札幌で結成された4人組ロックバンドのNOISEMAKERが25日に、メジャーデビュー後初のフルアルバムとなる『ROAR』をリリースした。昨年は『ROCK IN JAPAN FES』や『SUMMER SONIC』、さらに『OZZFEST JAPAN』といった大型フェスへの参戦、今年の1月19日にはバンドの新しい側面を打ち出したシングル「Butterfly」をリリース、様々なアーティストと2マン競演したイベント『TOWER RECORDS presents TWINTOWER』、そして、4月には自身の夢の一つでもある自主企画フェス『CIRCLE OF US Fes 2016』を札幌で開催した。バンドのルーティンとも言えるライブ活動を経て見えてきたものが“声”という意味を持つ『ROAR』、“みんなと一緒に歌う”ということ。楽曲が全て出揃った時に、全曲がそのテーマを持っていたという。10曲全てが一貫したコンセプトを持ったアルバムの背景について4人に話を聞いた。
自分たちの強みが“みんなと一緒に歌う”ということ
――ニューアルバム『ROAR』が完成しましたが、このタイトルを付けた経緯はどのようなものだったのですか。
AG 昨年フェスとかを経験してきた中で、自分たちの強みが“みんなと一緒に歌う”ということが見えたんです。そこをもっとあからさまに出していきたいというところからですね。1曲1曲作っていった中で、全曲がその要素を持っていたというのもあって、声という意味を持つROARをタイトルにしました。
――タイトルはアルバム制作のどの段階で出てきたんですか。
AG 曲が全部出揃ってからですね。今回このアルバムで一番伝えたいことの共通点を探して付けましたね。たくさんの人の声が一緒に歌って響き渡っていくという思いを込めて、ライブでもみんなが歌っているところ聴いて、NOISEMAKERを知らない人にも響き渡ればいいなという想いがあります。
――制作はいつ頃から始まったのですか。
YU-KI 去年の夏ぐらいからですね。
――アルバム収録曲で一番最初に出来た曲は覚えてますか。
HIDE 「Butterfly」ですね。
――『ROAR』はバラエティに富んだ作品になったと思うんですけど、「Butterfly」がきっかけで意図的に様々な曲を作ろうと思ったのですか。
HIDE 特にそうしようと意識したわけではなくて自然とそういう方向になりました。似たような曲は作らないようにとは意識はしましたけど。「Butterfly」とか「Home」のような映像が浮かぶ曲を書きたいなと思って制作が始まりましたね。昔に比べたらちょっとアンビエントな感じの楽曲が多くなったなと思います。
――空間の広がり方が前作の『NEO』よりもあると感じました。今までよりも更にスケール感がありますよね。
AG 今、僕たちが鳴らしたいと思ったものがこの『ROAR』に詰め込まれてます。
――今回、苦労した楽曲はありましたか。
AG 8曲目の「Black and Red Knees」ですね。イントロのリフがレコーディング当日のギリギリまで決まってなかった(笑)
HIDE いやもうネタ切れでしたね。乾いた雑巾でした。この曲は10回以上書き直してるんですよ。
――でもネタ切れとは思えないリフでしたけど、土壇場で降りてきて良かったですね。
HIDE やっぱりそこは手を抜きたくないので、頑張りましたね。
AG 乾いた雑巾でしたけど、最後に絞ったものが水ではない何かが出ましたね。
UTA ドピュっとね。
YU-KI 血だね、たぶん(笑)。
――切羽詰まった時に思わぬものが出る時がありますからね。
HIDE 答えに辿りつかない時もあると思うんですけど、今回は辿り着きましたね。
――詞でも難産はありましたか。
AG 「Black and Red Knees」が最後に出来たんですけど、やっぱりこれが一番苦労したかも。
マスタリングを同時に行いながらミックスした
――レコーディングは北海道でおこなったのですか。
AG 北海道ですね。
――現在は東京に住んでいるのに、北海道でレコーディングおこなった理由は地元の方がやりやすいからでしょうか。
HIDE 地元でやりやすいというか、機材の関係ですね。東京のスタジオもスゴいスタジオなんですけど、自分に合っていない機材だったんです。エンジニアさんも昔からやってもらっている人だから、指定したマイクとか機材をパッと用意してくれるんです。
――スタジオ機材と言うとマイクプリアンプ(編注:マイクの電気信号を増幅する機械)とかコンプレッサー(編注:音を圧縮して音量バランスを整える機械)?
