写真はBrian the Sunの大阪ファイナル公演

写真はBrian the Sunの大阪ファイナル公演

 6月1日にメジャーデビューした、4人組ロックバンドのBrian the Sunが今月10日に、地元・大阪の梅田CLUB QUATTROで、全国ツアー『TOUR 2016「HEROES」』のファイナル公演をおこなった。メジャー1stシングル「HEROES」を引っ提げて、6月2日の兵庫・神戸VARIT.から、自身最大規模となる全国18カ所をめぐってきた。地元ステージで彼らは「4人揃ってこのステージに立てるか非常に不安だった。無事に立つことができました!」と喜びを語った。小媒体では去る6月18日に東京・渋谷CLUB QUATTROでおこなわれた東京公演を取材。メジャーデビューという節目で、バンドが新たに迎えた進路の序章であり、まさしく今後の彼らの動向を占う試金石ともいえるこのツアーの東京公演の模様をレポートする。

彼らが演奏することが、新たな刺激を生み出す

 定刻が訪れ、会場が暗転した後に会場に流れたのは、繊細なドラムのリズムと、ギターのアルペジオ、そして素朴な女性の歌声だった。そこにあふれていたのは、観衆がライブを楽しむべく「やってやるぜ!」とばかりに意気込むような緊迫した空気ではなく、まるでファンタジーの序章を示す情景のようだった。そして拍手とともに4人がステージに現れると、その情景はフェードアウト。「お待たせ、Brian the Sunです。よろしくお願いします」と森が一言、素朴な挨拶を告げ、2015年にリリースされたミニアルバム『シュレディンガーの猫』からのナンバー「同じ夢」で、彼らのステージはスタートした。

 ゆったりとした8ビートに乗ったギターのハーモニーは、Aメロでははっきりとした進行感を見せず、なんとなくブルージーで浮遊感のある雰囲気を曲調に与える。そして一気に、サビの最もキャッチーな部分へと観衆の気持ちを引き込んで、会場での彼らの存在感を絶対的なものへと変えていった。その空気は続く「グラストライフル」から、「彼女はゼロフィリア」、そしてアクティブな「アレカラ」と、リズムが活発に、そして違う形に変化していく中でどんどん色彩感を増し、ステージでの彼らの存在感をより強調していった。

 「最高やな…OK!もう今日が最高な日であることは、約束されたわ!」徐々に熱気を帯び始めた会場の空気を感じ取り、森が言葉を吐いた。さらに観衆の気持ちを引き寄せようと、一転して雰囲気を変えたナンバー「Noro」へ。その怪しいリズムに、聴く者は体を「揺らされている」ような感覚になる。白山と田中が成すシャープなリズムセクションの上に、エコーの効いた森のボーカルと、小川のブルージーなギターが絡み、ロックならではのけだるさ、危なさのような空気を会場に満たしていく。何の変哲もない、「ロックらしい」常套句的な雰囲気の数々が、彼らが演奏することで新鮮な刺激となり、聴く者の耳に浸透していった。

様々な面を一つにした一曲

写真はBrian the Sunの大阪ファイナル公演

写真はBrian the Sunの大阪ファイナル公演

 徐々に大きな盛り上がりを見せてきた中盤では「Suitability」「チョコレートブラウニー」のような疾走感のあるナンバーで、フロアの観衆の動きをより大きくしていく。さらにこの日は、マーチのリズムから始まる、少し哀愁味を加えたバラードの新曲も披露された。速く、そして遅く、リズムを様々に変え、ハーモニーにも多彩な変化を凝らしながら展開していく彼らのナンバー、そしてこのライブ。それは奔放な動きをしているようにも見える一方で、まったく不自然さが感じられなかった。それ故に観衆は、その成り行きをすんなりと受け入れていたようだった。

 さらにこの時、ステージ中央にピアノが置かれ、バラード「はちみつ」へとつなげられた。森はこのナンバーを東日本大震災の際に作った曲であることを明かし「当時は自粛とか、逆に『それでもやるぞ』と言ってライブをやる奴とか、いろんな反応が見られました。そんななか僕は、自分にとって一番リアルなことをするべきだと思って、この曲を書きました」と、大惨事の中でこの曲を書く決意をした経緯を明かした。

 そのいきさつに込められた思いも影響してのことか、ここまで彼らの様々な一面、様々な色を見せていたそれぞれの曲が、静かに響くピアノの音色でつづられたこの曲によりつながり、意味を成していくようにも見えた。さらに続いた「Laika and Hz and contrast,」のハーモニーは、この日のステージの道筋をさらにはっきりと表したようにも見えた。

改めて感じさせられる「ロックバンド」であるという本質

 後半を迎え、彼らのプレーにはもう迷いが感じられなかった。怒涛のように「パワーポップ」から疾走を始め、会場を熱い空気で満たしていく。時に見せる浮遊感のあるハーモニーだけでなく、熱いスピリッツを込めたアクティブなパワー感など、ここで見えた様々な要素がパズルのピースのように集まり、改めて彼らが「ロックバンド」であることを示しているようにも見えた。そして途中、改めて彼らの新たな道のりでの躍進を誓うかのごとく、メジャーデビュー曲「HEROES」を披露しながら、ラストは「都会の泉」を披露しステージを降りた。

 さらにアンコールに応え再びステージに登場した4人。実はこのアンコールのセットは、誰もが事前に知らされていない、この時初めて決められたセットだった。森が観衆にも「どんな曲を聴きたい?」と訪ねるなど、アットホームな空気が流れる。そして最後にありったけの力を込めるように「藍色に。」「ロックンロールポップギャング」「君の声」という3曲を披露し、この日を締めくくった。多くのツアーとライブイベントで培ったその器は十分ともいえるBrian the Sun。果たして今後彼らは、その中身をどう充実させていき、バンドとしての姿を見せていくだろうか?その真価を問われるのは、まさしくこれからだ。(取材・桂 伸也)

セットリスト

Brian the Sun『TOUR 2016「HEROES」』
2016.06.18 東京・渋谷CLUB QUATTRO
01. 同じ夢
02. グラストライフル
03. 彼女はゼロフィリア
04. アレカラ
05. Noro
06. Suitability
07. チョコレートブラウニー
08. (新曲)
09. シュレディンガーの猫
10. はちみつ
11. Laika and Hz and contrast,
12. パワーポップ
13. Sunday
14. 神曲
15. 早鐘
16. Sister
17. HEROES
18. 白い部屋
19. 都会の泉
encore

E01. 藍色に。
E02. ロックンロールポップギャング
E03. 君の声

 ◆Brian the Sunとは 森良太(ボーカル、ギター)、白山治輝(ベース)、小川真司(ギター)、田中駿汰(ドラムス)の4人からなるロックバンド。森と白山を中心に、大阪で2007年に結成し、10代のアーティストのみによっておこなわれるロックフェス『閃光ライオット』に出演、準グランプリを獲得し頭角を現す。その後はリリースを続けながらツアーや数々のロックフェスに出演、着実にその活動範囲を広げ、2016年1月にメジャーデビューを発表した。

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