「3ピースピアノロックバンド」から「WEAVER」へ。アルバム『Night Rainbow』を転機としてサウンドを飛躍的に進化させたWEAVERが、両A面シングル「S.O.S. / Wake me up」を10月19日にリリースする。「S.O.S.」はアニメ『うどんの国の金色毛鞠』OPテーマである。「3ピースピアノロックバンド」というこれまでのバンドの印象から、エレクトロサウンドと80’sテイストを現代サウンドへ仕上げ、バンドの音楽性の進化が一つの結晶となったのがニューシングル「S.O.S.」と言える。今回は、全国ツアーでのライブパフォーマンスを経て「アルバムの曲を成長させた」と語るメンバーはどのようにして今作の「WEAVERサウンド」を構築していったのか、その詳細に迫った。
エレクトロサウンドと80’sテイストが“今の音”で盛り込まれた新作
――以前、ダンスミュージックや80’sテイストといったサウンドを取り入れていきたいとお話されていましたが、それが今回のニューシングル「S.O.S.」に?
杉本雄治 そうですね。以前、お話した時からそうでしたが、クラブミュージックやダンスミュージックに興味を持ち始めていまして。EDMが世界的に流行ったり、海外ではR&Bをバンドでやっていたりする事が今の時代ではたくさんあるのですが、日本の音楽シーンを見た場合に、そういった音楽をバンドでちゃんとやっているアーティストは少ないなという印象だったんです。WEAVERはバンド構成にギタリストが居ないんですけど、逆に、シンセを上手く使えるバンドだと思っていたんです。そこで今の日本の音楽シーンですごく新鮮な音楽を鳴らせるんじゃないかなという部分で興味を持ち始めて、80’sの音楽やクラブミュージックを聴いていました。
――今まで「3ピースピアノロックバンド」という印象があったのですが、それが今回の楽曲で「WEAVER」というバンドサウンドになったと感じました。
杉本雄治 もちろん、今もピアノを軸に考えている部分はあるのですが、やっぱり、WEAVERとしてもっと武器を増やしていきたい、引き出しを増やしていきたいという時にまず思いついたのが、「ギターではなくてシンセでもっと色々出来る事があるんじゃないか」という事だったんです。3人それぞれライブの中で色んな楽器をマルチにプレイ出来るようになっていたので、そうした中でシンセサウンドに惹かれていった事は自然の流れだったのではないかと思います。そこが今のWEAVERの一つの形になればいいなと思ってやっています。
――ライブでベースを弾きながら鍵盤を演奏したりと、これまでにはなかったマルチなプレイが見られました。
奥野翔太 ピアノが動けない、ドラムが動けない、メンバーの中で動ける人が少ない、となった時にボーカルが動けるというのはバンドとして大きなアドバンテージなので、その間に僕がシンセを弾いたりします。3人の中でそれぞれの楽器に縛られないスタンスは大事だと思うんです。僕達の鳴らしたい音楽は、ピアノトリオの音が鳴らしたいからこういう形のバンドになった訳ではないんです。やっぱり、頭の中で鳴っている音など、色んな音楽のアイディアはあるけど妥協は出来ないし、「それをどうやって再現していこう」と試行錯誤していった中で、それがようやく形になったり、ライブでそれぞれが違う楽器を演奏したりと、自分達の音を再現できるようになって、それが僕たちのアイディンティティになりつつあると思うんです。
ライブはあくまで3人で。「まだまだ3人で出来る事があるんじゃないか?」
――サポートミュージシャンを入れずに、あくまで3人でライブをやっていますね。
奥野翔太 「サポートを今回は入れてみようか?」という話はちょくちょく出たりしているんです。けれど、「まだまだ3人で出来る事があるんじゃないか」という事になりまして。それで今も3人で出来る事をとことん突き詰めよう、というのがバンドの方向になっています。
――「ピアノバンド」という括りのようなところからも抜けるような?
杉本雄治 その括りの中で良い事もたくさんありましたけど、やっぱり自分達の中から湧いてくる音だったり、ステージで見せたいものを考えた時に、それがちょっと後ろに引っ張られている部分もあったりしたので、デビューしてからその葛藤は凄くありました。あくまでも、中心には3人が居て、3人が鳴らしているという事に違和感が無いようにどう広げていくかという事を常に考えながらやっていたので、そこが今、ようやく良い方向に進めて幅を広げられている事が形に出来ているのではないかと思います。
――今回の両A面シングルは正にそういった感じの印象です。今作はメロディやサウンド、リズムや歌詞など、どの部分を起点として制作されたのでしょうか?
