思い入れの壁を越えた、コアラモード. 過去と現在の重なり合い
INTERVIEW

思い入れの壁を越えた、コアラモード. 過去と現在の重なり合い


記者:村上順一

撮影:

掲載:18年05月30日

読了時間:約15分

憧れのTAKUYAとの制作

小幡康裕(撮影=冨田味我)

――お話を聞いていると今作は過去からあった曲が多そうですね。いつ頃に書かれた曲が多いのでしょうか。

あんにゅ 今作は2012年からのものが詰まっています。「僕に足りないものは」はコアラモード.を結成して初めてのデモ音源を作ろうというときにあった曲でもあります。

――過去の曲を収録したのには、今なら思い入れなどのハードルを超えられると思った?

あんにゅ デビューしてから4年目で、ライブで聴いてもらっている曲もあるから、惜しまなく聴かせたい曲を入れてみないかと話になりました。私達にとっても1曲1曲シングルになって欲しいと思って作っている曲なので、今回は全体を通して聴いても1曲ずつの主張が強いと感じています。

――今作はライブを意識しての制作になったのかなと思っていました。

あんにゅ ライブへの意識はしていました。

小幡康裕 去年初めて全国ツアーをバンド編成でまわって、非常に楽しかったんです。アルバムを持ってまわるツアーで、その曲たちをメンバーで育てていって、その過程が楽しくてやりがいを感じられた部分だったので。今回もライブで温まっていくのが楽しみな曲ばかりだなと思っています。

あんにゅ けっこうアップテンポの曲を今回は多く収録させてもらったので、それをライブでやるのが楽しみです。バンドサウンドをイメージして作った曲、ツアーを見据えて選曲した部分もあります。

小幡康裕 「トライアゲイン」なんかはイントロのギターリフの印象がエンジンをかけるみたいなイメージで、アルバムの世界に瞬時に誘ってくれるような曲、ライブのオープニングにも良いかなと思える感じに仕上がりましたし。

――続いての「恋愛定規」のギターアレンジはJUDY AND MARYを彷彿とさせる印象ですね。

あんにゅ あれ、ギターがTAKUYA(ex:JUDY AND MARY)さんなんですよ。TAKUYAさんのスタジオでギターを弾いてもらって、更に歌録りのディレクションにまで付いて下さいました。

小幡康裕 TAKUYAさんは僕にとってもギターヒーローで、JUDY AND MARYの曲に抱いていた印象は、こんなにポップできらびやかなのにアプローチが凄くアバンギャルドだなとずっと思っていて。そのカラーを色濃く出しているのがTAKUYAさんのギターだなと。TAKUYAさんのギターで命を吹き込んでもらったときに、当時からずっと憧れていた作品のカラーにこの曲も仕上がりました。

あんにゅ もともと入っていないフレーズも、TAKUYAさんは曲を短く砕いて「この部分はどういうコードで、どういうフレーズがいいか」というのを細かく検証して進めて行く方で。凄く丁寧に、丁寧だけど大暴れ、みたいな(笑)。サビの部分のフレーズも良い意味で違和感があったりして、それが歌詞の主人公の女の子とイメージが合っていてばっちりでした。

 TAKUYAさんが「これ入れたら?」と言ってブブゼラとか笛の音とかも入れてくれたりして。もう「お疲れさまです!」っていう雰囲気になっても「これ入れてみようよ」と、最後まで出てきたアイディアを試してくれるんです。その作り方というのが、私達2人で完結してしまう部分もあるので新しいことを教えてくださってもの凄く楽しくて。こうやって音楽って可能性があってもっともっと楽しめるんだなということを教えて頂きました。

――その経験は今後の制作にも活きそうですね。

小幡康裕 大いに活きると思います。TAKUYAさんに「何でその場その場で可能性を見いだして作品に落とし込むことがリアルタイムでできるんですか?」と聞いたときに、「僕は佐久間(正英)さんに教わってきたことを次の世代に繋げていこうと思ってやっているだけ」と仰っていて。僕らもTAKUYAさんから教わったことを、ちゃんと咀嚼して自分らのものにして作品にしていくことが恩返しになるのかなと。

あんにゅ もの凄く勉強させて頂きました。ずっと目がまんまるでした。そして、凄く楽しかったです!

――そして、「バードマン」はあんにゅさんの作詞作曲ですね。口笛も?

あんにゅ 私の口笛です。この曲もデビュー前からあったものなんですけど、ちょっとビートルズっぽい音で録りたいと思っていて。そう思ったときに、バンドで「せーの」で録りたいと思いまして。今回ツアーでまわるメンバーが、高木大輔さんがギターで、ドラムが伊吹文裕さん、ベースが林あぐりさんと、みなさん20代のミュージシャンの方なんですけど、ツアーメンバーで録った曲です。

小幡康裕 みなさん若いけど渋いんですよね。「もっとそこジョージ(ハリスン)っぽくいこう」みたいな。そんな会話で進んでいきました。

あんにゅ 凄く納得のいく音が録れました。また「七色シンフォニー」からずっとお世話になっているエンジニアの甲斐(俊郎)さんのミックスが凄く素敵で。心地良くミックスして頂いて、お気に入りの曲です。歌詞は葛藤を描いています。デビュー前とか、人と比べられることとか、どうしたらいいんだろうというもどかしさが感じられるのかなと。

――当時の気持ちがこの曲に?

あんにゅ 今は少しずつ自信もついて、私達は今羽根を広げさせてもらってますけど、このときはまだ不安でいっぱいだったなと。この曲を聴いて「コアラモード.らしいね」と言ってくれる方が多くて、みんなが描いているコアラモード.ってこういう印象があるんだなと。

――ご自身の中ではそうでもなかった?

あんにゅ “あんにゅっぽい”なって思うことはあります(笑)。

――「どろぼう猫」は、これ小幡さん作詞・作曲なんだとちょっと意外でした。

あんにゅ 私も耳を疑いました(笑)。デモが届いてアルバムに入れる曲をもう1曲考えようというときに、小幡さんが作るということになってて、送ってきてくれたんです。3曲くらい作った中のひとつです。小幡さんが歌っていて。小幡さんの声が女性キーになったものがニャーニャー言っているんです(笑)。最初はその違和感が凄すぎて曲が全然入ってこなくて。3回目くらいに「これいい曲かもしれない」と思って、私の歌を録ることになったんです。

小幡康裕 デモでは地の声を聴かれたくないのでピッチを思い切り上げまして(笑)。よく歌詞を聴くと、飲み屋街の名前が出てきたりと「絶対女の子が書いてないな」という歌詞をあんにゅが役柄になりきって歌うという面白さはあるなと思っていて。それが単純にユニットでやる面白さはの一つかなと思っています。

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