ラウドで個性豊かな4バンドによる競演でかつてないほどの盛り上がりをみせた『“ACROSS THE FUTURE 2016”』(撮影・cazrowAoki)

ラウドで個性豊かな4バンドによる競演でかつてないほどの盛り上がりをみせた『“ACROSS THE FUTURE 2016”』(撮影・cazrowAoki)

 世界で活躍するメタルコアバンドのCrossfaith(クロスフェイス)が9月6日・8日・9日・10日と各地で、国内では2年ぶりとなる対バンツアー『“ACROSS THE FUTURE 2016”』をおこなった。出演者に名を揃えたのは、北海道からラウドロックバンドのNOISEMAKER、米メタルコアバンドのBeartooth、英国からはEnter Shikari、そして、主催バンドのCrossfaith。ツアーは東名阪の3カ所でおこなわれ、10日は追加公演「エクストラショー」として赤坂BLITZで開催。各地、個性豊かな4バンドによるラウドサウンドの猛攻に、とてつもないエネルギーで満たされていた。今回はそのうち、6日のSHIBUYA O-EASTでの初日公演を以下にレポートする。

個性豊かな3バンドが登場

ライブのもよう(撮影・cazrowAoki)

ライブのもよう(撮影・cazrowAoki)

 トップバッターは5月にフルアルバム『ROAR』をリリースした、北海道出身の4人組ロックバンドNOISEMAKER。ラウドロックというジャンルに捉われない、ヘヴィーかつ開放感あふれる「Butterfly」などを披露。『ROAR』は声という意味を持ち、まさにオーディエンスの声とともに作り上げたステージを見せた。この日はラストに未発表の新曲も初披露。今までのサウンドとは違う、新境地とも言える楽曲で会場を盛り上げた。

 2番手は米国からの刺客、元ATTACK ATTACK!のボーカルCaleb Shomo(カレブ・ショモ)卒いるメタルコアバンドBEARTOOTH(ベアトゥース)が登場。その名のごとく熊の鋭い牙のようなエッジの効いたソリッドサウンドと、迫力のあるCaleb Shomoのスクリーミングで会場は早くも熱気をまとっていた。ラストにはCrossfaithのボーカルKoieが登場し、圧巻のツインボーカルを披露した。

 3番手は英国からEnter Shikari(エンター・シカリ)が登場。オルタナメタルサウンドにエレクトロニカの要素をふんだんに取り入れた音楽性で、NOISEMAKERやBEARTOOTHとはまた違った世界観で魅せた。静と動を巧みに使い分け、メリハリのあるライブ展開にオーディエンスのボルテージも上がっていった。今回出演の3バンドをボクシングで例えると、NOISEMAKERとBEARTOOTHがインファイターで、Enter Shikariはアウトボクサータイプのバンド。オルタナティブなサウンドメイクでオーディエンスを楽しませた。

Crossfaithアドレナリン全開のステージ

ライブのもよう(撮影・cazrowAoki)

ライブのもよう(撮影・cazrowAoki)

 3バンドの熱いステージが終了し、ステージの転換がおこなわれた。ブルーのライトがサーチライトのように客席を照らす。BGMが流れる中、オーディエンスも日本では中々観ることのできないCrossfaithのライブを今か今かと、試合前の格闘家のような面持ちで待ちわびていた。ライブの始まりを告げるカウントダウンが始まり、ゼロになったと同時にTeru(Vision、Pg)Tatsuya(Dr)、Hiroki(Ba)、Kazuki(Gt)がステージに登場。会場からは大歓声が巻き起こった。その雄叫びとも言えるような歓声の中、Crossfaithのロゴが入ったフラッグを持ちKoieがステージに登場した。

 オープニングナンバーは「We Are the Future」。Koieのスクリームボイスが会場に響き渡る。Tatsuyaのドラムセットが震撼し、Hirokiの重低音が会場を包み込み、Kazukiのエッジの利いたヘビーサウンドがオーディエンスのテンションを捲し上げていく。既に2時間以上暴れてきたとは思えないテンションでモッシュやダイブをおこなうオーディエンス。2曲目の「Monolith」で更にヒートアップ。重戦車が迫り来るような荒々しいラウドなサウンドとともに、所狭しと動き回るメンバーたち。Teruもシンセサイザーの上に乗り、オーディエンスを煽る。

 Koieが「このイベントに国境も人種も洋楽、邦楽も関係ない」と告げ、始まったのはキラーチューン「Devil’s Party」。ダンサブルかつヘビー、そして、メロディアスなナンバーでフロアの一体感は更に高まっていった。Teruの奏でるシンセサウンドが攻撃的なバンドサウンドにEDM要素を加える。アドレナリン全開のステージングでオーディエンスも歓声をあげ応戦した。

Caleb Shomoと「Ghost In The Mirror」をコラボ

KoieとCaleb Shomo(カレブ・ショモ)(撮影・cazrowAoki)

KoieとCaleb Shomo(カレブ・ショモ)(撮影・cazrowAoki)

 ここでBEARTOOTHのボーカリストであるCaleb Shomoが登場し、アルバム『XENO』でコラボした「Ghost In The Mirror」を披露。KoieとCaleb Shomoのスクリームによって声の壁がステージ前方に立ち尽くしているかのような迫力に、オーディエンスは更にエキサイティング。