HIDE そうですね。今はパソコンのプラグインでも出来るんですけど、そこはやはり外部のアウトボードで処理したい、マスタリングでも真空管のものを使ったりしたいというのもあったんですよ。一般の人にはあまり気づかれないことなのかもしれないですけどね。
――でも真空管のアウトボードはけっこう仕上がりは変わりますよね。
HIDE やっぱり比べてしまうと違うんですよね。そういう違いをわかっているのに、やらないのはどうかなと思ってしまうんですよ。
――北海道のスタジオはHIT STUDIOですよね。
AG あそこの社長が機材マニアなんですよ。
――インディーズ時代そこでレコーディングしていた時の映像があるけど、UTAさんはキン肉マンのフィギュアで遊んでたりいつも楽しそうだよね。
UTA キン肉マンは、僕大好きなんですよ。
――あれは自前なんですか。
UTA 自前です。お守りみたいなものですね(笑)。
――マスタリングは東京のスタジオでしょうか。
HIDE いや、北海道ですね。実はめちゃくちゃワガママ言ってマスタリングを同時に行いながらミックスして行ったんですよ。(編注:通常はミックスダウンが終わってからマスタリング作業となる)
――そういう風にしたのはなぜですか。
HIDE 並行して作業した方が最終的な音像が見えやすかったからですね。スタジオやエンジニアさんを分けてしまうと、ミックスが終わって後から「ああしておけばよかったな」とか思いたくなかったんですよ。レコーディングエンジニアとミックスエンジニアはいつも一緒にやっているので意思の疎通が出来ているんですけど、マスタリングエンジニアは基本的には違うスタジオなので、また一から説明するのもストレスだなと思ってしまって。別のエッセンスが入って良くなることも勿論あるけど、今回はこのやり方にしました。でもマスタリングソフト(の負荷)が重いから途中でパソコンが止まっちゃうことも結構ありましたね。
――信頼の置けるエンジニアさんなんですね。
YU-KI そういえば、初めてHIT STUDIOでミックスした時、ドラムのキックの音でHIDEがヘッドフォンしながら「違う、これも違う」とやりとりしてるのを端から見てて、「これエンジニアさん怒るんじゃないのかな」と思ったこともありましたけど。エンジニアさんは温厚な方なので良かったけど。
AG 終いには自分のパソコン持ってきてEQ(イコライザー)とかプラグインの設定を見せてこれ使ってくださいって(笑)。
――それはこだわりですね。ドラムはUTAさんの意見は反映されない?
UTA 僕はそこは任せているので、仕上がりが良ければ文句はないですね。
――ドラムと言えば、1曲目の「Flag」に入っているマーチングドラム的なスネアは面白いですね。
UTA あれはスネアドラムを個々に用意して一緒に録ったんですよ。
――一緒にということは複数人で録ったということですか。
UTA 知り合いのドラマーを何人か呼んで、一斉にレコーディングしたんですよ。音源は事前に渡してはいたんですけど、当日の10分ぐらいで練習しなければいけなかったんで、意外と大変でしたね。
HIDE 個人的に一番怖かったのは、人を集めておいて「この音じゃない」と思ってやめるとなったらどうしようと思いましたね。
――「Flag」を聴いた時に、あのマーチングドラムは個人的に効果的だと思いました。MVでも女性が叩いているのも良いですね。そういえば今回「Flag」と「Home」のMVはNOISEMAKER初の野外ロケですよね。
UTA あ〜そう言われてみれば外で撮ったのは初めてかも。
――UTAさんは「Home」のMVでも一人はしゃいでましたよね(笑)。
UTA あれは和気あいあいと歩いて欲しいという指示があったんですよ。まあ、和気あいあいと飛んでみるかと飛んでみたら、そこがバッチリ使われていたというね(笑)。後から見て俺結構浮いてるなと思いましたね。
――MVのロケ地はどこですか。
YU-KI 「Flag」は栃木の佐野のあたりですね。「Home」は千葉の銚子で、アー写も銚子ですね。
――MVを撮った時のエピソードは?
AG 「Home」のイメージは夕日を絶対に撮りたいと思っていたんですよ。でも霧がすごくて夕日が出る感じじゃなくて。
YU-KI 最初は晴れていたんですよ。でも途中から深い霧が出てきて。
AG それでみんなゲンナリしてしまって(笑)監督はみんながゲンナリしているのを見て、どうやってテンション上げようか考えていたみたいで。でも最後のサビを撮るときに、晴れだしたんですよ。
――これは奇跡ですね。最後のサビは注目ポイントですね。
AG 夕日を無事に撮れて、テンション上がりましたね。
YU-KI あれは本当に良かったね。