思い入れの壁を越えた、コアラモード. 過去と現在の重なり合い
INTERVIEW

思い入れの壁を越えた、コアラモード. 過去と現在の重なり合い


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年05月30日

読了時間:約15分

 あんにゅと小幡康裕によるユニット・コアラモード.が5月30日に、メジャー2枚目となるフルアルバム『COALAMODE.2~街風泥棒~』をリリース。今作には、テレビ東京系アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』のEDテーマに起用され、4月に先行リリースされた「花鳥風月」や、ライブでおなじみのナンバー「位置エネルギー」や「僕に足りないものは」などデビュー前に作られた楽曲も収録。昨年の全国ツアーで得た良い感触をさらに高めるべく選曲された。「恋愛定規」ではTAKUYA(ex:JUDY AND MARY)がギターで参加。そこでも様々なアイディアをもらい今後の制作活動へのヒントが多くあったようだ。彼らにとって今作はどのようなものなのか。そして、サブタイトルの「街風泥棒」の意味とは。【取材=村上順一/撮影=冨田味我】

喫茶店の店名からヒントを得たアルバムタイトル

あんにゅ(撮影=冨田味我)

――先行シングルとなった「花鳥風月」のMVはどこで撮影したのでしょうか?

あんにゅ チェコのプラハです。「花鳥風月」は壮大なバラードになったこともあり、壮大な景色求めて海外へ行こうという話になりました。チェコでは気温がマイナス8度まで下がりまして、雪中で山奥の崖で足をズルズル滑らせながら、何回も転びながら撮影をしました。朝も早くて寒いし、カイロを貼っていたんですけど、私の衣装は肩が出ていまして(笑)。人生で一番寒い経験をしました。過酷な撮影だったんですけど、何とかちゃんと撮れて良かったです。

――マイナス8度ですか…大変な撮影でしたね。その「花鳥風月」のメロディは2012年頃から温め続けてきたみたいで。

小幡康裕 サビの歌い出しの部分だけあって、良いメロディだから温めておこうとタイミングを待ってました。アニメ『BORUTO-ボルト- NARUTO NEXT GENERATIONS』の書き下ろしという形で曲を作るということになって、作品を読んだときに、物語がどんどんシリアスになっていく展開の部分だったので、この作品のエンディングの余韻を共にできるような感じのアレンジ、メロディを持ったアイディアはなかったかなと探したときに「花鳥風月」を思い出しました。

 そこからは「BORUTO」という作品に導かれながら、なおかつ「花鳥風月」というテーマ自体は僕ら自体が歌いたかったことだったので、歌詞を始めとにかく色んなアイディアを出しながら構築しました。

――この曲でのチャレンジはありましたか。

あんにゅ コアラモード.にとってこのサビのキーはギリギリで、花の「な」の所を地声でいくというのがなかなか挑戦でした。

小幡康裕 ブラッシュアップしていくなかで、どうやったらもっとドラマチックになるかなと試行錯誤しているなかで、キーを半音上げたんです。そうすると突き抜け感も出て、サビのピーク感もより高まり、表現の天井と底がより広がった気がして、このキーで行こうという決断になったんですけど。ボーカリストとしては勇気が必要だったと思います。

あんにゅ これをライブで歌うという不安はあったんですけど、自分がレコーディングで歌えたものだから、本番でも出せるだろうと信じてやりまして。この前、初めてお客さんの前で披露して、そのときはありがたいことにお客さんも凄く集中して聴いてくださいました。拍手が鳴り止まないほどで、嬉しかったです。

 静かに始まるけど、後半にかけて引き込むエネルギーがこの曲にはあって。自分達でもびっくりするくらい壮大で、凄い曲になったと思います。特にライブではそれを感じました。聴いている人が「息ができなかった」って。

――凄い曲になりましたよね。さて、2ndアルバム『COALAMODE.2~街風泥棒~』についてですが、サブタイトルを「街風泥棒」にしたのは?