杉本雄治 「S.O.S.」も「Wake me up」もそうですが、この2曲はリズムから考える事が多かったです。もともと、J-POPや歌謡曲が凄く好きですし、そういう部分でいわゆるJ-POPやJ-ROCKっぽい8ビートになりがちだったので、そこをバンドとして崩したいなというのがあったんです。だからリズミックなシンセのリフだったり、そういう部分からドラムやベースの絡みというのを先に考えて作っていきました。
サウンド・アディショナルに「LENNO」の存在
――ビートのパターンはドラムの河邉さんが?
杉本雄治 デモを最初に作っていて、今回「S.O.S.」と「Wake me up」に関してはフィンランドの「LENNO」という若手のクラブミュージックのアーティストにアレンジを、アレンジという感じよりアディショナルプロデュースかな?
奥野翔太 アレンジは基本僕たちがやっているからね。音作りとかで色々かな。
杉本雄治 シンセの音色などそういった部分で、リズムの差し替えなどもけっこうしていますね。と言うのも、80’sの音を意識して僕がデモを作っていたので。
――シンセのアプローチが凄く素敵だと感じました。80’sを意識していても全然古くさくないという。
杉本雄治 それでも、もしかしたら僕のデモの段階だったら本当に80’sっぽかったりするかもしれないですけど(笑)。
――それはそれで興味深いデモテイクですね(笑)。
杉本雄治 やはり今鳴らす音として「80’sっぽさ」というちょっと懐かしい感じも含みつつ、現在のクラブミュージックテイストをちゃんと入れたかったので、LENNOを交える事によって“今の音”になればいいなと思って彼にお願いしたんです。
――LENNOと一緒にブラッシュアップしていってサウンドが出来ていったと。
杉本雄治 そうですね。その辺でハウスっぽい感じが追加されていったのかと思います。
――あのハウスっぽさは本格的なクラブミュージックのテイストが効いていると感じました。ドラムはどのようにレコーディングしたのですか?
河邉徹 実際にまず3人でスタジオに入って音を録っているんですけど、それをLENNOに送って生音を残しながら彼がプラスしてくれた音などをレイヤーしていったんです。
――生音を重ねているんですね。打ち込みのサウンドだけどヒューマンなグルーヴがありつつ、という空気感はレイヤーの手法によるものだったんですね。
杉本雄治 そうですね。混ぜているんです。
――キックの音などメチャクチャしっかりしています。
杉本雄治 ははは!「バチッ!」としてますよね。
――ピアノの音もかなりアタックが効いています。
杉本雄治 その辺はやっぱり、今のクラブで流れても負けない音色にしてもらいたいなというのがありまして。
――ピアノはどういった音源を?
杉本雄治 生でも弾いていますし、エレピ(エレクトロニックピアノ)をレイヤーしていったりなどですね。けっこうコンプレッサーを強めにかけてて硬い音にしたりしてます。
――クラブミュージックサウンドを固めた中でもメロディはしっかりしていますが、そのあたりの兼ね合いは難しいものでしょうか?サウンドとメロディ、どちらにも偏っていないバランスですが。
杉本雄治 もともと根っこにJ-POPや歌謡曲の味みたいなものが身に染み付いているので、そこは自然とサウンドにも含まれていきました。
――特にバランスを考えたり、サウンドとメロディを調整したりという事はなかったのですか?
杉本雄治 特になかったですね。
――レコーディングはスムーズに進みましたか?
杉本雄治 そうですね。だいたい固めてレコーディングでドン!といくので。そんなに大きく変更する事はないです。
――3人各々のこだわりがぶつかったり合ったりとかは?
杉本雄治 それは事前のスタジオの段階でバチバチと(笑)。レコーディングではそんなにないです。
――他のバンドなどに競争心や「負けねえぞ!」と思う事はありますか?
杉本雄治 イベントで一緒になったりした時とかは根っこに持っていると思いますよ(笑)。刺激を受ける部分はありますね。
――具体的にはどんなバンドが?
