シマ唄広めたい、中孝介 美声育てた奄美の音楽文化と昭和歌謡
INTERVIEW

シマ唄広めたい、中孝介 美声育てた奄美の音楽文化と昭和歌謡


記者:木村武雄

撮影:中孝介にインタビュー「シマ唄を広めたい」【1】

掲載:16年01月18日

読了時間:約13分

中孝介にインタビュー「シマ唄を広めたい」【1】

美しい歌声を育てたのは奄美の音楽文化と母親が口ずさんだ昭和歌謡

 【インタビュー】 歌手の中孝介(あたり・こうすけ)が歌う楽曲「目をとじても」(昨年11月発売)が昨年10月と11日にNHK「みんなのうた」で放送され、視聴者から多くのリクエストを受けて12月に再放送された。奄美民謡のシマ唄をポップスに組み込んだ歌唱法は独特の哀愁を放ち、美しい歌声も相まって心に響く。彼のファンには年配者も多く、幅広い層から厚い支持を得ている。海外からも“楽器の様な歌声”と称されるほどだ。その中孝介に、歌声の根源となるシマ唄の特長から奄美大島の音楽文化、歌手を目指すに至った経緯など多岐にわたり話を聞いた。

憧れたミスチル桜井のファルセット

――昨年11月29日に行われた東京国際フォーラムでのコンサートを拝見させて頂きました。そのなかで、観客に年配の方が多いというのが印象にありました。普段のコンサートも年配の方は多い?

 そうですね。僕より年上の方にも多くお越し頂いています。

――年配の方からのファンレターも多いと聞きます。どういったメッセージが?

 「歌を聴くといつも勇気づけられます」や「幼かった頃の景色が浮かんできます」という内容もあります。

――年配の方から「勇気づけられます」という言葉をもらうのはなかなかないですね

 歳も結構離れているので、息子みたいな感じもあるんでしょうね。ずっと心配しているみたいに。有難く思います。

――中さんの歌声も優ることながら丁寧な言葉遣いやお人柄も好感を与えているのでしょうね。そのコンサートでは、透き通る様な歌声に加えて、裏声と地声が混ざったミックスヴォイスが強烈なパワーを放っていて神秘的でした。もともと高音域の声は出せたのでしょうか

 出なかったですね。シマ唄をやり出してからです、出せるようになったのは。それまではJ-POPをカラオケで歌う程度でしたので。

――シマ唄を始めたのはいつ頃ですか

 高校2年生です。それまではMr.Childrenさんや小室哲哉さんのTKファミリー、ビジュアル系バンドを聴いていました。あの頃は皆、コピーバンドをやっていましたからね。LUNA SEAやTHE YELLOW MONKEYなど。

――中さんもコピーバンドを?

 いや、僕はバンドはやらなかったです。あんまり興味がなかった。僕は「歌」に興味がありましたので。歌の上手いボーカリストが好きで、「バンド」よりかは「ボーカル」に興味を注いでいました。

――先のMr.Childrenの桜井和寿さんもそうだと思いますが、当時「このボーカリストがいいな」と思っていたのは誰でしょうか

 やっぱり桜井(和寿)さんですね。

――桜井(和寿)さんの歌声を初めて聴いた時の印象は?

 凄く甘い声で、しかもファルセットの使い方もとても上手で。「どうやったらあんなに綺麗なファルセットが出せるのかな?」と思って。当時はカラオケで真似しても全く出なかったんですよね。綺麗に出せるようになったのはシマ唄をやり出してからです。

ポップスとシマ唄は全く別物

青春期はミスチル桜井に憧れていたという

青春期はミスチル桜井に憧れていたという

――そのファルセットの発声法は、シマ唄と一般的なポップスとは異なるものでしょうか

 僕の中では全く違わないと思っています。ポップスや歌謡曲、演歌とは歌唱法が違うだけで、ファルセットの出し方は変わりません。奄美のシマ唄はグィンと言われるこぶしとファルセットを使って歌う民謡で、奄美にしかない歌唱法なんです。島唄をやるとおのずと、裏声が出せるようになるんですね。シマ唄にもやる人によって使い方が違っていて、その人の「味」があります。

――シマ唄の歌唱法を習得するのは難しいでしょうか

 「教えて」と言われても教え方が分からないという所はあります。聴いて真似して覚えると言いますか、やっているうちにある日突然「ああこんな感じか!」とコツをつかめたり。

――伝統的な歌唱法であれば“大人が子供に教える”という伝承文化の様なものがありそうですが、中さんはどの様に学ばれたのでしょうか

 私の場合は独学でした。地元のCDショップに行くと色んな歌い手さんのCDが売っていて、知っている名前のCDをかき集めて、聴いて、真似して、といった感じです。

――その歌い手さんは現地で活動されている奄美のミュージシャンですか

 皆そうです。その中に元ちとせさんのシマ唄のCDもありましたし。奄美だけで活動しているプロのシマ唄の歌い手さんは多く存在します。僕の同世代にもいます。

――奄美で活動されている歌い手さんと、中さんのように全国で活動されている歌い手さんの違いは?

 シマ唄の歌い手さんのなかにはポップスが苦手な方もいます。シマ唄とポップスは全く異なるもので、その異なる音楽を、歌唱法だけでなく感性をうまくミックスチュアができるかが重要な要素でもあったりします。ポップスに馴染ませるのが難しいといえます。

――演歌歌手がポップスを歌うとコブシが利きすぎるような?

 それに近いと思います。「ビブラート効かせ過ぎじゃあ?」みたいな感じになるということですね。癖が出過ぎたりとか、逆に“ノベー”となってしまったりする部分はあります。ポップスや歌謡曲に関して言えば僕の場合は、母の影響がすごくあります。母親は昔から歌謡曲が好きで家でよく歌っていました。カラオケも上手くて(笑)。後は、ピアノを小さい頃からやっていて、打楽器や管楽器なども色々やっていましたので、ポップスに柔軟に対応できたのかと思います。

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