ベニー・グッドマン「Sing Sing Sing」がRoverとHiDEX青春の曲
――Roverさんはトランペットが吹けるとのことですが、ベリーグッドマンでも吹いている?
Rover 中学、高校の吹奏楽部でトランペットやっていましたね。まだ曲にはトランペットを入れたことがなくて、僕の懐刀としてまだ置いておこうかなという感じですね。まあ、もっと言ってしまうと実は18歳から吹いてないんで…、ちょっと吹きすぎて嫌いになったんです。
MOCA でも、ベリーグッドマンでハーモニーを作る時にはトランペットをやっていたことが反映されているよね。
Rover 中学の時はずっとジャズを聴いていたんですよ。高校は名門校に行ってクラシックを勉強したんです。高校1年生の時に「1年生5人で金管五重奏のアンサンブルコンテストに出たいです」と先生に懇願したんです。でも先生は「1年生だけで金管五重奏は無理だ。普通は八重奏で音を出していかないと負けてしまう」と言われたんですね。でも、僕は「5人で行きたいです」と言い切って出場したら、そのコンテストで金賞をもらったんです。淀川工業高校で1年生だけで金賞を取ったのは、後にも先にも今のところ僕らしかいないんですよ。レジェンドとも呼ばれ、舞い上がってた自分がいて(笑)調子に乗っていた自分に先生が「お前はあいつに勝てるのか」と聞いてきたので、僕は「勝てると思います」と言ったら先生が「無理や。元々の素質が違う。お前にはトランペットを吹く素質がない」とはっきり言われたんですよ。6年間1日も休まずに吹いてきたトランペットをその日にやめて捨てましたね。
――その日のうちに辞めた?
Rover ショックだったんですけど、逆に良かったかも知れないですね。そこから作曲をやろうと、グレてスリーピースバンドを組んで、それが作曲のきっかけですね。
――そのスリーピースバンドはロック系ですか。
Rover その当時、サンボマスターを良く聴いていたので、彼らのようなメッセージ性のある音楽を作ってました。ちなみにバンド名は「THE UNDER DOGS」で、負け犬という意味なんですけど(笑)
――MOCAさんはベリーグッドマンに入る前はどのような活動を?
MOCA まあ、やっていたという内にも入らないんですけど、楽器が弾けなかったのでとりあえずウクレレを買って、(大阪)西成で路上ライブをやっていました。誰も人が止まってくれないという活動から、DJイベントのMCをやったり、そのクラブの店長をやったりで、ほぼ音楽をやっているとは言えない状況でしたね。ブッキングされてもアイドルと一緒のイベントに出たり、全然人が来なかったので、友達に無料でチケット配ったりしてやっていましたね。
――ウクレレはどのくらい弾けるのですか。
MOCA いや、ウクレレも出来ないんですよ。ひとつのコードで4時間ひたすら路上ライブをやるという(笑)ラップで来た人をいじるというスタイルでやっていました。
Rover それをやっていて、よく捕まらなかったなあと思いますね(笑)まあ、その斬新さに惹かれて「ワンコードでライブするなんてもったいない」と、路上ライブを一緒にやろうという話になったんですけどね。展開をつけて直感で思ったメロディを歌うというライブをしていたら、最初3人くらいだったお客さんが、1カ月半で45人になって最終的には駅前でやっていたので駅員さんに怒られてしまって。
MOCA 警察が来てしまったので路上ライブはやめました。
Rover 街行く人が味方してくれて、ハンバーガーやポテトをくれたり、居酒屋の店長がビールをくれたり、地元のみんなが味方してくれて。
――ベリーグッドマンというユニット名の由来は?
Rover HiDEXも一緒だったんですけど中学で吹奏楽をやっていた時に、部員数が少なくてクラシックの大編成の曲が出来なかったんです。でも、ジャズのビッグバンドなら演奏ができるということで、よくジャズクラリネット奏者のベニー・グッドマンの曲を演奏していたんです。「Sing Sing Sing」という曲が、僕とHiDEXの青春の曲なんです。3人でユニット名を決める時に「俺が思っていた良い名前があるんだけど、ベリーグッドマンって良くない?」と、ふと言ったんですよ。そうしたらHiDEXが「ベニー・グッドマンみたいでカッコイイやん」と言ってくれて決まったんです。その時、MOCAは全然反応していませんでしたけど。
MOCA 僕はその時はまだベリーグッドマンをやろうとは思っていなかったんです。
Rover MOCAはずっと嫌だって言ってた。
――なぜ嫌だったのですか。
MOCA ソロでやっていきたかったというのと、今までグループを組んだことがないことへの恐怖からですね。グループってなんやねん、みたいな。
2カ月くらいでもうやめようと思った
――ユニット名も決まり、3人でやっていこうとなるまでに要した期間は?