杉本雄治 今度、対バンで「雨のパレード」に出てもらったりするんですけど、洋楽的な事をやっていたり、それこそ海外のインディーR&Bっぽい事などもやっていたりするんです。「どういう風に作っているのかな」というのは凄く興味がありまして、意外と一人が全部を作っているのかなというイメージだったんですけど、バンドでスタジオに入ってセッションで作っているみたいで。そういう事などもすごく刺激をもらいます。
――そういった点からも曲のインスピレーションを受けたりしますか?
杉本雄治 ありますね。やっぱりいいライブをしているアーティストを観ると「ここでこういう曲を持って来られるようにしているんだな」とか「自分達にこんな風に盛り上がれる曲ないかな」とか。
――今年の初めに渡辺美里さんと共演されていましたが、それも刺激になりましたか?
杉本雄治 もちろん刺激になりましたね!
奥野翔太 素晴らしいアーティストでした。
杉本雄治 一人違うプレイヤーが入るだけでノリも変わりますしね。
WEAVERの転機となったアルバム『Night Rainbow』
――ツアーではアルバム『Night Rainbow』の曲を多く演奏されましたが、これからのWEAVERのサウンドの中で「この曲が主軸になるな」と感じた楽曲はありましたか?
杉本雄治 そうですね、けっこうあると思います。『Night Rainbow』の曲達はR&Bやダンスミュージックなどを意識し始めて作っている中に出来た曲がありまして。今回のシングルは現時点でそのイメージを形に出来たものなんです。“そこに辿り着くまでの曲”というのが『Night Rainbow』にはたくさんあるんです。例えば「KOKO」だったり。
――「KOKO」は正にその通りといった感じの楽曲です。
杉本雄治 そうですね、あれはEDM色が強いですし。あとは「さよならと言わないで」も今のシングルに繋がる為にとても重要な曲だったので、ライブの中でお客さんへの新しい乗り方の提示が出来たというところがあります。
――「KOKO」などは歌モノの曲というよりダンスミュージックの構成になっています。これからこういったアプローチを主軸に?
杉本雄治 主軸、うーん…。あくまでも自分達はポップでありたいなという事をイメージしていまして、その中でどういうライブがしたいんだろうとか、どういう音楽を作りたいんだろうと考えた時に、流行っているEDMの世界だったりとか、クラブの世界に通ずるものがあるなと感じ始めていたんです。
それは音という部分だけではなくて、音楽が創り出す空間の幸福感だったりとか、お客さんが自由に盛り上がる感じだったりとか、そういうものが僕達のバンドの音楽にもっとプラスされたらなと思ったんです。
それは今のバンドシーンとは違う所にいるのかもしれないですけど、それが“僕達にしか創れない楽しむ空間”が出来てくるのではないかと思い始めたんです。モッシュが起こるようなライブなどに憧れを抱いていた部分もあったんですけど、そこではなくて、「今の自分達だったら新しい空間を創れるんじゃないか」という覚悟を持たせてくれたのが「KOKO」という楽曲だったり、『Night Rainbow』というアルバムだったりするんです。WEAVERにとっては転機となったアルバムだと思います。
――確かに『Night Rainbow』はWEAVERの転換期の作品という印象がありました。ライブでのお客さんのノリにも変化はありましたか?
河邉徹 やっぱり音楽は自由に聴いてもらいたいなと思うんです。特に『Night Rainbow』では、皆で手を合わせて挙げて楽しむということだけではなく、身体を揺らして楽しめるような曲がどんどん僕達の中でも出来てきているから、「お客さんもそういう風に楽しんで」という僕達からもどんどん提案しているところなんです。
そういう今までとちょっと違う空気感というのがお客さん達の間でも広まっていると、僕達も演奏していて感じています。だから今回のシングルの「S.O.S.」と「Wake me up」も自由にお客さんに楽しんでもらえる曲だと僕達は思っているんです。今までのノリだけじゃなくて、自由に楽しんでもらえるライブの空気が出来ていくんじゃないかなと思います。
――楽曲、サウンドの変化でそれがお客さんに伝わったんですね。
河邉徹 はい。そうですね。
――奥野さんもベースをプレイしていてそういった点は感じますか?
