恋文か短歌か、コアラモード.歌詞に色濃く出た男女の解釈
INTERVIEW

恋文か短歌か、コアラモード.歌詞に色濃く出た男女の解釈


記者:木村武雄

撮影:

掲載:16年03月04日

読了時間:約23分

歌詞に男女の個性

あんにゅ

あんにゅ

――前作「Dan Dan Dan」とその前の「七色シンフォニー」は2人の共作で交互に歌詞を作っていったと聞きました。例えばAメロが小幡さんなら、Bメロはあんにゅさんのように。歌詞を読んでいるとそれぞれの個性が出ていて面白く感じました。ユニット結成後から少しずつ寄り添ってきているけれど、それでも個性は出ているのだなと思いました。

あんにゅ 歌詞の書き方も今回は全然違うなと。

――歌詞に女性と男性の特徴がそれぞれ出ていて面白いなと。

あんにゅ 小幡さんが女性目線の歌詞を書く時は私に意見を求めるし、私が男性の歌詞を書く時は小幡さんに聞いたりしますし、お互いに参考になるし、歌詞に関しては助け合えますね。

――今作ではコアラモード.の“原色”がより際立ったと感じます。常田真太郎(スキマスイッチ)さんを迎え入れた前作「Dan Dan Dan」で変わった事はありますか。

小幡康裕 ものすごくありますね。歌詞で壁にぶち当たったのが「Dan Dan Dan」でもありまして、中学生くらいの女の子が主人公の歌なんですけど、僕は20歳を超えた男なので、あんにゅに意見を求めないと「リアルな中学生の女の子気持ち」というのはわからない事が多いんです。でも、お互いに譲れない部分もあったりしたんです。そこを取りまとめてくれたのが常田さんでして。2人で意見が割れた時は俯瞰(ふかん)で見て調整して下さったので、作る上でのまとめ方を教わりましたね。

――それはメロディでも?

小幡康裕 歌詞ですね。「Dan Dan Dan」のメロディはもともと出来ていたので、後から歌詞を考えるのにとても時間がかかったんです。

――「Dan Dan Dan」の歌詞はどの部分で意見が割れたのでしょうか。

あんにゅ 曲を作る時は主人公を置く事が多いんですが、「主人公が違う」という所から。

小幡康裕 あんにゅは中学生くらいの主人公で、僕は高校生の主人公を考えていたり。

あんにゅ 「初恋っていつだろう」というのを考えると、もう少し幼いんじゃないかとか。そういう話し合いをしている時間がけっこう長いので、歌詞はギリギリまでかかりましたね。

――歌詞にある「南風恋するココロを吹き抜けて」という箇所はどちらが?

あんにゅ これは混ざってますね。

小幡康裕 その行だけでも3〜4回は変わっています。

――「七色シンフォニー」では「僕は 巡り巡り巡り巡り巡ってく」という風に韻を踏んでいる部分がありますが、これは?

あんにゅ これは私です。

――ここの部分は「南風恋するココロを吹き抜けて」と似ている感じがしますね。

あんにゅ ここのメロディを考えているのは私なので、最終的に歌詞は変わったとしても、韻の踏みやすいメロディとかそういう所で私が出ているのかもしれないですね。

――それを経験を得て今回の作品があります。今回はそれぞれが曲を作っているわけですが、変わった点や色濃く出た点は?

小幡康裕 アレンジ面は凄く変わりました。2人組で楽曲アレンジ担当という、立場的には僕と近いものがある常田さんの仕事ぶりというか、スタジオでの態度というか、ドシっとした(笑)。声も大きいし、みんなのテンション上げてるんだなとか、そういう細かな立ち振る舞いも含めて凄く勉強になりました。

 ストリングスのアレンジとかも前作では一緒にやらせて頂いたのですが、ノウハウもいっぱい教えてもらいまして。今回1人でストリングスアレンジをするのが初めてなんです。「ここ、常田さんだったらこう言うかな?」とか考えながら作りましたね。

――「さくらぼっち」のイントロからの流れは前作の空気感を継承しているなと感じましたが。

小幡康裕 抑揚感や、楽曲の描き方は「Dan Dan Dan」で、先輩に教えてもらった事がすごく出ていると思いますね。

――小幡さんが最も意識している面はどこでしょうか。アレンジ面、作曲面などで言うと?

小幡康裕 歌詞ですね。やはり歌詞を引き立たせるメロディ、アレンジでなければいけないなという事は思いますし、特に常田さんがそういう考えを伝えて下さったので。「さくらぼっち」にしても、サビに到達してポジティブに盛り上がるような、歌詞とリンクしたアレンジというか、気持ちの流れはすごく意識しましたね。

――あんにゅさんは「Dan Dan Dan」を経験された後、どうでしょうか。

あんにゅ 普段は小幡さんが楽器を全て演奏しているんですけど、「Dan Dan Dan」はプロのミュージシャンにお願いしようというとになって、レコーディングスタジオでが集まって録っているところを見て、「生の楽器の良さ」というのを凄く感じて、特にギターが印象に残っていまして。コアラモード.はもっとギターを押し出していいんじゃないかと思ったのが、この作品に来ているんじゃないかと思いますね。「ありがとう、そしてさよなら」という曲でも、グイグイとギターを弾いてますね。

小幡康裕 曲調的にはエレキギターがなくても成立するんですけど、歌詞によって気持ちを押し上げるためにエレキギターのリードプレイを多用しましたね。

あんにゅ あと、「Dan Dan Dan」を作っている時、歌詞について「語尾を言い切った方がいい所」なんかを常田さんに教わったので、曲作りの時にそういうのを意識するようになりましたね。

小幡康裕 メロディとメロディの切れ目でセンテンスを一回区切ると、歌詞カードを見なくても各ブロックそれぞれで言いたい事が頭で理解出来るという部分、そういう事を常田さんは言っていましたね。

――歌詞という点ですが、小幡さんとあんにゅさんそれぞれに個性が出ていて面白い。例えば、小幡さんには短歌のような感じがあり、あんにゅさんには恋愛を描いた物語のように歌詞がとても女性らしい。Aメロで一つの文章が出来上がっている。今回の作品ではそれが色濃く出たのかなと。それがそれぞれの今後のベースになっていくのかなとも思ったのですが。

あんにゅ 詰め込むんです(笑)。確かに「ありがとう、そしてさよなら」に比べると、「さくらぼっち」の歌詞の書き方は違うなと思います。

――歌詞は書き溜めて置くタイプ?

