これで嫌いなら傷つく 赤い公園、自信満ちた「純情ランドセル」
INTERVIEW

新種のガールズバンド「赤い公園」が自信をもって送り出す作品とは


記者:平吉賢治

撮影:

掲載:16年03月22日

読了時間:約22分

佐藤千明の意外なバックボーン

佐藤千明(Vo)

佐藤千明(Vo)

――メンバーはいろんなジャンルを聴くとの事でしたが、佐藤さんはどういった音楽を?

佐藤千明 聴いている音楽といったら、ディズニー音楽ですかね。

津野米咲 素晴らしい。

――想像していなかった答えでした。意外です。そこから赤い公園の作品の着想が生まれたりとか、そういった事を考えている訳では?

佐藤千明 考えている訳ではないんですけど、ディズニー音楽はセリフみたいに歌ってみたりとか、すごい声色で「言葉が入りやすい」というか、そこはけっこう最近意識している感じで、勉強してる感じで聴いてますね。

――そうなんですね。

佐藤千明 前は全然何も考えずに「ファンタジー最っ高!」みたいな感じで聴いてたんですけど。

津野米咲 ウケる!(笑)

佐藤千明 全てがおおげさなんですよね。ミュージカルっぽくて。私は“おおげさ”というのがすごい苦手なので、おおげさに歌ってみたりだとか「ここ、ちょっとおおげさにしゃくってみよう」とか「おおげさに頭文字いってみよう」とか、そういうのですね。今作の歌録りの時でも、けっこう「ここはもうちょっとおおげさに歌った方が良いな」というのが仮歌の段階で見つかりまして。

――ちなみに具体的にはどの楽曲で、とかありましたら。

佐藤千明 「黄色い花」はけっこう意識したかもしれないですね。

――「黄色い花」という楽曲は、優しくもインパクトがある、素晴らしい楽曲でしたが。

佐藤千明 けっこう“ドラマチック”にするのが苦手な方なんですけど、「黄色い花」は人間を歌っている歌、すごく人間味がある曲だと思っていまして。歌詞で歌っている事とか、誰かに対して歌っているメッセージ性がすごくあると思いますし。前作、前々作とかでは、けっこう津野が描いてきた“絵”を誰かに説明するみたいな心持ちで歌っていたところがあって、共感とかと言うよりかは“イメージ”を大事にして歌ってきたんですけど、歌詞が変わってきたりとかもあって「気持ちを込める」というのが、今までに自分で“意識していなかったチャンネル”といいますか、それが今作では必要とされているなと思いまして。前作までも、もちろん気持ちは込めているんですけど、それを感じる歌というのを今まで歌ってこなかったと言うか。曲にもよるんですけど、淡々と能々としていたと言いますか。今作ではそういったものを意識したというのもありましたね。自分の歌とは正反対の所に、ディズニー音楽を歌っている方々は行っているので、「ここをこうやっておおげさに歌うといいのか!」みたいな事は意識して聴いています。

――ディズニー音楽からそういう要素を得ていると。

佐藤千明 要素を得ている。ちょっと独特かもしれないんですけど(笑)

楽曲「黄色い花」制作秘話

――頭のコーラスはみなさんで?

津野米咲 頭の部分はメンバー4人で歌っています。最後は、亀田師匠(亀田誠治)、井上うにエンジニア、師匠のマネージャーさん、私たちのマネージャー、そしてSAKANAMON。という皆で歌ってます。

――豪快でゴージャスなストリングスは亀田誠治さんが?

津野米咲 はい、ストリングスアレンジは亀田さんに全部やって頂いて。もともとの、私がつくったデモにはストリングスは入ってなかったんです。

――ギターカッティングが小気味良く鳴っている曲調は、もともとのデモの段階から?

津野米咲 そうですね。それはもともと。

――「黄色い花」のキラキラしたアレンジ面は、亀田誠治さんによるものなんでしょうか。

津野米咲 この曲を渡した時に、一応確認をされました。「米咲ちゃん、シンガロングしていい?」って。

――曲はギターで作るのですか?

津野米咲 この曲は鍵盤で作りました。曲を作る時はベースラインとメロディで作る時もありますし、この曲に関してはギターはもう“カッティング”なので。

――ギターカッティングがすごく華やかな“モータウンサウンド”と感じました。

津野米咲 ああ、そういう風になるといいなという想いも込めて。「ベースも大事やで」って想いも込めて亀田さんに渡しました。だから音はそんなに増え過ぎてないと思うんですよね。鍵盤は一本のままだし。

――そこは一貫してそう感じます「無駄なトラックがない」という。

津野米咲 「作られた感」を避けたかったんです。“厚化粧”は避けたいと。

――そこは赤い公園のサウンドの中核にあるものだと思います。

津野米咲 大丈夫ですか?すっぴんで。

――はい。良いと思います。先程の「ベースとメロディだけでも作曲する」という所ですが、やはりクラシックなどの知識も豊富なのでしょうか。

津野米咲 たまにやるんですけど、ベースとメロディでコードが成り立っている状態というのが凄く好きで。3声だとしたら、メロディがそれと真ん中を、ベースもそれと真ん中になる。上手くいけば2本のパートで済む話なんですよね。

――バッハの頃からある作曲法みたいですね。

津野米咲 そういうのも凄く好きで、それにギターがただチャチャを入れるみたいな。ベースが真ん中よりの事をやっている時は、自分がルート音を弾いていてもどうにかなる訳だし。

――佐藤さんは歌っていて、伴奏の絡みなどにそういった妙技を感じたりしますか?

佐藤千明 そうですね、赤い公園の曲って、1番のAメロでやった事を2番のAメロではやらなかったりとか。

――楽曲「Canvas」は正にそういう感じがありますね。

津野米咲 意識はしていないんですけど、サビの前後のAメロではそれぞれみせたい景色が違いますよね?心持ち的には。イントロとアウトロ、やっている事は同じなんですけど聴こえ方が違う。その間に一曲分の歌詞とメロディがある訳ですから。一曲分のドラマを経て、もう一度聴くアレンジは違うと思いますし。「同じものでも“聴こえ”が違う」というパターン。「言ってる事によって」というのもあり得ると思うんです。1番Aメロで言っている事と、サビを経て2番Aメロで言っている事はきっと違う。同じ事を言っているとしたら「演奏を変える」。違う事を言っているのなら、あえて同じ演奏でもいいかもしれない。歌詞とメロディとその場所が「今、曲の何合目なのか」みたいな。何を経てそこに辿り着いた時の景色なのか、という。

――そこでは、景色としても同じはなかったりすれば、例えばベースラインを変えてみたり?

津野米咲 そうですね、ベース1音、ギターのトップの音一つ違うだけでだいぶ違いますし。最後のサビだけコード違うとかけっこういろんな曲でありますね。

――アウトロの、最後のおいしいフレーズもそこのたった1回しか使ってないですね。

津野米咲 あ、確かに!でも、充分かなと(笑)

――こう、普通の発想だったら、「このフレーズおいしいから、この部分でも使おう」となりそうなものですが。

津野米咲 いやあ、何かネタ明かしみたいで先の方でも使うのもったいなくないですか?最後にとっておきたいんです。

――だからこそ、「何度でも聴きたくなる」という感触を聴き手として得られる訳ですね。“最後のセクションの一回で充分”という、結果、あるべき所にストレートに辿り着く感性って凄いです。

津野米咲 ありがとうございます。

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