奥野翔太 今までは「WEAVERのライブのスタンスはどのようなものであるべきなんだろう」という事を迷いながら来ていた部分はありました。けれど、同じアルバムを持ってホールとライブハウスという違った場でパフォーマンスする事によって、アルバムの曲をやる感触と実感が各々の場であったんです。
新しい曲達を成長させていく事によって、ライブでのWEAVERのあり方にどんどん新しい発見があったんです。2つのツアー『Draw a Night Rainbow』『Walk on the Night Rainbow』でWEAVERのステージングのあり方などを、自分たちのアルバムが自分たちに教えてくれて、道を拓いてくれたという実感がすごくありました。
――同じ曲を演奏してもホールとライブハウスでは全く別の空間に?
奥野翔太 そうですね。ホールでは、照明や演出を含めての世界観を創る事が出来る空間なので、魅せ方にもこだわった空間の創り方をするんです。一方で、ライブハウスではもっと近い場所で熱量を届けられる空間なので、例えば曲の間にソロがあったり、そういった事でプラスアルファが魅せられる事も出来るんです。そういう2つの違いを感じながらやってきました。
――今回のシングル2曲ではホールとライブハウスのどちらが合いますか?
奥野翔太 どちらもクラブミュージックの要素から引っ張ってこられたというところが大きいので、狭い空間で皆が寄り集まって身体を揺らしていくという、そういう意味ではライブハウスでも合うと思うんです。WEAVERは昔からドラマチックな世界観をイメージしながら曲を作っていっているので、そういう意味においてはホールで魅せたい部分もたくさんあります。
7パターン用意された新曲の歌詞
――歌詞の部分では、どういった世界観からでてきた言葉がありますか?
河邉徹 「S.O.S.」はアニメ『うどんの国の金色毛鞠』のオープニングテーマに選ばれて、それが決まってからメロディや歌詞を書いていったんです。最初はアニメの世界観に寄り添って歌詞を書いていたんですけど、それを皆に見せた時に「次のWEAVERを表現するにあたって少し柔らかいんじゃないか?」という話があったんです。そこからまた違うものにしていこうか、という話になったんですけど、「次のWEAVER」を示すものが何なのかというのが凄く難しかったんです。
そうしたなかで、メロディに対して7つくらい歌詞を書いて皆に見せて「どれが今のWEAVERで歌っていけば良いか」というのを話し合ったんです。その中で「S.O.S.」が『Night Rainbow』の次を表現していく今のWEAVERのメロディやサウンドに一番合っているんじゃないかという話になって、そこから「S.O.S.」を書いていったんです。
この「S.O.S.」というのは僕たちが困っている訳ではなくて、誰でも人に言えない悩みを抱えていて「そういうのを僕たちは救ってあげるよ」という事を歌に出来れば良いなと思ったんです。“言えないS.O.S.”を見つけてあげるという思いで歌詞を書きました。
――一度はアニメの世界観に寄り添った歌詞にしたのですね。
河邉徹 僕もこのアニメを全巻読んでその世界に浸ってから書いたんです。でも皆で話し合った時に「それは今のバンドのテンションと違うんじゃないか?」という話も出てきたりして。この歌詞は僕一人では書けなかったもので、皆で選んでいったからいつもと違うものが出来たんだと思います。今までそういう書き方はしてこなかったので、今回の曲は作詞家としてすごく刺激になる一曲でした。
――ダンスミュージックのサウンドに乗る歌詞という事を考えながら書いたのでしょうか?
河邉徹 サウンドの事も考えました。特に今回は英詞が多く出てくるんですけど、メロディの流れていく感じは英詞の方が有利だったりするので。最初僕一人ではこういうのは出てこなかったんですけど、皆に見せて「こういう方がいいんじゃない?」という話になったのが良かったですね。
――母音を気にしたりしますか?
河邉徹 それは気にしますね。書いていても気にするし、歌っていても気にする所だと思うので「歌ってみてどうなのかな?」という話をしたりとか。
――書き終わってからまた直したり?
河邉徹 そうですね、そういうブラッシュアップ作業はしますけど、やはり皆での話し合いというのは大事ですし、より良い作品を作る為なので何回、書き直しても大丈夫です。7種類くらい歌詞を書きましたし、「なんぼでも書くぜ!」というのはありますね。
――「Wake me up」の歌詞はどのように?
