臆病なだけ
――HAVE A “GOOD”NIGHT盤には「夏の大三角」という新曲が収録されています。これは千野さんが作詞・作曲されていますが、制作はどのように進んで行ったのでしょうか。
これは、“詞先”で作っていきました。自分で作る時は自分でメロディを変えられるじゃないですか。歌詞のためにメロディを書いたり、メロディのために歌詞を書いたりすることが自分で出来るので。“詞先”で(伊丸岡)亮太がメロディを作る時とはまた違うんですよね。自分で作る時はまた特殊なんですよ。
――メンバーが書いてきたメロディに対しては、変更はせず、そのまま詞をハメていくのでしょうか。
そうですね。そこは作曲者のこだわりがあると思うので、そのままハメていきます。でも、どうしても他の表現が思いつかなかったり、文字数がオーバーしてしまう時は、相談しますけど。
――「夏の大三角」は、ひらがなが多めの表現になっていますよね。
これはもう完全に、幼い頃に書いた短冊の願い事を、そのまま書いたという感じですね。曲として言葉を聴くのとはまた違う、読んだ時に視覚的にも楽しめるんじゃないかなと思いますね。
――この歌詞はどのような心境の時に作られたのでしょうか。
僕らの楽曲には「これぞ夏!」という感じの曲がないんですよ。今回、夏にリリースするということが決まって、夏ならではのイベントを題材にして、チャレンジしてみようと思ったんです。花火大会やお祭りと色々あったんですけど、その中で、たまたまチョイスしたのが七夕だったんです。そうしたら奇跡的にリリース日が7月6日で、七夕に近かったんですよ。
――リリース日が決まっていた上で書いたものだと思ってました。
発売日を意識することもなく作業に明け暮れていたので、嬉しかったですね。
――タイトルに、夏の大三角形と「形」まで入れなかったのには意図があるのでしょうか?
これは、単純に言葉のリズムですね。「夏の大三角」の方が僕的には言葉の収まりが良かったんですよ。
――アレンジはどのように進めていったのですか。
基本的に僕らは作曲者が中心になってアレンジを進めていきます。なので、この曲は僕が主体でおこなっていきました。
――千野さんも伊丸岡さんのようにコンピュータを使って打ち込んでいくのですか。
いや、僕の場合はスタジオにみんなで入って口頭で伝えていきます。
――そのやり方だとけっこう時間が掛かるイメージがありますが、慣れた感じですか。
時間は掛かりますね(笑)。でも、僕が作る曲は割とシンプルなアレンジの曲が多いので、特に今回の曲のようなミディアムバラードだと、そこまで時間が掛からないものもありますね。
――長年一緒にやってきているメンバーなので、割と“ツーカー”な部分もあるんでしょね。
どうでしょうかね(笑)。スタジオに入る前に自分の頭の中で、アレンジはけっこう決めているので、結局はそれを一つずつ試していく感じですね。
――千野さんの場合は弾き語りで曲をメンバーに聴かせるのですか。
この曲は、ワンコーラスを弾き語りで録音してメンバーに送ってます。
――「夏の大三角」のようなミディアムバラード曲をレコーディングする時は、灯りを落としたりとか雰囲気作りはしますか。
曲調に限らず、いつも暗くしますね。なんとなく明るすぎると嫌なんですよね。歌う時って“どれだけ力が抜けるか”というのが重要だったりするんですよ。割と僕は余計な力が入ってしまうタイプなので、リラックスできる環境を作りたいですね。出来るときはですけどね。スタジオによっては明るいままの時もあります。
――中には人がいるとダメな方もいますよね。出来るならエンジニアさんと自分だけにして欲しいとかありますか。そこまでは求めていませんか?
そこまで言う勇気がない(笑)。
――したい願望はあるんですね(笑)。
ありますね(笑)。実はメンバーが全員いるという状況もちょっと苦手ですね。というのも、ずっと待たせてるので罪悪感が出てきてしまうんですよ。ディレクションは(伊丸岡)亮太にしてもらっているので、亮太はいてもらわなきゃ困るんですけどね。でも作品を作るということにおいて、その場に居るということが意味があるわけじゃないですか。なので本当にいつもメンバーには「声出てなくてごめんね。あと何回か歌ってもいいかな」という気持ちになってしまうんですよ。
――千野さんの優しさが出てますね。
いや、臆病なだけだと思います。プレッシャーに弱いんですよ(笑)。
――Anniversary盤には「ONE SHOT Live Tracks -夕映~いらない~ハッピーエンド-」というライブテイク風の再録曲が収録されていますが、このアイデアはどこから出てきたのでしょうか。
ずっと好きでいてくれたファンの人たちと、まだ僕らを知らない人たちにも聴いてもらいたいという思いから、この「ONE SHOT」を制作しました。新曲だけでなく過去の作品からも聴いてもらいたかったというのが、大きな理由です。CD音源をただメドレーにしても良いのかもしれないですけど、それだと今まで好きでいてくれた人たちには微妙だなと思ったので、再録したんです。聴いたことがない方達にとっては、過去作に興味を持ってもらえる良い機会になるかなと思ったんですよ。
――ライブテイク風スタジオ録音というのは?
実は一発録りで3曲録ってるんですよ。ライブ感も出ていると思うので、ライブにも興味を持ってもらえたら嬉しいですね。
――全部通して1発録りですか!?
全部通しました(笑)。すごい大変でしたね。全部通して何回かはやったんですけど、歌うのがけっこう辛いんですよね。3曲続けて歌うと、どれが良いのかわからなくなってしまうんですよね。どれを選ばれても大丈夫というぐらい、僕はどのテイクも全力で歌いました。選定基準を楽器陣がミスっていないとか歌以外のところで決めて頂いたという感じです。
――一発録りだとライブ感が出ますね。ノイズとかも敢えて処理してないんですよね。
普通なら消すノイズもそのままですね。あと、クリック(ガイドのメトロノーム)も使ってないんですよ。通常のライブでは高橋(Dr)はクリックを聞くことが多いんですけど、今回は全部なしでいきました。なので、いつもよりテンポが速いんですよ。
――いつも以上にライブ感が出たと(笑)。
クリックがないとどうしても人間、走ってしまうものですよね。だけど、そのおかげで駆け抜けた感は出ましたね(笑)。
(取材・村上順一)
◆GOOD ON THE REELプロフィール 2005年結成。試聴機をきっかけにその名が全国へと口コミで広まっていった。結成当初から続けてきた主催ライヴは2016年10月9日で50回目を迎える。(『GOOD ON THE REEL presents 「HAVE A “GOOD”NIGHT vol.50」ANNIVERSARY SPECIAL at日比谷野外音楽堂』)。歌詞はボーカルである千野隆尋が手がけ、作曲は千野、ギターの伊丸岡亮太、同じくギターの岡崎広平が担っている。
「雨天決行」90sec ver.