“GOOD ON THE REEL”ワールド

(写真・Viola Kam)

(写真・Viola Kam)

 続いて、岡崎のタッピングギターから始まる「スケール美術館」から「アイスランド」を演奏。伊丸岡のテレキャスターの金属的に響くカッティングから始まるこの曲は、途中で岡崎の激しく歪ませたギターのノイズが流れ込み、強烈なアクセントが加わる。立て続けに「REM」。高橋のドラムソロから岡崎のダンスブルなリフが光るストレートなロックナンバー。岡崎と伊丸岡の2本ギターの掛け合いソロも魅力的だ。観客は、サビで手を挙げながらジャンプする。掻き鳴らされたギターノイズの余韻の中、千野が「あなたたちはただの景色なんかじゃないよ、あなたたち一人一人の存在を証明します!」と叫び「存在証明書」になだれ込む。観客もすっかり彼らの世界に染まった会場で踊る。

 千野は「ありがとうございます、すごい人だねー。こんなに来てくれてソールドアウトですよ こんな5人の為に来てくれるんでしょ。なんてこっただよ」と改めて、この日来てくれた観客に感謝。千野は「今日は特別に“先生”からお言葉を」と振り、ファンからMCが“校長先生”みたいで“先生”と呼ばれる高橋が挨拶。「わたくしが紛れもなく、GOOD ON THE REELのリーダーです。いやあ、凄い人ですよ、本当にありがとうございます!」と言うと会場は拍手に包まれた。高橋は「メンバーの誰か助けて下さい、もう喋ることがありません」と早くもメンバーに助けを求めると、会場は笑いの渦に。伊丸岡が「食べ物の話とかあるでしょ?」と振り、高橋は「京都でりょうちゃん(伊丸岡)と、ラーメン食ったけどうまかったね」とツアーを振り返った。

 バンドは「シャボン玉」からPOPな岡崎のギターリフと牧歌的なコーラスが心地よい「rainbeat」を演奏。サビでは千野のハイトーンなヴォーカルが伸び伸びと響く。ステージが赤い照明で照らされ、リズム隊のタイトなリズムと伊丸岡の金属的な冷たいギターサウンドがぶつかり合い爆発的なエネルギーが会場に広がる。岡崎のリバーブのかかったギターリフと千野のハイトーンヴォイスが乗り、会場はまるで壮大な宇宙空間へと変貌したようだ。

 ステージは暗転。千野が「雨の日に傘を忘れた帰り道に思い出したんです、長靴を履いて水溜りに思い切りジャンプした小さい頃の自分。あの頃にはもう戻れないんだけども、あの頃を過ごしたのは確かに自分です。だったら、まだ走り出せるんじゃないかな、と思うんです。雨の中で、笑いながらペトリが呼んでる」と語り、『ペトリが呼んでる』のラストトラックである「ペトリコール」を演奏。観客は静かにその完成度の高い音の世界に浸った。続いて伊丸岡の幻想的なディレイのかかった柔らかなギターサウンドが響く中、千野が「今日はありがとうございました、次が最後の曲です。あなたの人生はかけがいのないもの。頑張り過ぎなくてもいいし、変われなくてもいいからまた会いに来て下さい」とファンに語りかけると、深海のような深い藍色の映像をバックに「Mr.week」を優しく歌い上げ、ステージから去った。

 しかし、観客の手拍子が鳴り止まず、やがて手拍子は様々に転調し名残惜しさを表し続けた。ステージに再び照明が灯りメンバーが戻ると歓声が会場に溢れた。宇佐美は「いいですね、やっぱりワンマンというのは。これを15回もやってきたのは随分幸せですね」と話し、続けて「朗報があります。ワンマン、次決まってまして。10月9日に日比谷野音です。皆さんは良い子にして待っていて下さい」とGOOD ON THE REEL、初野外ワンマンがおこなわれることを発表。観客から歓声が上がった。

ハッピーエンド

(写真・Viola Kam)

(写真・Viola Kam)

 バンドは「ノースポール」から千野が「さあ、赤と青を上手に回す時間です」と煽り「シャワー」を演奏。サビで千野が“赤と青をうまく回して”と歌うと同時に、満員の観客が一斉に手を挙げて回す圧巻の光景が広がった。千野も「今までで一番手の数が多い!」と驚いた。最後は「ハッピーエンド」。高橋のバスドラに合わせて会場が手拍子で一体化する。最後はツアーファイナルをまさに“ハッピーエンド”に締めた。

 2カ月、15か所というバンド史上最大規模の全国ツアーを経て、やはり最後は、とても完成度の高い“GOOD ON THE REEL”ワールドを見せてくれた彼ら。そして、10月9日には日比谷野外音楽堂で、初の野外ワンマンも発表された。日比谷野音では更に進化した“GOOD ON THE REEL”ワールドを見せてくれるのか、注目である。(取材・松尾模糊)

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