河邉徹 これは『Night Rainbow』を出した後くらいに出来た曲なんです。この「Wake me up」は、最初に聴いた時から飛び抜けて良い曲だなと思っていて、歌詞を書く時は「とにかく良いものにしよう」という意気込みがありました。杉本から「こんな歌詞がいい」という世界観をもらっていて、それをもとにストーリーを構築していきました。
――テーマは杉本さんから提示される事が多いのですか?
河邉徹 場合によりますね。この「Wake me up」についてはありました。この曲に出てくる主人公の男性は不誠実なところがあるんです。今付き合っている人がいるのに昔の人を思い出してしまって、どうしても今の人を愛せないという悪い男のようなところがあるんです。ファンの方々などは「誠実な男性像を歌う」という僕らに対するイメージがあるかもしれないんですけど、「くちづけDiamond」だったり、今作だったりとか、こういう“ちょっと悪い男”も歌っていけるアーティストになれたらいいんじゃないかなと思います。
――3曲目の「AMI」はアミさんという女性の歌ですか?
河邉徹 アミちゃんの歌ではないですね(笑)。この歌詞の内容は、今回シングルを出すにあたって曲自体は前からあったんですけど、歌詞は今回また新たに書き直したんです。皆でどんな歌詞にするかを話し合っていた中で、僕達28歳になる年なんですけど「再会」とかそういった恋愛がリアルになってくる年齢なんじゃないかと思いまして。再会して恋愛するにあたって、お互いパートナーがいたりする年齢じゃないですか?
――確かに。
河邉徹 そういうところが気になったりして、ピュアな所もあるけれど駆け引きが必要だったり、そういう世界観が今回書けたらなと思ってそういうストーリーを考えていったんです。タイトルの「AMI」は実在の女性ではなくて、フランスで「友達」という意味なんです。このストーリーを読んでいくと結局、物語の最後は告白しようと気になっているけど、実はお互いはただの友達だったとか、友達から始めようだったりとか。“友達”や“Friends”という言葉がこの歌に凄く合うんじゃないかなと思って「AMI」というタイトルを付けたんです。
――女性目線という角度もあるのでしょうか?
河邉徹 意識はしていませんでしたが、杉本からもこの歌詞に関しては「淡い所は残してほしい」という提案もあったので、柔らかいタッチが残っているのではないかと思います。
――確かにタッチも曲調も柔らかいですね。ピアノのフレーズも優しくて。
杉本雄治 こういうピアノの音が入ると暖かい感じにもなりますね。今回のシングルに入るとなると1、2曲目が凄くデジタル音なので、よりバンドっぽさというか、いつも以上に生っぽさがあってもいいんじゃないかという部分で、MIXでもアンビエンス感を強くしたりしましたね。
――音作りやアンサンブルはどのように舵を執っているのでしょうか?
奥野翔太 最初の杉本のデモの段階でかなり作り込まれていて、シンセの鳴り方などのイメージも作られているんです。それを僕らが聴いてそれに向けてアレンジをして、レコーディングもそっちに向けての音作りをしていくというスタンスですね。
――MIXも立ち会ったり?
杉本雄治 はい、もちろん。
――けっこう細かく意見を出しますか?
杉本雄治 基本的にこの曲に関しては、デビューの時からずっとやってくれているエンジニアさんにお願いしているんです。僕達が音的に凄く信頼している方なんです。ある程度最初にイメージは伝えますけど、そこでちゃんとコミュニケーションが取れているんです。それで僕達が欲しい音を作って下さるので、そこからは細かい所は少し直しつつも大きな方向性はやって頂けているんです。1、2曲目はLENNOが自分でMIXもやってくれました。
――洋楽テイストはLENNOさんのMIXによる要素もあったんですね。
杉本雄治 やっぱり日本人には作れない質感ですよね。日本人とやる程のコミュニケーションは取れないので“賭け”な部分はあったりしましたけど、それによって自分達では思いつかない音が生まれたりもしますし、そこはやはり面白いですね。
――LENNOさんとはサウンドメイク面でどういったやりとりをしましたか?