 Koieが「ついて来れんのかEAST!!」と叫び、7月にリリースされたばかりの新曲、BPM190のヘビーチューン「Rx Overdrive」を初披露。頭を振り乱しながら叩くTatsuyaの高速ツーバスが会場を揺らす。曲のタイトル通り、ドーピングを打たれたかのような発狂的なサウンドに、オーディエンスも振り切れんばかりに盛り上がった。

 ここでKoieが「俺らがかっこいいと思ったバンドを連れてきました。俺らがお前らみたいなキッズだった頃、いろんなバンドを見てノックアウトされてきた。だから、俺たちはお前たちをノックアウトしたいんです」とイベントの主旨を説明。続いて「Wildfire」へ突入した。

 エキセントリックなシンセが体に浸透していく中毒性のあるサウンドと、KoieとTeruの歌の掛け合いが繰り広げられる。そして、Koieが「バンダナやタオル持っているやつ、何も持っていないやつ、全員挙げてくれ!」と指示を出すと、タオルやバンダナを掲げた腕でフロアが埋め尽くされた。オーディエンスとのコールアンドレスポンスとタオル回しによって、さらに会場の温度はみるみる上昇していった。Tatsuyaも時折スタンディングで激しくドラムを叩きつけていく。

 Koieが「真ん中、半分開けろ」とオーディエンスに指示を出すと、モーセの十戒の海のようにフロアの中心から人波が開けていった。そして、「『"ACROSS THE FUTURE 2016"』はもっと大きな会場でも出来た。だけど、この規模にしたのには理由がある。ケガだけしないように好きなだけ暴れてくれ!」と話し、Koieの合図とともに「Countdown To Hell」のイントロが始まると、闘争本能を剥き出しにしたオーディエンスがフロアの中心に向かって走り出し、激しいモッシュをおこなった。まさに地獄の鬼たちが暴れているような圧巻の光景が広がった。

みんなの力があってここに立つことが出来ている

出演バンドとオーディエンスとで記念撮影(撮影・cazrowAoki)

出演バンドとオーディエンスとで記念撮影(撮影・cazrowAoki)

 Koieは「今日は思い出せるライブの中で一番楽しいです。ラインナップが決まった瞬間からワクワクしていました。今まで色んなバンドを観て、衝撃を受けて『こんなんじゃあかん』と繰り返してきた。『"ACROSS THE FUTURE 2016"』初日、もう今の時点で大成功だと思っています。俺たちは曲を作ってライブをしてきたけど、それだけじゃこのステージには立てていなかったと思います。すべては俺たちの音楽を聴いてくれているお前らもそうだし、俺たちをサポートしてくれている裏方、対バンしてきた仲間、みんなの力があって、ここに立つことが出来ています」と自分たちと関わる人たちに感謝を述べると、会場から大歓声が巻き起こった。

 Koieは「そんなお前らと歌えるような、このパワーを一緒に共有、深い所まで共感できるような曲をライブでプレイしたかった。最後の曲、俺たちと一緒に歌ってくれませんか?」と投げかけ、ライブ初披露となるシングル『New Age Warriors』に収録されている「Revolution」へ。バンドから放たれるエネルギーに呼応するかのように、オーディエンスも一体感のある歌声で応えた。ライブは加速度を上げたまま、本編を終了した。

 まだまだ騒ごうぜ、と言わんばかりにフロアからはすかさず、アンコールを求めるCrossfaithコールが巻き起こり、その声に呼び戻されるようにTeruがステージに再び登場。ダンサブルなインスト楽曲でオーディエンスを煽ると、HirokiとKazukiがゴムボートを持ってステージに登場した。そのゴムボートを人がひしめきあうフロアに投げ入れると、HirokiとKazukiもそのボートにダイブ。ボート越しのクラウドサーフィングを楽しんだ。

 アンコール1曲目は「Omen」を披露。フロア全体がモッシュやサークルで暴れまくる。その勢いのまま、ラストは「Leviathan」へ突入。クラウドサーフィングによって次々とステージ前方へオーディエンスが流れていく。そのままステージに登ったオーディエンスがフロアにダイブしていた。メタルコアというジャンルに捉われない、壮大なスケールの楽曲を、全身全霊で放ちライブの幕は閉じた。

 個性豊かな4バンドによっておこなわれたツアー初日は、これからのロックシーンを暗示させる内容であった。バンドとオーディエンスのせめぎ合いによって生まれるパワーには計り知れないものがあった。各々のアイデンティティを持ったバンドたちと、オーディエンスとともに作り上げていく『"ACROSS THE FUTURE" 』。今後どのようなイベントに進化していくのか楽しみだ。(取材・村上順一)

セットリスト

Crossfaith『"ACROSS THE FUTURE 2016"』

9月6日 SHIBUYA O-EAST

01.We Are the Future
02.Monolith
03.Devil’s Party
04.Ghost In The Mirror
05.Rx Overdrive
06.Wildfire
07.Countdown To Hell
08.Revolution

Encore

EN1.Omen
EN2.Leviathan

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