なぜ彼らの楽曲は受け入れられるのか。そこにはある法則があった

なぜ彼らの楽曲は受け入れられるのか。そこにはある法則があった

 今年10周年を迎えたGReeeeNが27日に、通算28枚目となるシングル「beautiful days」をリリースした。表題曲は、日本テレビ系ドラマ『家を売るオンナ』(北川景子主演、水曜よる10時)の主題歌で、GReeeeNらしい壮大なラブバラードになっている。GReeeeNと言えば、「愛唄」(07年)や「キセキ」(08年)などのヒット曲で知られる。それらの楽曲に代表されるように、これまでの彼らの楽曲はどこか90年代の音楽を感じさせる馴染みのあるJ-POPらしいサウンドが特長的だった。しかし、今作ではUKテイストが感じられる。それを起点に探っていくと、彼らの楽曲のある法則が浮かび上がってくる。ザ・ビートルズやオアシスなどにみるシンプルなコード進行とキャッチーなメロディが見え隠れするのだ。なぜ彼らの楽曲はヒットしたのかということの解明にも繋がりそうだ。

音楽そのものの力の強さ

 GReeeNは、HIDE、navi、92、SOHによる男性4人組ボーカルグループで、2007年に「道」でメジャーデビューした。顔を隠し、公にも姿を見せない、歯科医を務めながら音楽活動をしている特異なアーティストだ。2008年5月28日にリリースしたTBS系ドラマ『ROOKIES』の主題歌の「キセキ」はオリコンチャート1位、50万枚以上のセールスを記録した。

 音で勝負する――。音楽家なら本望と言えるものだが、現代の業界事情からすれば“売れる”ということについては困難を極める。メディアに出る、ライブをする、様々な要素が音以外の部分で成り立っている。しかし、それらの常識を覆しながら活動してきたのがGReeeeNであり、そうした環境下でも楽曲をヒットさせることが出来たのは、ドラマのヒットによるところも大きいが、音楽そのものの力の強さと言っていいだろう。

 ビッグヒットとなった「愛唄」や「キセキ」など、その曲がテレビやラジオから流れてくると耳が音に傾く。サビでの力強さが際立ち耳に残るキャッチーさ。今回リリースされたシングル「beautiful days」もその例に漏れず、バラードだがそのストレートで力強い歌はGReeeeNらしさが溢れ出ている。

 どこか90年代を匂わせるなじみのあるJ-POPらしいメロディ。その上にサビの歌詞、<君が好きで 今も逢いたくて>と、ストレートなメッセージが聴くものの心を打つ。そして、コード(和音)進行も複雑なものではなく割とシンプルなのも特長だ。

世界に共通するシンプルなコード進行

北川景子主演ドラマ『家を売るオンナ』の主題歌「beautiful days」

北川景子主演ドラマ『家を売るオンナ』の主題歌「beautiful days」

 今回の「beautiful days」はUKテイストが見え隠れする楽曲となっている。UKミュージックは、クラシックやケルト音楽をルーツにアメリカの音楽を取り入れ発展してきた。イギリスの気候のせいかどこか陰影のあるサウンドが特徴だ。USAサウンドのような明るさはあまりないと言えよう。代表的なバンドに、ザ・ビートルズ(The Beatles)やザ・ローリング・ストーンズ(The Rolling Stones)、クイーン(QUEEN)、オアシス(Oasis)、エレクトリック・ライト・オーケストラ(Electric Light Orchestra)、レディオヘッド(Radiohead)などがいる。

 これらのバンドは世界から漏れることなく日本でもヒットしている。クイーンに至っては、世界で最初にブレイクしたのは日本だったとも言われている。そして、彼らは、日本の音楽界に大きな影響を与えた。しかし、なぜUKサウンドは日本人の我々に響くのか。それはイギリスと日本の共通点にある。同じ島国で海洋民族であるということが一番大きいだろう。音楽にもそれは表れていて、様々な要素を消化し独自のものを生産していくスタイルは共感を覚える。逆に戦後、日本に大きな影響を与えてきたアメリカの文化は真逆ともとれ、それに惹かれることもあるだろう。

 海外のアーティストもコード進行はシンプル思考なものも多く、そこを考慮した上で歌声とのバランスを取りながらアレンジしていくわけだが、GReeeeNの楽曲はその楽曲とアレンジのセンスが絶妙なところにある。コード進行自体は主張せずメロディをしっかりとサポートする縁の下の力持ちといったところ。それによって歌のメロディがよりひき立つ。

 例えば、多くの人々に愛されている、ザ・ビートルズの「LET IT BE」やオアシスの「Don't Look Back In Anger」などをみると、シンプルなコード進行に対してキャッチーなメロディがのっている。色々探ってみると世界的にヒットしている楽曲のコード進行は、シンプルなものが多い。世界的にみると、ボブ・ディラン(Bob Dylan)の「Knockin' on Heaven's Door」や、映画『アルマゲドン』の主題歌にもなった、エアロスミス「I Don’t Want To Miss A Thing」もシンプルなコード進行で展開していく。

法則の上に映える4人の混声

 GReeeeNも先述した「愛唄」や「キセキ」もその法則に当てはまる。そこに、低音パート、高音パートと4人の声質の違いをうまく配置し、情感あふれる楽曲になっているのだろう。その4人の中でのセクションが混声され、新たなケミストリーが生まれる。ペアの場合なら6通りのバリエーションで聴かせることができる。これも楽曲を彩る大きなアドバンテージになっている。

 彼らのまっすぐな歌詞と歌声が、ダイレクトに響いてくる。歌詞だけ読むと結構、照れくさいフレーズだが、それをしっかりと発信できるのは凄いことだ。とあるパンクロックバンドの大御所がこう語っていた。

 「一つのことをまどろっこしく言うのは、そういうテクニックもあるのかもしれないけど、でもなぜ、みんな真正面から言いたくないのかというと、きっと恥ずかしいんだよね。これを言ったらダセェと言われるんじゃないかな」

 改めて歌詞に着目してみると、海外アーティストの歌詞(和訳)も恥ずかしくなるほどストレートなものが多い。特にロックバンドは顕著にその傾向がある。

日本人ウケする起承転結

 そして、アレンジもしっかりと起承転結があり日本人好みだ。Aメロでピアノと歌、Bメロから他の楽器も入りながらもマイナーコードで影を演出。サビで高い音域の歌とストリングスなどの広がりのあるアレンジで、ドラマティックに展開する王道のアレンジで安心感と爽快感を与えてくれる。

 新曲では、そこにしっかりストリングスをフィーチャーした間奏が入る。UKロックバンドのクイーンを彷彿とさせる雰囲気でしっかりと“転”を演出している。

 このような、UKテイストがGReeeeNのルーツに根付いているのだろう。今年3月11日に発売されたノンフィクション作家・小松成美さんの書籍「それってキセキ」の中でも、GReeeeNのプロデュースを務めるJINが、TM NETWORKやB'zをコピーしていたと書かれていることから、深く考えずとも自然とその要素が体に染みついているのかもしれない。彼らもザ・ビートルズなどのUKサウンドが根幹にあるのだから。(文・村上順一)

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