杉本雄治 この夏、彼が日本のイベントに出る為に来日していたので、そこで「こういう音にしたい」と直接、話し合いましたし、その後もメールなどで「80’sの質感を残しつつも今の音にしたいんだ」という事をちゃんと伝えまして。彼自身がハウスなどのダンスミュージックを作っているアーティストなので「君の音楽が好きだから、君の好きなような感じにしてくれたらいいよ!」という事も伝えて(笑)。
自主企画対バンツアー『Music Holiday vol.1 〜対バン始めました〜』
――対バンツアー『Music Holiday vol.1 』はどういった経緯で?
杉本雄治 対バンは2、3年くらい前からずっとやりたいなと思っていたんです。今の若手のバンドなどに比べると僕らは全然対バンとかをしていない方で、今自分達がやりたい方向が定まっていて自信を持ちながらライブをやれている中で、やはり外にもっと広げていきたいなというのがあります。「このアーティストのファンの方々だったら共鳴出来るんじゃないかな」というバンドに声をかけて今回このイベントを組みました。
――「〜vol.1 」という事は今後も継続しておこなうという事を見越して?
杉本雄治 続けたい! という意思も込めて(笑)。
――「意思表示込み」なんですね。継続して、共鳴するだろうバンドを誘い続けてという流れですね。
杉本雄治 そうですね。今のバンドシーンは特に対バンが増えていて「一緒に肩を組んで上がって行こうという」みたいなバンドが多いと思うんです。そこに対する憧れももちろんあったんですけど、今までずっと僕達がワンマンにこだわってやってきたこのスタンスというのも、ある意味今の音楽シーンにとって大事な事だったんじゃないかなと思っていまして。だから今の僕達の音楽の楽しみ方だったり、お客さんもWEAVERの独自の楽しみ方みたいなものをもっと外の人達と共有できたらいいなと思ったんです。だからこの対バンイベントはずっと続けて行きたいですね。
――基本的にはジャンルを問わず?
杉本雄治 やっぱり来て下さるお客さんが、どのバンドも楽しめるものにしたいと思うので。もしかしたら “異種格闘技” とかもあるかもしれないんですけど(笑)。今のところは、それは考えてはいないですね。
――共演するバンドから受ける刺激も期待しつつ?
杉本雄治 そうですね。やっぱり「Music Holiday = 音楽を楽しむ日」という事で、もしかしたら対バンではない時もあるかもしれないし、ゲストで僕達の演奏にボーカルが入るというスタイルもあるかもしれません。そこは “対バン” という事だけには決めつけずにやって行きたいと思ってます。
ジャケットの隠された暗号
――ニューシングルのジャケットデザインの意図やコンセプトをお聞きします。
奥野翔太 この赤という色で囲んだのは、CDを店頭に置かれた時やダウンロードサイトのサムネイルサイズになった時に目を引くものであるべきではないかな、という事で色の強さをとって赤を選んだんです。真ん中の輪っかは、通常盤の6個ある穴の内の一つという事なんですけど、通常盤の方はモールス信号で「S.O.S.」という意味なんです。
――モールス信号を模しているデザインなんですね?これは聞かなければ気付けませんでした…。
杉本雄治 そうですよね? このアイディアは一発で決まりました。
――「S.O.S.」はアニメ『うどんの国の金色毛鞠』のテーマソングタイアップですが、アニメはお好きですか?
河邉徹 素敵な作品ですよ。『うどんの国の金色毛鞠』。東京で働いていたけど地元の香川に主人公が戻って、この可愛らしいキャラ「ポコちゃん」と出会うんです。ポコちゃんは狸なんですけどね。
――ポコちゃん可愛いですね。
河邉徹 地元に戻ってまた新たに生活をするという事が大変だったり、色んな事に対する心も働かせなければいけないし、そういう悩みとかを僕達が「S.O.S.」で応援したり支えになったらいいなと思ってこの曲を書いたので、是非この原作も…!
――けっこう原作にのめり込みましたか?
河邉徹 けっこう入り込みましたね!涙する所もあったりして。今7巻まで出ていてまだ続いているんです。
――奥野さんは何か最近刺さったアニメなどは?
奥野翔太 僕は新海誠さんの作品が好きですね。『秒速5センチメートル』なんか凄く良かったですし。『君の名は。』もこないだ観に行きまして、予測できない作りで素晴らしかったです。
――杉本さんは?
