです」とMCして、八王子の風景を歌った曲だという「いつもの帰り道」を歌う。少し遅めの3拍子系。金廣の裏声が切なく響いて、バンドがブレイクする。ノスタルジーを煽るような歌詞が胸を突く。貫かれたのだろうか、先ほどまで暴れまくっていた観客はぴくりとも動かなくなった。バンドが戻って来てサウンドが熱くなってもオーディエンスは見とれるばかり。曲間からギアを上げて、最終的に轟音まで達するバンド陣。だがフロアは完全に沈黙、彼らの心はグドモに制圧されてしまった様だ。気づけば、いつの間にかたなしんのサングラスが無くなっている。頭の振りすぎで吹き飛んだのだろうか。エンディングでギターをかき鳴らす金廣が印象的だった。

 「空ばかり見ていた」で最後はギアを上げる。たなしんのシャウトが響いた。オーディエンスは本能を取り戻したかのように活動を再開。1人、また1人と熱烈な態度をステージに示していく。この空間が東京の西の果て、八王子で繰り広げられているという異常事態を作り上げた犯人は、グッドモーニングアメリカ。彼らのせいで、フロア前方はもうもみくちゃだ。最後はもう歌詞もなく、叫びしかないサビのリフレイン。今、この場にはネガティブなものが一切無い。言葉に出来ないポジティブの塊が、この場の全員から放出されていたと思う。演奏が終わって、深々とお辞儀したバンドメンバー。大きな拍手が贈られた。

撮影・佐藤広理

撮影・佐藤広理

 当然アンコールが起きた。「アンコールありがとうございます!」再登場するグドモのメンバー達。ここで12月14日にニューアルバムの発売がコールされた。大きな歓声。

 そして、延長戦は「八王子。語り合おう!」という金廣がシャウトで始まった。楽曲はその言葉の通り「そして今宵は語り合おう」だった。大きな拍手で応答するオーディエンス。さらに手を振り、クラップで応援する。最後までグドモの背中を押す会場。憑りつかれた様に金廣はマイクにかじりついて、声を送り込み続ける。ブリッジを挟んでからのギターソロで混沌としてから、最後のサビへ。「語り合おう!ここで!」と強く叫んで、終わった。

 最後の曲は「未来へのスパイラル」。このフェスの第1回のエンディングに相応しいタイトではないだろうか。サビ前のキメでブレイクしてから、唐突なサビへ移行し、爆発する。突然シャウトしたりして感情を表す金廣。全員で歌う。アカペラのサビでエネルギーを溜めてから、最後の最後まで振り絞っていった。相当な達成感と、ちょっとした祭りの後の寂しさが会場を包んでいた。しかし、ここまで密度の濃い、たったの40分を体験できることはそうないだろう。(取材・小池直也)

セットリスト

グッドモーニングアメリカ

1.コピペ
2.キャッチアンドリリース
3.拝啓、ツラツストラ
4.ノーファング
5.いつもの帰り道
6.空ばかり見ていた
en1.そして今宵は語り合おう
en2.未来へのスパイラル

この記事の写真

記事タグ 


コメントを書く(ユーザー登録不要)