観客と合わさる景色の向こう

弾き語りを披露した菅原卓郎(撮影、橋本 塁・SOUND SHOOTER)

弾き語りを披露した菅原卓郎(撮影・橋本 塁=SOUND SHOOTER)

 メンバーが再びステージに戻ると菅原は「天候のせいか、滝の腕の調子が悪くて」と先ほどの経緯を説明。低気圧のせいか、滝の左腕の調子が思わしくない模様。滝は両手を合わせ謝罪しながら、再びステージに戻ってきた。メンバーが再び戻ると、バンドは、菅原が「『ベルセルク』が大好きで、まさかオープニング曲やれるなんて思ってなかった」と話すテレビアニメ『ベルセルク』のOP曲「インフェルノ」を演奏。続く「火祭り」では、中村がベースを振り回しながらフィニッシュ。クールダウンした会場を再び熱く盛り立てる。更に、かみじょうが、ツーバスの連打から見事なドラミングを披露。最後はドラムスティックを頭上に掲げ歓声に応えた。

 雲に隠れていた太陽も沈み、すっかり闇に包まれた会場。赤い照明に照らされた夜のステージは「Black Market Blues」で最高潮の盛り上がりを見せた。菅原は「サイリウムがいい感じになってます」とこの日観客に配られた4色のサイリウムバンドが光る様子を見て微笑んだ。そして「この曲は俺が聴いたこの曲の景色にみんなを連れて行けるんじゃないかな、と思って歌詞を書きました」と歌詞に込めた想いを語り「スタンドバイミー」を演奏。“スタンドバイミー まだ消えない 日曜日の虹の向こう♪”と歌う菅原のその想いを、観客はしっかり受け止めているように見えた。

日比谷野外大音楽堂を照らすサイリウム(撮影、橋本 塁・SOUND SHOOTER)

日比谷野外大音楽堂を照らすサイリウム(撮影・橋本 塁=SOUND SHOOTER)

 菅原は「今日は来てくれてありがとうございます。俺は、音楽は魂の栄養なんじゃないかと思っていて。ここにいるメンバーにも色々ありまして…まあ、俺にも色々あるんだけれど。割と満たされた環境で生きてきたんですけど、何か満たされないものがあるんですよ。その真っ黒なブラックホールの正体を知るために音楽をやってるんじゃないかと思います」と自身が音楽を続けてきた意義を語り「太陽が欲しいだけ」を披露。

 滝の踊るようなギターソロから始まる「ハートに火をつけて」では、菅原が「行けるか日比谷ー!」と観客を煽り、それに応えるように観客は歓声を上げる。続く「反逆のマーチ」では、かみじょうの打ち出すリズムと中村の腹に響くベースラインが、滝のソリッドなギターソロと菅原の妖艶で伸びのある歌声と合わさる。音のカオスは美しい旋律となり、暗い夜空に昇天する。

梅雨の夜空を照らす新しい光

全身全霊の演奏を見せた滝 善充(撮影、橋本 塁・SOUND SHOOTER)

全身全霊の演奏を見せた滝 善充(撮影・橋本 塁=SOUND SHOOTER)

 菅原は「次で最後です!」と叫び、「新しい光」を演奏。最後は、観客が“新しい光の中に君を連れて行くのさ♪”のフレーズを大合唱。本編を終えても、鳴り止まない拍手と歓声に、中村と菅原はステージの隅々まで歩み寄り手を振り応えた。「9mm Parabellum Bulletでした、また会いましょう!」と深々とお辞儀をして菅原はステージを去った。

 観客の鳴り止まない拍手は、暗闇に包まれた会場に響き続けた。再びステージに明かりが灯り、メンバーが登場すると、歓声が上がった。菅原は「ありがとう、僕がまたお会いしましょうって言ったのはアンコールのことじゃなくて(笑)。また、別の会場で必ずお会いしましょう、約束しましたよ、いいですね」と最後に1曲だけ演奏。満身創痍の滝は、最後までその素振りを見せない圧巻のプレイ。中村はベースアンプの上に上がり、ジャンプ。派手なパフォーマンスを見せた。

 この日は雨の予報にも関わらず、最後まで雨粒は落ちてこなかった。9mmには、梅雨前線を吹き飛ばす“太陽が欲しいだけ”高気圧を全国に届けてくれることを期待したい。(取材・松尾模糊)

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