<取材雑感>橋本環奈の言葉から見えたもの

2月3日、都内で行われた映画「セーラー服と機関銃 -卒業-」の舞台挨拶での一コマ。笑顔で撮影に応じる橋本環奈

 【取材雑感】アイドルグループRev.from DVLの橋本環奈(17)が初主演を果たした映画『セーラー服と機関銃 -卒業-』のジャパンプレミア特別試写会が先日、都内で行われた。橋本も登壇し舞台挨拶を行ったのだが、ここで語った橋本の言葉から「アイドルに求められる姿」がみえた気がした。

 その際、イベントの最後に司会が橋本に対して「一言、といわずに存分に語っていただきたい」とラストコメントをリクエストした。その言葉に橋本は、少したどたどしい様子を見せながらも自分の言葉で「映画に出るとは何たることか」を教えてもらった前田弘二監督、役そのままの雰囲気を感じた長谷川博己、一生の師と謳った武田鉄矢、その他共演者の印象や、自身初主演となった、本作に向けた思いなどを語った。その時間は5分程だったろうか。30分かそこらの舞台挨拶の中で、5分という時間はかなり長いものと感じた。

 「会いに行けるアイドル」というキャッチフレーズと共に登場したAKB48。彼女らが登場した頃から、その実感も手伝ってか、70~80年代のアイドルという部類の者と比べると、近年は表舞台上で見える人との接し方も、フランクになる傾向になっている印象を受ける。ある意味ではアイドルという存在を言葉の意味(アイドル=偶像)通りのイメージに近づける一つの例なのかもしれない。ファンは自己のバーチャルな世界で親密になれる相手を、アイドルという存在に求める。その意味でフランクな印象のある人物は、イメージからファンとの距離を近づけることにもなる。

 対して、グループアイドルが多く出始めたことで、その中のフロントマン、その他の役割などといった人員構図が見えることは気になる点だ。当然「その他」と分類されるものは、公での発言も多く制限され、表に出るためにグループ内で競争を行うことになる。そこでは一歩抜きん出るために何かインパクトのある言葉で「こいつは面白い」「こいつの言葉を聞きたい」と思わせるアピールが必要になる。その意では、こういった公の場で、アイドルと呼ばれる人の発する言葉は、随分と大胆で奇をてらったものが増えてきている傾向もあるのではないだろうか。

 例えばそんなアイドルが、一人でこの舞台挨拶に立ち、同様にコメントを求められた時に、どのような言葉を発するだろうか? 橋本が発したような、素直なものとは違ったものではないかという気もする。また、そもそも司会に問われたことの意味が理解できず、どのような答えが求められたのかを何度も聞き返すケースも考えられる。その意味では、橋本が自力でしっかりと出したこの時のコメントは、一つのイメージとしてしっかりと存在する、昔からアイドルという存在に本来求められた姿の一面でもあるように思える。

 決して近年のアイドルの姿を否定しているわけではないが、この日のそんなひと時には、改めて現在、アイドルという存在に求められた一面、それを橋本環奈という一人の女性に求める意向、そして橋本自身にも、その思いに応えようとする意、そんなものが感じられた。(文・桂 伸也)

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