Rover けっこう時間は掛かったかな。
MOCA HiDEXはもうやる気だったんですよ。
Rover HiDEXが前のユニット「Roofy」を解散していた時に、「また一緒にやろうぜ」と僕を戻そうとしたんですよ。一応、活動休止だったんですけど、僕の中では一生活動休止だと思っていたんです。最悪45歳までは活動休止でいたいと思っていた(笑)僕とHiDEXはクセが強くて“水と油”くらい全然合わなかったんですよ。でも「是非ともまた一緒にやりたい」と深夜2時に電話が掛かってきた時に「俺は西村アコースティックスは捨てたくない、両方やりたい」と言ったんです。HiDEXはそれにOKしてくれて、音源の配信やらライブの段取りを決めていた時に、MOCAにライブのバックDJを頼んだんですよ。いわゆる再生ボタンを押してくれと。
MOCA 僕は嫌だって言ったんです(笑)「あんな犬小屋みたいなところに俺は収まらん。前に出て行ってしまう。だからゴメン無理」と言ったんですよ(笑)
Rover 「俺の才能が爆発するぞと、誰をバックにしようとしてるんだ」みたいなことを話している時に、先輩であるET-KINGのBUCCI君が「RoverとHiDEXは組み直すの? お前らは3人でやった方がいい」と言ってくれたんです。ライブの打ち上げで酔っ払っていたのでBUCCI君は覚えていないと思うんですけど(笑)その時「MOCAはいい歌を歌ってる」と褒められていましたね。僕は触れらなかったんですけど(笑)僕もその時はMOCAと一緒に歌うという選択肢はなかったんですよ。ギターでMOCAのバックミュージシャンをやっていたので。まあ、先輩もああ言っているし、その熱い言葉に乗って一回やってみようかとやり始めたんですけど、2カ月ぐらいでもうやめようと思いましたね。
――割と早い段階で訪れましたね。なぜ早くもやめようと?
Rover やっぱり絶対に折り合いがつかないと思って。でも、良い曲が書けたんですよ。それがインディーズ1枚目のアルバム『Sing Sing Sing』に収録されている「コンパス」という曲なんですけど。これは世に出したいなと思って、ライブもあまりイメージが沸かないけど「個を大切にするチームであれば理解はできるかな」と思いながら、でもやめたいという気持ちもありつつ、その間で揺れている感じで。
MOCA 僕は最初のライブでやめようと思いましたからね。これは絶対無理だって(笑)
Rover この時、自分にめちゃくちゃプレッシャーがあって、病気になってしまったんですよ。帯状疱疹という病気で身体中にヘルペスが出来てしまって。でも、ここで頑張ったら俺たち大阪でトップを狙えるなと思って、初ライブを2013年11月15日にやった時に、そこから1カ月も経たないうちに事務所から声が掛かったんです。そしてインディーズでアルバムを出そうという話になって、1枚目のアルバム『Sing Sing Sing』をリリースしたんです。いつ辞めようかとも考えていたんですけど、僕たちに対する需要が多かったみたいで今に至ります(笑)
――MOCAさんも腹を決めたんですね。
MOCA 決めましたね。これはもう逃げられないと。ここで逃げたら同じことの繰り返しだと思ったし、一人でやるのにも限界をちょっと感じていたのを突っ張ってやっていたので。同い年ですけど音楽的には2人は先輩なので胸を預けようと。
Rover 僕は2枚目のインディーズアルバム『Sing Sing Sing2』で腹を決めましたね。1枚目の時はまだ決めていなくて、「どうにかなるだろう、売れたらラッキー」みたいな。でもいきなり売れるわけがないじゃないですか、組んで4カ月ぐらいのユニットが、洗練された曲やライブも出来るわけじゃないし。
――HiDEXさんは恐らく最初から腹は決めていたんでしょうね。
Rover そうですね。一途だと思います。
MOCA HiDEXはRoverのことがすごい好きだと思いますね。
Rover でもね。“水と油”くらい合わないんですよ。だけど、“水と油”って丁度良い温度のところに入れてかき混ぜると乳化するじゃないですか。今はそんな状態じゃないですかね。でも混ぜ続けないと分裂するんで、MOCAが混ぜる役という感じですね。
MOCA めちゃめちゃな例えだね(笑)
















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