杉本雄治 僕も漫画だったらやっぱり『うどんの国の金色毛鞠』ですし、『君の名は。』も最近観に行きました。ストーリーの作り方はさすが凄いという感じでしたね。
――アニメや漫画、映画から曲がインスパイアされる事も?
杉本雄治 ありますね。映像だったり時代だったり、やはりそこに音楽は密接なところにあると思うので。80’sを舞台にした映画『シングストリート』もその時代の映像の中にその音楽が流れると懐かしい気持ちにもなりますし、自分の若い時代を思い出させてくれたりするので、やっぱり音楽って凄く大事だなって思います。映像に寄り添える音楽というのはもっと色々作りたいなって思いますね。
――サウンドトラック的な作品を作るという意欲もありますか?
杉本雄治 あります、あります! 昔からWEAVERの楽曲の世界観は小説や短編映画というか、そういう要素が歌詞の中にもあったので、いつかは一つのコンセプトアルバムみたいなものもやりたいなと昔から思っています。
――是非聴いてみたいですね。期待しております。それでは最後にニューシングル「S.O.S. / Wake me up」への思いをお願いします。
杉本雄治 今のバンドシーンにはない音をこのシングルで一つ作れたと思います。これを持って「WEAVERにしか創れないライブの楽しみ方」というのをもっと追求していけたら良いなと思うし、それを聴いてくれた人と一緒につくっていきたいと思うので、是非ライブにも来てもらえたら嬉しいなと思います。
奥野翔太 「S.O.S.」はアニメ『うどんの国の金色毛鞠』のオープニングテーマソングという事で、WEAVERの事を全然知らない人にも聴いてもらえる機会がたくさんあると思います。純粋に曲を聴いて「いい曲だな」というところから入ってもらえて、「Wake me up」と「AMI」も聴いてもらえて、WEAVERにちょっとずつ入って来てもらえるような作品になったと思っているので、もっともっといい音楽を届けられるように、このシングルをふまえて更に次に進んで行きたいなと思います。
河邉徹 このシングルの曲達はどちらも間違いなく気持ちが上がっていく曲になっていると思います。「S.O.S.」はけっこうエレクトロな音が音源では入っていますけど、ライブでどういう風に生音で聴けるんだろうとか、そういう所も是非楽しみにしてライブを観に来て欲しいなと思います!
(取材・平吉賢治)
【作品情報】
「S.O.S. / Wake me up」
発売日:2016年10月19日
初回限定盤:CD+DVD AZZS-50 / 1800円(tax out)※EPサイズ紙ジャケ仕様
通常盤:CD AZCS-2055 / 1200円(tax out)※特典「うどんの国の金色毛鞠」描き下ろしイラストワイドキャップステッカー
CD収録曲:
M-1.S.O.S. [アニメ「うどんの国の金色毛鞠」OPテーマ]
M-2.Wake me up [フジテレビ系「魁!ミュージック」10月度エンディングテーマ]
M-3.AMI
DVD (初回限定盤のみ収録)
タイトル:WEAVER 11th Additional TOUR 2016「Walk on the Night Rainbow」at 松山W studio RED
▽収録曲
1.You
2.アーティスト
3.Hard to say I love you ~言い出せなくて~ (ver.R&B)
4.マーメイド
5.希望の灯
6.サマーチューン
7.Wake me up
▽通常盤特典
「うどんの国の金色毛鞠」描き下ろしイラストワイドキャップステッカー
▽予約特典
一般CDショップ特典:オリジナルB3ポスター
A!SMART特典:オリジナルA5クリアファイル
アニメ店舗特典:「うどんの国の金色毛鞠」B3ポスター
ライブ情報
WEAVER『Music Holiday vol.1 〜対バン始めました〜』
12月14日(水) [大阪] なんばHatch
OPEN 17:30 / START 18:30
ゲスト:BIGMAMA / LAMP IN TERREN
(問)キョードーインフォメーション 0570-200-888(全日10:00~18:00)
12月18日(日) [東京] 恵比寿The Garden Hall
OPEN 16:00 / START 17:00
ゲスト:androp / 雨のパレード
(問)ホットスタッフ・プロモーション03-5720-9999(平日12:00~18:00)
▽料金
4,500円(税込/スタンディング [大阪公演のみ2F指定あり])
※入場時に別途ドリンク代が必要となる。
※1人4枚まで