あんにゅ この事について書こうと思ったら、ノートに関係する事をバーッと書いていくんです。書いていくと、言いたい事のブロックが何個か出来て、その中からどれが良いかと。本当は歌詞を書いていくとたくさんの文章が出来るんですけど、それをまとめているんです。

春の華やかさと切なさの表裏を表現

あんにゅ

あんにゅ

――「さくらぼっち」のテーマは?

あんにゅ もともとタイトルがあったんですけど、最初は夢について、「拝啓、5年後の私」に近いような歌詞だったんです。でも近くなっちゃうので、書き直しているんです。それで「さくらぼっち」というだけあって、ちょっと寂しい気持ちを。春ってとても暖かくて華やかなイメージがあるけれど、その中にふと「寂しいな、誰かに会いたいな」という気持ち、彼に会いたい女の子の気持ち、どんな不安な事が起こるかを書き出して作っていったんです。

――全体的に明るくて可愛らしい印象の曲ですがもとは暗かった?

あんにゅ もっと暗い事も書いてあります。実際のサウンドは明るいけど、読んでるとちょっと寂しい事もあるんです。2人で演奏して気持ちが入るとCDの音源より寂しく感じたんです。「なんでだろう?」と思ったら、もとの歌詞が実は寂しい。だけど、サウンドを明るくすることで、切なさと明るさとのバランスを出していて「前へ向ける曲」になったと思います。切ない気持ちも乗せているけど、前向き。

――サビの「なっちゃった」という言葉の使い方が、より明るくさせているような気がします。

あんにゅ これは、最初にサビが出来上がったのでここに合わせて作っていきました。

――この主人公の女性は何歳?

あんにゅ 特に決めているという訳ではないですが、彼に会いたいけど会えない女の子の気持ち、それが受験かもしれないし、彼が遠くにいる遠距離かもしれない、色んな風に感じ取ってもらえるように作っています。

――サビが最初に出来て、他の歌詞を考えていくうちに全体像が浮かび上がってきた?

あんにゅ 「さくらぼっち」のAメロの2ブロック目は、「彼から返事が来ない時にどうするのか?」という問題を解くように考えたんです。いろんな人に聞いて、いろんな意見があったんですけど、今回は、SNSの“既読”がついた時は、履歴を遡って過去のメッセージを見てみるとか、彼の写真を見てみるとか、いろいろあったんですけど、リアルに“既読”がつかない時は過去のをチラッと見て「なんかまずい事を言ってないかな?」とか、ちょっと不安で日常的な事をここに入れてみるとか、「リアルなもの」を追求した感じはありますね。

――ご自身でもそういう事はある?

あんにゅ ありますよ…、ありませんか?

――ありますね。

あんにゅ 過去のメッセージを遡って、「悪い事言っちゃったかな…?」とか思って、何か余計にスタンプを送ってみたりとか(笑)

小幡康裕 “既読”が返信になったりしてねしてしまう時がありますね(笑)。既読をもって返信という。

――ライブでも演奏している内に暗くなったり、入り込んだりしてしまうことも?

あんにゅ まだこの曲はライブで披露してないんですよ。初めて披露した時の印象がそうだったので、少しずつ音源に近づけようとしているんです。ただ、何も考えないで歌った時にスッと静かで切ない歌い方に変わったので、そういう要素もけっこうあるんだなと。パッと聴いた印象は明るいけど、ちゃんと切ない部分が入っている曲なんだなという風に。自分で歌ってみてもびっくりしましたね。惑わされていたのかなと。

――二面性があって良いですね。優しくもあり、切なさもありと。

小幡康裕 春という季節が二面性を持っていると思うんですよね。結局アレンジ自体は凄く華やかで楽しい感じですけど、春自体は実際に気候的にも穏やかで優しくてという季節なんですけど、自分の中では新生活のシーズンだったりもして、複雑な切ない気持ちになってきたり。なので、この楽しげなサウンドの中で実は切なかったり、ちょっと寂しかったり、というそのギャップがより春らしくなっているのかなと思います。

――アレンジ前はポップでキャッチーだった?

小幡康裕 もともとポップでキャッチーではありましたけど、その“ツマミ”をより強めたと言うか、春の無条件で楽しくなっていくような気持ちとか、ウキウキしてくる気分とか、「会いたくなっちゃった」という歌詞もそうなんですけど、そのギャップがこの曲の持ち味なのではと思います。

あんにゅ この曲はあまり笑い過ぎないで歌うようにはしています。「なっちゃった」とは言ってますけど、サビはすごく気持ちを込めて。「Dan Dan Dan」はちょっと笑って歌ってるかもしれないですけど、こっちはすごい真剣な顔して歌ってます。サウンドが明るいという感じですよね。

――華やかさをサウンドで強調して、内面は寂しさを歌っていると。「なっちゃった」という言葉は、自分に言い聞かせているような響きもありますね。

あんにゅ そうです。今にも泣きそうな声です。

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