あんにゅ このアルバムの曲を通して聴いたときに「全部の曲に風が感じられるね」という話になりまして、“街風”という言葉を入れたいということになったんです。“泥棒”というのは、このアルバムの曲がだいたい仕上がってきてるという段階では全然決まっていなくて。

――あと数曲で仕上がる、という時点でタイトルが決まっていなかった?

あんにゅ そろそろ名前を決めなくちゃいけないのに、しっくりくるものがない、けど“風”というワードは入れたい、みたいな。ある曲のレコーディングで下北沢にいたんですけど、スタッフさんとタイトル会議をしようということで、ある喫茶店でずっと考えて…。色んな意見を出すけど決まらなくて「これだ」というアイディアが浮かばず…。

 ただただ時間だけが過ぎていく感じだったんですけど「このお店なんていう名前だっけ?」と、ふとテーブルにあった店名を見たら「花泥棒」だったんです。「この泥棒を拝借しよう」ということで「街風泥棒!」って全員が何となくしっくりしまして、意味的にも「街の風を集めてきたぞ」という、色んな種類の風があってここに集結したという意味で。

――確かに各曲から「風」を感じますね。アルバムの中で最後に完成した曲は「花鳥風月」?

小幡康裕 最後のピースとして埋めたのは「どろぼう猫」です。

あんにゅ 初回盤のボーナストラックでももいろクローバーZさんの「サラバ、愛しき悲しみたちよ」を同じ日にレコーディングしました。

小幡康裕 ラジオで初回盤ボーナストラックの収録曲をアンケートで決めたんです。

あんにゅ ももいろクローバーZさんは人数がいるんですけど、それを一人で歌うという難しさはありました。今までにないサウンドでした。全部小幡さんが演奏して、自分でドラムもスタジオでマイクを立ててやって。

小幡康裕 自分でマイキングからやったのは初めての経験でした。

――小幡さん、今回いつも以上に忙しかったですね。

小幡康裕 前作はあんにゅの曲が多かったのですが、新しく書き上げた曲の作詞作曲が僕というのが多かったりもしました。ただ、ストックの中から掘り起こしてきたものも多いので。「恋愛定規」は2013年頃の曲だったり。

あんにゅ 「恋愛定規」は凄く楽しく歌えて、私も大好きな曲で。「恋愛定規」と「位置エネルギー」という曲は同じ時期に小幡さんが作った曲なんですけど、この2つが出来たときは「コアラモード.はこういう方向性なんだな」とデビュー前の段階でしたけど、何となくイメージが湧いた2曲なので、今回収録されたというのが凄く嬉しかったです。

小幡康裕 お客さん的にも、ライブで今まで何度もやってきた曲が多かったので、みなさんの中に思い入れがあると思っていて、その思い入れを超えるということはけっこう難しいことだと常日頃思っていて。ライブで育ってきた曲なだけに「音源になるとそうでもないな」」とは絶対に思われたくなくて。そこは凄く頑張った部分です。「ホップステップジャンプ」もライブでやってきた曲ですし。

――「ホップステップジャンプ」のタンバリンはどなたが叩いているのですか? 良いアクセントになっているなと感じまして。

小幡康裕 これ実は打ち込みなんです。

――生演奏かと思いました。凄くリアルですよね?

小幡康裕 ありがとうございます! ミックスも素晴らしいですから。

あんにゅ タンバリンは奥深いですよね。小幡さんの作業部屋にタンバリンが大量に積んであるんです。

小幡康裕 ビンテージのタンバリンを購入しまして。島田昌典(音楽プロデューサー)さんが「Ludwigのタンバリンがいいよ」と教えてくれたんですけど、国内でもほとんど置いているお店がなくて。一つ置いてある所を見つけて、そこで聴いたら驚くほど音が良くて。

――「ホップステップジャンプ」のタンバリンはその音をサンプリングして?

小幡康裕 この曲はまだタンバリンにこだわりだす前だったので音源のものです。僕らの曲はタンバリンが入っているのが多くて、曲が躍動するんです。色んなタンバリンを持っていたら今後もっと広がりが出るかなと思いまして。

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